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第3章 森の妖精神と次期龍神
森の妖精神と土の精霊
しおりを挟む私達は馬車を停め、話をすることになった。
どうやら道端に倒れていた女の人はラフェエルとクリスティドの知り合いらしい。…………ということは。
「龍神様、申し遅れた上お騒がせして、申し訳ございません………………………。
わたくしはこのヴァリアース大国の姫、エリアス・ラピュード・ヴァリアースと申します………………………」
ビンゴ!と言いたいところをぐっと堪える。何故ならエリアスは今にも泣きそうだからだ。というか既に泣いてる。私ってそんなに怖い?
若干ショックを受けつつ、私も名乗ることにした。
「私はアルティア。………その、龍神の事を知っているのであればちゃんと名乗った方がいいかしら…………アルティア=ワールド=ドラゴンです」
「お、お手数をおかけしてしまい………」
エリアスは震えながらまた謝った。………だめだこりゃ、って感じ。多分何を言っても謝られるんだろうな……………困った。
私はちらり、と隣に座るラフェエルを見た。ラフェエルは面倒だと言わんばかりに顔を顰めている。
口を開いたのはラフェエルではなくクリスティドだった。
「エリアス姫、一体何があったのです?何故貴方ほどの方が道で気を失っていたのですか?それに、その額の契約印は…………………謝罪の言葉よりそちらを話て頂けませんか?」
こんな状況でも爽やかな顔の破壊力凄いな。サクリファイス大帝国の鎧を着ていても溢れんばかりの爽やかイケメン王子のフェロモンは隠しきれてない。エリアスはぐ、とドレスの裾を握って目を伏せながら言う。
「わたくしは……………この国の姫として、森の妖精神様と神聖な契約を交わしました。わたくしの役目はヴァリアースと妖精神様の交流の橋渡しをさせて頂く関係なのですが………………森の妖精神様は………………ある事情により、そのお力が弱ってしまわれているのです…………………」
「どういうことだ?」
「そ、その、これは国家機密でありまして………………」
「………………………龍神が知りたがっている。貴様も契約印の端くれならば妖精神から話は聞いているはずだ。
それでもなお機密などという言葉で済まそうとするのか?」
ラフェエルがぎろり、とエリアスを睨んだ。
エリアスその視線に肩を跳ねさせ勢いよく頭を下げた。
「も、申し訳ございませんラフェエル殿下!出すぎたことを申し上げました!
龍神様申し訳ございません!」
「い、いやいやいやいや、ほんと、その、頭上げて下さい!」
流れるように私のせいにされたけど別に知りたいとも思ってないから、戸惑った。ゆっくり震えながら顔をあげる。
深緑の髪、涙に濡れる黄緑の瞳。気の弱い発言ばかりが目立っていたけどかなりの美人である。簡易的なドレスのせいで残念ながらお姫様という感じはしないが、着飾れば更に美しさが際立つだろう。
そんな事を思う私を他所に、エリアスは再び口を開いた。
「___この国には、森の妖精神様と土の妖精神様がいらっしゃると様々な国々に知っていただいております。幼き頃、ラフェエル殿下やクリスティド殿下にも恐れながらお話させていただきました。
ですが実際………………現在国には森の妖精神しかいないのです。本来、森の妖精神様と土の妖精神様は仲睦まじく、この国をお守り下さる存在なのですが…………土の妖精神様は私が産まれた頃よりもずっと前から隣国のグレンズス魔法公国から帰って来ないのです。
森の妖精神様は草木を育て、豊穣を与えてくださる存在。ですが、それは土台となる"土"があってのこと。土の妖精神がいらっしゃらない事により土は廃れ、草木は元気を無くし……………森の妖精神様も、魔力が衰えているのです。
森の妖精神様が元気がないと草木の生命も弱くなる。森の妖精神様をお慰めするのが契約者の役目で…………今日、此処で倒れていたのはわたくしがお慰めするどころか傷つけてしまい………追い出されてしまったんだと………思います」
エリアスは泣きながら、たどたどしくそう結んだ。
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