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第31章 『呪い』と戦う主人公
子供たちの暴走看病 #1
しおりを挟む「セオ様、お粥が来ましたよ」
「ああ。ありがとう」
そんなことをやっていたらお腹が空いてきて、執事のレイにお粥を持ってきてもらった。本当はアミィールが作ろうとしていたのだが、アミィールは残念ながら家事が苦手で、台所が大惨事になると思って「材料がないから」と言ったのは内緒の話だ。
とはいえ、これは看病イベントである。『あーん』はして欲しい。なんと言えばいいのだろうか…………
悩んでいるセオドアに、アミィールはくす、と笑う。
「僭越ながらわたくしがセオ様に食べさせて差し上げたいのですが、どうでしょうか?」
「!」
来た来た!流石アミィール、俺の言いたいことをわかってくれる。優しくて嬉しくて顔がにやけてしまう。それを必死に隠して言葉を紡いだ。
「………じ、じゃあ、お言葉に甘えようかな」
「ええ。体調が優れない時くらい___?」
アミィールの言葉の途中で、コンコンというノック音が聞こえた。アミィールが『わたくしが出ます』と言って立ち上がる。
いいところだったのに………なんて不満を抱いていると、よじよじと小さい身体をばたつかせて、反対側に居たはずのアドラオテルがひょっこり顔を出した。
「父ちゃん!俺が食べさせてあげる!」
「え?」
アドラオテルはそれはそれはいい笑顔でそんなことを言った。プルプルと震えながらお盆を持ち、自分の膝に置く。正直見ていられない。危なすぎる。
「いや、その、アド?危ないから………「俺がやるのー!」……はあ」
ぎゃん、と吠えるアドラオテルに溜め息が出る。これはいくら言ってもやるだろう。なにより、あの生意気な子供、アドラオテルが俺の看病をしたがってくれているんだ。嬉しくないわけがない。
セオドアはそう考えて、ふわり、笑った。
「じゃあ、お願いしようかな」
「うんっ!じゃあ、はいっ!」
「う___んっ!」
アドラオテルはそう言って笑顔でスプーンでお粥を掬って差し出してくる。スプーンに乗ったお粥は湯気を立てている。熱そうだ。セオドアは息を吹きかけようとするが、『えい!』といって無理やり口に突っ込まれた。あ、熱い………!
あまりの熱さに悶絶するセオドア。それを見てアドラオテルは首を傾げる。
「父ちゃん、具合悪いの?」
「い、いや、ちょっとだけ熱かったんだ………」
ヒリヒリと痛む舌を抱えながら笑みを称える。するとアドラオテルはふーん、と言った。
「じゃあ、次は冷ますよ!
ふーっ!」
「あっつ!」
アドラオテルは思いっきりスプーンに向かって息を吹きかける。あまりに大きな息にスプーンに乗っていた米粒が宙を舞い、セオドアの顔面に直撃。
熱々の米達がセオドアの整った顔に降り掛かってセオドアはさっき以上に悶絶した。
そうこうしているうちに、アミィールが戻ってきた。
「セオ様、お待たせ__!?どうしたのですか!?」
「………ッ、ッ………」
セオドアはあまりの熱さに言葉を失いながら、傍に置いてあった冷やしたタオルを顔に着けた。その間、セオドアは「怒ってはだめだ」と自分に言い聞かせた。
* * *
「では、身体を拭かせてもらいますわ」
「ああ」
お粥をもう一度作ってもらっている間にアミィールが身体を拭いてくれるという。再び看病イベントだ。こんな明るい昼間に身体を見られるのは恥ずかしいけれど、それでも嬉しくてお願いする。
アミィールは『失礼致します』と慣れた手つきで夜着を脱がしてくれる。なんというか、営みとは違う手つきに新鮮さを感じた。幸せである。アミィールはせっせと俺のからだを濡れたタオルで拭いてくれる。汗をかいていたから気持ちいい。
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