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最終章 Heroine Becomes a Hero !
幸せな家族の枷 #1
しおりを挟む_____どんなに果てしない、難しい事でも、対応策があれば、その手管があればなんとかなるもので。
途方もないと思うものにも、"終わり"があるのだ。
* * *
「~♪」
群青色の短髪、緑色の瞳のセオドア・リヴ・ライド・サクリファイスは鼻歌を歌いながら、お菓子を作っていた。
彼はギャルゲー『理想郷の宝石』の主人公に転生したが攻略対象と結婚をせず、隣国の大帝国の皇女に見初められ求婚、結婚を経て子供を授かり、今年で23を迎えた未だに若々しい美男子である。
「おとうさま、このホイップは、これでいいのですか?」
そう声をかけたのは紅銀のふわふわした髪、黄金と緑の瞳を持つ花のような美少女で娘のセラフィール・リヴ・レドルド・サクリファイスだ。4歳になった彼女は、大好きな父親と絶賛お菓子作り中だ。
「ホイップよりチョコチップにすれば~?」
ひょこ、と台所のカウンターから顔を出したのは群青色の短髪、紅と黄金の瞳の美少年で息子のアドラオテル・リヴ・レドルド・サクリファイスだ。
彼はセラフィールと双子で、同じく4歳である。
「チョコチップはいやよ、パンケーキは生クリームがいいもの」
「お子ちゃまだなあ、セラは。チョコチップの良さもわからないなんて、………ふっ」
「その笑い方、ムカツキ」
「その言い方やめなよ~」
「アドの真似だもんっ!」
子供達は4歳を超えてから何かと喧嘩が増えた。顔が似ていない2卵生の双子だから身長以外なにもかもが違う。それも可愛いが、喧嘩はよくない。
そう思ったセオドアは2人を笑顔で止める。
「2人とも喧嘩しないの。生クリームもチョコチップも美味しいし、どちらにも良さがあるんだよ?
両方使えばいいだろう?」
セオドアという男はこのとおり、甘いものが大好きでお菓子好きな乙女男子だ。そして優しいからほとんど強くは叱らない。故に子供達は我儘を言う。
「いやですわ、わたくしは生クリームだけがいいです」
「俺だってチョコチップだけがいいもーん」
「うーん、困ったなあ」
「2人とも」
セオドアが困った笑みを浮かべていると、ダイニングの方から凛とした声がした。その声に双子は背筋をピン、と伸ばす。俺はダイニングを見た。
ダイニングには____このサクリファイス大帝国の皇女である紅銀の長髪、黄金の瞳を称えた美しい美女。セオドアの妻で子供達の母親であるアミィール・リヴ・レドルド・サクリファイスだ。
アミィールはにっこりと笑って二人の子供たちに言う。
「喧嘩をしている悪い子はおりませんですよね?お父様を困らせる悪い子は?」
「…………………アド、チョコチップ、いれていいよ」
「………………セラ、生クリーム多めでお願いね」
「……………ふ」
破天荒な子供達がしょぼくれる様に思わず笑みが零れた。歳を追うにつれて、母親の怖さをしっかり知ってしまった双子の末路である。俺とは違って男らしく、ダメなものはダメとはっきり言えるのがアミィールのすごい所なのだ。
俺達は断言出来る、『あべこべ家族』だ。
セオドアは1人そう考えながら、セラフィールと共にお菓子を作った。アドラオテルはちょっかいをかけつつも真剣にチョコチップをパンケーキに敷き詰めるように並べていた。因みにアミィールは台所立ち入り禁止だ。この前鍋を爆発させたから。さりげなく『私がやる』なんて言ってやっている。
…………この幸せな家族。けれど、障害がないわけではない。俺は大天使の血筋を、アミィールは龍神の血筋を持っている。
龍神___10万年前から、約20年前までこのユートピアを支配していた最上の神だった存在。たくさんの死から生まれた"亡者の思い"の集まりで、この国を壊そうとしていた。人間や妖精神、精霊は戦うも敗北し、代表者をそれぞれ生贄として縛り付けた。それに異を唱えた元サクリファイス大帝国の国民達は『呪い』をかけたのだ。
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