【完結】転生したらヒロインでも悪役令嬢でもなく世界征服してる龍神の後継者だったのでこの世界の常識をぶっ壊してみようと思います!

Ask

文字の大きさ
上 下
15 / 270
第1章 異世界転生と出会い

治癒魔法と龍神の娘の名

しおりを挟む
 




 「うわぁぁぁぁぁぁん!」




 「ひぃいい………!」




 「お、落ち着いてください殿下………!」




 サクリファイス大帝国・鍛錬場にて。
 鍛錬場は阿鼻叫喚だった。帝国お抱えの戦士達は至る所に倒れている。辛うじて意識のある戦士も泣きながら頭を垂れている。鍛錬場の真ん中で血だらけになりながら泣いている薄い紅銀の髪、紅い瞳の2人組。全員の視線の先には_____その2人よりも濃い紅銀の短髪、紅い瞳の男。



 頬や体の至る所にかすり傷や打撲が見られる。しかし男は気にもとめず冷めた瞳で泣き喚く2人を睨みつけていた。



 「…………みっともないな。ヤイバル、クシュス。先程の威勢はどこにいった?」


 「ひっぐ、……ラフェエルお兄様、ぼ、僕はヤイバルお兄様に………そ、そそのかされ………」



 「なっ、おいクシュス!お前裏切るのか!お前が言い出したんだろう!"ラフェエル兄上はどうせ死ぬんだからいらない"と!」





 「ヤイバルお兄様!それはあんまりです!」




 泣きながら喚く弟に男___ラフェエルは不愉快そうに顔を歪めた。


 どちらが悪いなど最初からどうでもよかったのだ。
 身体を動かしたい気分で、鍛錬場に来た。素振りをしていた時に弟2人が戦士たちを連れて乗り込んできたのだ。理由は明白だった。



 18歳を迎えたラフェエルは優秀すぎた。次期皇帝のヤイバルを差し置いて執務を行い、戦場で結果を残し、王族は勿論国民でさえもラフェエルを支持し始めた。それだけではなく"生贄"の役割もある故に自由に過ごしている。女も金も自由も名声も18歳という若さで手に入れたラフェエルを僻んで皇帝の目を盗み痛い目に合わせようとしたのだ。



 だが、結果的にラフェエルしか立っていない。全員を相手にしてもなお、彼は臆することはなかった。



 少し頭を捻れば分かることである。それすらもわからない馬鹿な弟達に嫌気が差す。


 ………とはいえ、やりすぎたやもしれん。父親は根っから第2皇太子であるヤイバルを溺愛している。見つかれば五月蝿い。罰は下されないだろうが小言を聞く気分にはなれなかった。




 ラフェエルは剣を収め、未だにダラダラと言い訳をする弟達に見向きもせず、倒れている戦士達を踏んで鍛錬場を出た。





 「フライ」




 ふわ、と身体が浮く。こういう時はアトランティスに行くのが1番だ。







 *  *  *



 「……………」





 アトランティス内部、螺旋階段を抜け、日差しのはいる通路を抜けた先に何故か備え付けられている噴水で水を飲む。さらさらと柔らかい水は冷たく、喉を潤す。



 水に口を付けた時、頬にかかって染みた。……ここも怪我をしていたか。


 自分の傷口に触れながら水面を見る。
 紅銀の髪、紅色の瞳。王族の誰よりも濃い色のそれらが憎らしい。




 「あと2年、か」



 ぽつり、と言葉を漏らす。
 つい最近まであと13年ある、なんて余裕を持っていたが、あっという間に2年になっていた。



 俺の生に何か意味があっただろうか。
 やった事と言えば自分が居なくなった後、無能なヤイバルが皇帝になった時、自由に出来ないようにする為の執務、率先され駆り出された戦場で人殺し。


 龍神は穢れた魂を好む。


 "穢れた"というものはどのような物を指すのだろうか。沢山の犠牲の上に立つ魂の事を指すのであれば、条件はクリアしてるだろう。半月後には再び戦場だ。2年先___タイムリミットまで戦場で過ごす。



 戦場で殺した兵士のように無残に自分も死ぬのだろう。



 笑えるな。滑稽な話だ。



 どうせ死ぬのであれば、龍神に話を聞こうと思うことなど___「や!」…!


 声がした。見ると___やはり黒髪金瞳の女。またいつものように脱走しようとしているのだろう……なんて思っていると女は目を見開いて駆け寄ってきた。




 「ちょっと!何その怪我!」



 「ッ!」


 「喧嘩でもしてきたの!?」




 女は俺に触れようとしてくるものだから、思わずその手を弾いた。触れるな。龍神の娘が、俺に。

 命を奪おうとする龍神の娘などに触れられたくない。



 女を睨みつけると、む、とむくれて無理やり俺の頬を両手で押さえた。


 「怪我してるのになんで強がるのさ!アンタまだ子供じゃない!」


 「なっ、………」



 温かい掌に包まれた頬。仄かに緑色の光を纏った女。治癒魔法………?治癒魔法は高等魔法だ。使える人間など帝国にもほとんど居ない。なのに、何故___?


 痛みが完全に引いた所で、女は聞いてきた。


 「……よし。痛いところ、ある?」


 「……」


 「なによ、またダンマリ?お礼くらい言いなさいよ」



 「……頼んでない」


 「可愛くないわね~イケメンの癖に、子供ね」


 「お前の方が餓鬼だろ、どうみたって」


 「何をぉ!これでも16歳なのに………って!初めて話しかけてくれた!嬉しい!」


 女はそう言って、嬉しそうに笑う。
 本当に意味がわからない。なんなんだこの女は。



 「ね、名前、名前教えてよ」


 「嫌だ」


 「私、アルティア!」


 「勝手に名乗るな」



 「いいじゃない!名乗りなさいよ!」



 「……嫌だ」


 「おねが___うわぁっ!」



 「ッ、……」


 俺は、自室にいた。いつも通りの転移魔法。もうすっかり慣れたはずなのに、心臓がいつもより五月蝿い。なんだこれは?治癒魔法になにか仕掛けが………




 ___アルティア。





 幼い頃、気にも止めていなかった名前が脳に刻まれてしまってしばらくの間不愉快だった。


















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結】記憶が戻ったら〜孤独な妻は英雄夫の変わらぬ溺愛に溶かされる〜

凛蓮月
恋愛
【完全完結しました。ご愛読頂きありがとうございます!】  公爵令嬢カトリーナ・オールディスは、王太子デーヴィドの婚約者であった。  だが、カトリーナを良く思っていなかったデーヴィドは真実の愛を見つけたと言って婚約破棄した上、カトリーナが最も嫌う醜悪伯爵──ディートリヒ・ランゲの元へ嫁げと命令した。  ディートリヒは『救国の英雄』として知られる王国騎士団副団長。だが、顔には数年前の戦で負った大きな傷があった為社交界では『醜悪伯爵』と侮蔑されていた。  嫌がったカトリーナは逃げる途中階段で足を踏み外し転げ落ちる。  ──目覚めたカトリーナは、一切の記憶を失っていた。  王太子命令による望まぬ婚姻ではあったが仲良くするカトリーナとディートリヒ。  カトリーナに想いを寄せていた彼にとってこの婚姻は一生に一度の奇跡だったのだ。 (記憶を取り戻したい) (どうかこのままで……)  だが、それも長くは続かず──。 【HOTランキング1位頂きました。ありがとうございます!】 ※このお話は、以前投稿したものを大幅に加筆修正したものです。 ※中編版、短編版はpixivに移動させています。 ※小説家になろう、ベリーズカフェでも掲載しています。 ※ 魔法等は出てきませんが、作者独自の異世界のお話です。現実世界とは異なります。(異世界語を翻訳しているような感覚です)

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります

みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった! しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢? 私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

処理中です...