13 / 270
第1章 異世界転生と出会い
生贄皇子17歳、次期龍神15歳のある日
しおりを挟むあの日、アトランティスに行ってから俺は執務に疲れたり戦場から帰ってきたりするとアトランティスに行くようになっていた。かれこれ10年は通い、今年で17だ。なにかに行き詰まっても、"確実な死"があるこの場所を歩くだけで自然と自分を見つめ直せる。
どうせ死ぬのだから、と自分の中で区切りをつけられる。そんな場所となっていた。色んな意味で心休まる場所……………ではあるのだが。
「ぬぉっ!また会ったな少年!」
「………。」
アトランティス内部、螺旋階段の途中で例の如く黒髪金瞳の女に出会う。例の如く、というのは此処に来る度にこの女に絶対会うからだ。うんざりする。
「ねえねえ、今日こそ私を連れ出してくれない?」
「…………」
「ほら、長い付き合いじゃない私たち。今日もあのガーランドのくそオヤジが留守だからさ、ちょーっとばかし外に出たいのよね!」
「…………」
「大丈夫!外に出れさえすればあとはなんとかするから!とりあえず自動販売機でジュース買って、スマホも欲しいから携帯ショップ行って………お金は、まぁ、ないけど!バイトがあるはず!日当ある所で働くから!」
「……………」
全部いつもの内容だ。とはいえ、理解はできない。知らない単語が多い上、こう捲し立てるものだからなおさら口を開くのが億劫だ。
俺が歳を重ねたように女も歳を重ねた。小さかった身体は大きくなり、美しい女に育った。黒髪は綺麗に伸び、黄金色の瞳は宝石のよう、着ているドレスも露出が控えめながらも豪華な物。帝国内を見てもこれ程の美しい女はいないだろう。………とはいえ、この無遠慮な女になんの魅力も感じはしない。最初に出会ったあの日以降一言も話はしていない。
話は簡単だ。女はどうやらこのアトランティスから出たいらしい。勝手に出ればいいものを、とも思うが至る所に魔法が組み込まれている。並の人間では息をするのもキツいであろう聖域。それだけでこの女はとてつもない魔力を持っていると証明しているようにさえ思う。
「ねえ、無視しないでよ。私と貴方の仲じゃない。お喋りはしたことないけど、もう10年は顔を合わせているわけでしょ?幼馴染のお願いくらい聞いてくれてもいいんじゃないの?」
「……………」
「ちぇっ、また無視。眉間のシワ深すぎ。はーぁ、外に出てみたいな_____」
「…!」
瞬きをしたらそこはアトランティスではなく自室だった。……いつもの事だ。今日は螺旋階段の所だった。龍神が気づくのが早かった、という所か。女が勝手に言っていた事だか、転移魔法を使われた時、女も龍神_ガーランドというらしい_の元へ送られるそうだ。
10年も繰り返していたらわかる。あの女は__龍神にとって大事な女なのだろう。子供だと言っていたしな。
そこまで考えて、服を脱いだ。女に触られた服など着ていられまい。それぐらいあの女は嫌いだ。
龍神の娘など___自分を殺す龍神の子供など、興味ない。
いつの間にか部屋に着ていたメイドに女を連れてこいと命じ、悠然と椅子に座った。
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
王道学園と、平凡と見せかけた非凡
壱稀
BL
定番的なBL王道学園で、日々平凡に過ごしていた哀留(非凡)。
そんなある日、ついにアンチ王道くんが現れて学園が崩壊の危機に。
風紀委員達と一緒に、なんやかんやと奮闘する哀留のドタバタコメディ。
基本総愛され一部嫌われです。王道の斜め上を爆走しながら、どう立ち向かうか?!
◆pixivでも投稿してます。
◆8月15日完結を載せてますが、その後も少しだけ番外編など掲載します。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください
むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。
「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」
それって私のことだよね?!
そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。
でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。
長編です。
よろしくお願いします。
カクヨムにも投稿しています。
聖女召喚に巻き添え異世界転移~だれもかれもが納得すると思うなよっ!
山田みかん
ファンタジー
「貴方には剣と魔法の異世界へ行ってもらいますぅ~」
────何言ってんのコイツ?
あれ? 私に言ってるんじゃないの?
ていうか、ここはどこ?
ちょっと待てッ!私はこんなところにいる場合じゃないんだよっ!
推しに会いに行かねばならんのだよ!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる