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第3章 森の妖精神と次期龍神
"豊穣を約束された国"ヴァリアース大国
しおりを挟む「おおお~~~~!」
馬車の旅30日目、私は馬車の窓から顔を出し感嘆の声を上げた。視線の先には____薔薇を象った緑とクリーム色の門、そして結界に浮かび上がる蝶と某ゲームのゴーレムらしき巨人の紋様。どちらも動き出しそうな立体感がある。
そう、私達はやっと国境を超えた所だ。ヴァリアース大国。ラフェエルの話では"豊穣を約束された国"らしい。ピンとこなかったけど、納得するほど緑が多い。某悪役令嬢溺愛小説なら此処で蝶の羽を生やした妖精がパタパタ飛んでいるんだろうなぁと思うとだらしなく頬が緩まる。
「アルティア様、あまり御顔を出さないでください」
「あら、クリス。兵士が私に命令するの?」
「命令ではなくお願いです。貴方は忘れたのですか?先日馬車の窓から逃げようとしてラフェエル殿下に罰を落とされたのを」
「ぐ、…………ひい!」
そう言われ向かいに座るラフェエルを見るともう右目に黒い契約印が出てる。私は急いで座り直す。
……………2日前、馬車での移動に嫌気がさしてヴァル_羽の生えた大きな聖獣_を召喚して馬車から飛び降りた。逃げるつもりではなく、ただ横になりたかっただけなのだ。
しかし、そんな言い訳がこのサクリファイス大帝国第一皇太子であり私の契約者もとい教育者の理不尽ドS大魔王・ラフェエル・リヴ・レドルト・サクリファイスに通じるわけもなく………問答無用で10発ほど罰を受けた。新記録更新である。嬉しくないけどね。
それよりもクリス___シースクウェア大国第三王太子で金髪青瞳が特徴的な爽やかイケメン・クリスティド・スフレ・アド・シースクウェアが過保護になった。よほど私が窓から逃げ出そうとしたのに驚いたのだろう。ちょっとばかし顔を出しただけでこのように注意を受ける。
あと半月も馬車か…………………………辛いなぁ。
そんなことを思いながらラフェエルが準備してくれた絵本を読む。18歳にもなって絵本読んでいる私って一体…………と思っていたのは最初だけだった。
文字の読み書きが多少出来るようになって、理解することが出来るようになった。そんな私にとって絵本は内容は幼稚だけど、それでも面白いと感じていた。
もうこれで24冊目。この世界がユートピアという名前で、龍神は本当に神様なんだと知ったのもこの絵本達のおかげだ。意味がわからない時はラフェエルに聞く。ラフェエルは博識で大抵のことは知っている。なにより教え方がうまい。
ラフェエル曰く「5歳ほどの知力はついた」らしい。複雑だが、成長出来てるのは素直に嬉しい。だからもっと頑張ろうと思う。
さて次は何を読もうか____!?
「わ、っ!」
「ッ!」
突然馬車が止まった。
急ブレーキがかかったみたいに止まったせいで私の体は前のめりになってラフェエルの胸の中に飛び込んでしまった。
わ、わ、わ。近い。心臓の音聞こえる。つーか胸板!いや違ういい匂い!男の匂いなどあまり嗅いだことはないけどなんか、なんかいい匂い!イケメンはいい匂い!
混乱する私を他所に、ラフェエルは平然と私を引き剥がして声を上げた。
「どうした、リーブ!」
「ラフェエル様、申し訳ございません。道に女性が倒れていて…………」
「?私、見てくる!」
「おい!」
私はラフェエルを無視して馬車を降りた。本当に女の人が倒れていた。駆け寄り、抱き上げる。どうやら息はある。外傷はない。けど、酷く顔色が悪いね。別に人助けには興味無いけど………………!
抱き上げた拍子に深緑色の前髪の下が顕になった。そこには____ラフェエルの右目と、クリスティドの両手と同じ契約印があって。思わず固まる。
「これって____っきゃ!」
そこまで考えたところで私は女を抱えて馬車の中にいた。大方ラフェエルが名前を呼んだのだろう。契約された神は、名前を呼ばれるだけで瞬間移動するのだ。いつもは嫌だけど、丁度いい。
「ラフェエル!この人、額に契約印が…………!」
「道端に落ちている人間などに触れるな____ん?その女は…………………………」
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