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第1章 異世界転生と出会い

プロローグ

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  ____どうしたらお前を救えるんだ?









 薄いピンクのような赤みがかった銀のような色の髪、紅い瞳の男・ラフェエルが空を見上げながら問う。









 その視線の先には、いやに青白い月の光を長い黒髪に乗せた黄金色の瞳の女・アルティア。ラフェエルはギリ、と歯ぎしりをしてから言葉を紡いだ。





 _____私が死ねばよいのか?







 ____この穢れた血を神に捧げればよいのか?





 ___そうしたらお前はその呪われた螺旋から降りられるのか?







 ___私達は来世で、出会える事ができるのか?









 ___……もう、その手で私を振り払わないで抱きしめ返してくれるのか?










 苦しそうに、悲しそうに顔を顰める男。それを見た女は冷ややかな瞳で見下ろし、言う。











 ____そんな日は、永遠に来ないわ。









 _____何故?







  ____何故?それは…………















* * *











  「あぶっ!」







   そこでハッ、と我に返る。何今の……記憶?にしては鮮明というか文学的というか……昔読んだ小説かな?にしても、私と同じ名前って……。







   『 どうしたんだ? 』









   「…!」





   地鳴りのような声と共に、大きな黒いトカゲの尻尾が私に触れようとする。私はそれを避ける為に飛びたい、と願う。それだけでふわり、身体が浮いた。そして尻尾の正体____漆黒の龍を睨んだ。







 「あぶー!」











 『本当に可愛い子供だねぇ。 親の顔を…と、親は我だったか』







   龍はそう言ってふう、と溜息をついてから一瞬で黒髪の男に化けた。 私と同じ黒い髪に金色の瞳。 黒いロープを優雅に着こなすイケメン。 けど、私は赤ん坊な上親である彼に欲情などしない。











   そんな事を思ってると、男はクイ、と人差し指を曲げた。すると私の体はあっという間に男に引き寄せられ、抱き締められる。









 『 可愛い可愛い我が子……アルティア 』







 「……」









   アルティア=ワールド=ドラゴン。 それは"今"の私の名前。……私は前世の記憶を持っている。 しかし小説界で流行ってる乙女ゲームや小説の中の"ヒロイン"や"悪役令嬢"に転生してヒーローに溺愛されたり、はたまた幸せになるように頑張ったり……そういうの物語では全然なく。というか、人間ですらない。









   私の魂は"龍神の後継者"に選ばれたのだ。















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