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最終章 Heroine Becomes a Hero !
エピローグ
しおりを挟む「セラ~遅いぞ!もっと早く走れよ~!」
「待ってよ、アド!早すぎるわよ!」
子供達は走っている。
此処は、小さな泉のある場所。大木を中心に、草木、花が囲んでいる。冬なのに、ここだけ季節を無視して花が咲き乱れている。すごく静かで、美しい場所_____ヴァリアース大国で、初めてデートをした場所だ。
16歳の時、俺はここで愛する人と結婚することを決めた。戸惑っていたのに、それでも愛する御方のそばに居るのは心地いいと知った場所。
そして、その決めた事は____間違いなわけがなかった。
「セオ様、紅茶を淹れました」
そう言って隣でふわり、と笑うのは初めて来た時、いいや、もっと前から慕っていた愛する御方_____アミィール。
俺は『ありがとう』とお礼を述べて差し出された紅茶に口をつけた。少しだけ苦い。けれども、進歩だろう?ここに初めて来た時、アミィールは紅茶も淹れられなかった。今では少しずつだけど、自分から紅茶やお菓子に挑戦しているのだ。
それを思うと、この小さな失敗さえも愛おしい。
「あの、………お味はどうですか?」
「………ッ」
心配げにそう上目遣いで聞いてくるアミィールが可愛すぎて、俺は顔に熱を集中させる。………どうやら、俺はとことん変わっていないらしい。もう24だというのに情けない。16歳から強くなったはずなのに………
セオドアはそんなことを思いながらも首を振って、笑顔を零す。
「美味しいけれど、もう少し淹れる時ゆっくり回すように淹れるとさらに良くなるよ」
「はい、…………が、頑張ります!」
そう言ってガッツポーズを取り、子供達用のジュースに手をかけたアミィール。それを横目に、子供達が駆け寄ってきたのに気づいた。
「マドレーヌが食べたいです、お父様!」
「俺、ポテトチップス~!」
5歳になった子供達は、このように好きなお菓子が出来た。セラフィールは甘いもの、アドラオテルはしょっぱいもの。なんというか、性格が出るよな。
セオドアはそんなことを思ってふ、と笑みをこぼして父親の顔をする。
「ああ。食べてもいいけれど、食べながら走ってはダメだぞ?」
「はーい!」
「えー」
「アド、返事ははい、だ」
「ほい!」
「は、い!」
「ほ、い!」
アドラオテルと睨み合う。生意気さは加速している。ムカつく子供である。絶対大きくなったら今以上に厄介になるぞ………!あと最近はセラフィールも無鉄砲になってきている。アドラオテルはお馬鹿だから誤魔化せるけれどセラフィールは賢いから子供騙しは効かない。どちらにせよ厄介である。
「はい、オレンジジュースです」
「わーい!」
「わーい!」
子供達はオレンジジュースを受け取ると、ごくごくと飲み始める。
それを見ながら、アミィールは優しくセオドアを抱き寄せた。
「____セオ様、わたくし、今、すごく幸せです」
「____俺もだよ、アミィ」
セオドアは少しだけ顔を赤らめて、アミィールの腰に手を回した。
あの時のシチュエーション。それは乙女な俺には美味しすぎる。けど、俺はもうただの乙女ではない。
「アミィ」
「はい____ッん」
セオドアはアミィールに唇を重ねた。
触れるだけのキス。甘い、甘い、蕩けてしまいそうなキス。あの時はまだできなかった。けど、今はできる。
____まだ、不安はある。
____呪いがなくなったからとはいえ脆い体という現実は消えない。
____だから俺は、考えるのをやめない。
愛するこの御方を、愛するこの御方との大事な子供達を守るために。
乙女男子だって、男だ。
_____愛する女を笑顔にするのは、ヒロインでは居られないだろう?
そう思うセオドアの両手首には、あの日の傷が残っている。痛々しいのに、彼は隠さない。『男の勲章』として大事にしている。
______この物語は、ギャルゲーの主人公に転生したヒロイン系乙女男子が。
______モブなのにヒーロー気質の男前皇女に様々な方法で求愛されて。
______『男』として成長し。
______愛する『女』を守る為に色々な事に参りながら。
_____奮闘する物語である_____
Fin .
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