47 / 270
第2章 水の精霊、海の妖精神と次期龍神
爽やか王子の爆弾発言
しおりを挟む「ぐぅ……………………………」
海の妖精神と水の精霊の屈服の儀が終わると、あっという間に夜が来た。アルティアは部屋に着くなりすぐに寝た。今もぐっすり呑気に眠っている。腹を出して寝る姿はいつも通り色気の欠片もない。
腹には、刻まれた青と藍の屈服印。
私が攫われたのは誤算だったが、結果的に目的は達成されたのだ。蓋を開けたらたった一撃で、妖精神も精霊も屈服させたんだから大したものだ。
だが______
"死なせるのは、もったいないわ"
海の妖精神が言っていた事が引っかかった。
20歳で死ぬと決められていた。だが、俺は生きた。今も生きている。
あの口ぶりから何かを知っているのは明白だった。俺が将来的に死ぬ?どうして?
聞きたかったが、海の妖精神は知らん顔をしていた。…………屈服の儀も知らなかった私達が知る由もない、か。
いや、まだだ。
屈服の作業は始まったばかりだ。他の妖精神に聞けばいい。
私の手の内には____最強の次期龍神が居るのだからな。
「ふへ、ふへへへ………………」
「………………………」
寝ながら不気味に笑うアルティアを見て神の教養についても考えなければな、とも思った。
* * *
「明日からまた馬車か~…………………」
私は部屋の窓縁に座りながら街を眺めていた。もちろん"街に行きたい"と言った。けれど、あの理不尽ラフェエルが聞いてくれるわけもなく。それどころか……………
「観光に来てるわけじゃないんだ。神が下々の街に降り立つものではない」
……………なんて言いよった。
その時のラフェエルは天狗もビックリの鼻の高さだった。普通さ、小説とかの皇子って凄く優しくてレディーファーストでイケメンでハイスペックじゃない?
ちら、とラフェエルを見る。
幻想的な紅銀の髪、ルビーの様な紅い瞳、整った顔、すらりとしてるのにちゃんと筋肉のついてる体躯……………………見た目だけはこんなにイケメンなのに…………イケメンなのにぃ…………………!
やっぱり王子と言えば、クリスティドだよね。金髪青瞳、爽やかイケメン王子。一昨日初めて会ったばかりだけど濃い一日を一緒に過ごしたから少しばかり知ってる好感の持てる青年だった。ちょっとキザっぽいのがまた美味しい。声も素敵だったな___
コンコン、とノック音が部屋に響いた。私は慌てて窓縁から降りて身だしなみを整えてソファに座る。その間0.5秒。記録更新だ。にやけそうな私に呆れたような視線を向けていたラフェエルがはいれ、と短く言う。他所の家でここまで威張れるのはある意味才能だ。
ドアが開くと、そこにはクリスティドが居た。
「ラフェエル、アルティア様、こんにちは」
「ごきげんよう、クリスティド殿下」
私はソファから立ち上がり仰々しくお辞儀をした。もう龍神だとバレているけれど、条件反射だ。クリスティドはにこ、と私に笑いかけた。ひゃー、やっぱりイケメン。
「何しに来た、クリスティド」
「明日経つと聞いたから、挨拶をしておこうと思ってね」
「それにしては早いですね。明日はお見送り出来ないのでしょうか?」
「いや、そうじゃないんだ。
私も君達と一緒に旅に出ようと思ってね」
「へ?」
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる