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第1章 異世界転生と出会い
生贄皇子17歳、次期龍神15歳のある日
しおりを挟むあの日、アトランティスに行ってから俺は執務に疲れたり戦場から帰ってきたりするとアトランティスに行くようになっていた。かれこれ10年は通い、今年で17だ。なにかに行き詰まっても、"確実な死"があるこの場所を歩くだけで自然と自分を見つめ直せる。
どうせ死ぬのだから、と自分の中で区切りをつけられる。そんな場所となっていた。色んな意味で心休まる場所……………ではあるのだが。
「ぬぉっ!また会ったな少年!」
「………。」
アトランティス内部、螺旋階段の途中で例の如く黒髪金瞳の女に出会う。例の如く、というのは此処に来る度にこの女に絶対会うからだ。うんざりする。
「ねえねえ、今日こそ私を連れ出してくれない?」
「…………」
「ほら、長い付き合いじゃない私たち。今日もあのガーランドのくそオヤジが留守だからさ、ちょーっとばかし外に出たいのよね!」
「…………」
「大丈夫!外に出れさえすればあとはなんとかするから!とりあえず自動販売機でジュース買って、スマホも欲しいから携帯ショップ行って………お金は、まぁ、ないけど!バイトがあるはず!日当ある所で働くから!」
「……………」
全部いつもの内容だ。とはいえ、理解はできない。知らない単語が多い上、こう捲し立てるものだからなおさら口を開くのが億劫だ。
俺が歳を重ねたように女も歳を重ねた。小さかった身体は大きくなり、美しい女に育った。黒髪は綺麗に伸び、黄金色の瞳は宝石のよう、着ているドレスも露出が控えめながらも豪華な物。帝国内を見てもこれ程の美しい女はいないだろう。………とはいえ、この無遠慮な女になんの魅力も感じはしない。最初に出会ったあの日以降一言も話はしていない。
話は簡単だ。女はどうやらこのアトランティスから出たいらしい。勝手に出ればいいものを、とも思うが至る所に魔法が組み込まれている。並の人間では息をするのもキツいであろう聖域。それだけでこの女はとてつもない魔力を持っていると証明しているようにさえ思う。
「ねえ、無視しないでよ。私と貴方の仲じゃない。お喋りはしたことないけど、もう10年は顔を合わせているわけでしょ?幼馴染のお願いくらい聞いてくれてもいいんじゃないの?」
「……………」
「ちぇっ、また無視。眉間のシワ深すぎ。はーぁ、外に出てみたいな_____」
「…!」
瞬きをしたらそこはアトランティスではなく自室だった。……いつもの事だ。今日は螺旋階段の所だった。龍神が気づくのが早かった、という所か。女が勝手に言っていた事だか、転移魔法を使われた時、女も龍神_ガーランドというらしい_の元へ送られるそうだ。
10年も繰り返していたらわかる。あの女は__龍神にとって大事な女なのだろう。子供だと言っていたしな。
そこまで考えて、服を脱いだ。女に触られた服など着ていられまい。それぐらいあの女は嫌いだ。
龍神の娘など___自分を殺す龍神の子供など、興味ない。
いつの間にか部屋に着ていたメイドに女を連れてこいと命じ、悠然と椅子に座った。
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