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第2章 水の精霊、海の妖精神と次期龍神
神嫌いの次期龍神と双子の妖精神
しおりを挟む_______思い出した。
アルティアは自身から発せられる風を抑えようと務めながら、思いに耽る。
前世であんなに憎んでいた"神"という存在を。
_____神は、私を嫌っていた。
わざわざ生を与えた癖にこれっぽっちも幸せにしてくれなかった。
いくら頑張っても簡単に奪われる世界。
いくら頑張っても認められない世界。
いくら頑張っても____自由さえ許さない世界。
周りを憎んだ。親を憎んだ。そして___神を憎んだ。
また、私から奪おうとしている。
ラフェエルは好きじゃない。
けれど同時に"世界について"教えてくれようとしていた。勉強を教えてくれた。___小さい頃、自分以外の人間も居るんだ、って教えてくれた。
その大切な人間を____"神"と名がつく生き物が私から奪おうとしている。
許さない。
許さない。
_____絶対に、許さない!
ビュオ、と一際強い風が吹いた。それを皮切りに暴走していた魔力が収まっていく。完全に収まってから、クリスティドを見た。
「私を_____その妖精神とやらの場所に、案内しなさい」
これは私の意思だ。
ラフェエルを救うという___私の、意思なんだ。
アルティアの黄金の瞳が、淡い光を灯した。
* * *
「ッ、はぁ!!」
バシャア!と音を立てて水のドームは崩壊した。ラフェエルの手には風の魔法を纏う剣が握られている。
ひたすら風の魔法剣でドームの内側を傷つけていた。上位魔法であるものの、30分もかかってしまった。
肩で息をしながら、周りを見る。
珊瑚や真珠が散りばめられた女らしい部屋だ。天井には魚が泳いでいて、海の中を彷彿させた。
転移魔法で突然連れてこられたが何処だ此処は………?いや、この際此処が何処というのはどうでもいい。
「アルティア」
名前を呼んでみたが、アルティアが来る気配が無い。アルティアは基本呼べば強制的に呼べる。"基本的"という言葉を使ったのは"例外"があるからだ。
例外_____"特殊な魔力"がかかっている場所では呼び出せないというものだ。
アトランティス、サクリファイス大帝国の禁書庫…………………サクリファイスに居た時に事前に様々な実験を行っていた際、それに気づいた。何事にも言えるが無知が1番の弱点になるから。
つまり此処は"特殊な魔力"を張り巡らされてるという事だ。
シースクウェアの国家機密を知らないから確証は持てないが、この海の中に居るという状況と先程のクリスティドの言葉を思い出しながら知っている情報で考え____ひとつの答えが導き出される。
「………………海の妖精神の住処……………?」
『正解』
「!?」
そう呟いた瞬間、世界が変わった。
海の宝石だらけの部屋が質素な部屋になった。ゆらゆらと揺らめく金魚草に囲まれたドーム状の部屋。その1番奥に質素な椅子に座る少年と、その足元に座る少女が居た。
ウェーブのかかった藍色の髪、黄金色の瞳を持つセーラー服の少女が言う。
『ちょっとアクア!この人間はアタシの部屋に監禁するって言ったじゃない!』
『マリンは五月蝿いなあ。いいじゃん、この人間は少ない情報で此処がどこだかわかったんだよ?ねえ、人間』
藍色の髪、金色の瞳、セーラー服………少女とよく似た少年はそう言った。どうみたって10歳程度の子供であるが、ただの子供じゃないのは状況を見ればわかる。
「___水と海の妖精神、か?」
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