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第31章 『呪い』と戦う主人公
定められた運命は覆せる
しおりを挟む俺は、暗闇の中に居た。
暗闇の中で、ただ1人だけ。
寒くて、苦しい。
俺はここで何をしている?
_____龍神を殺せ!
なんの声だ……?
_____ゼグス様を奪わないで!
ゼグス?………星の妖精神のか?
_____私達の命を捧げるのです。
どこかで聞いた話だな。
_____そして、憎き龍神に『呪い』を。
嗚呼、そうか。
この声は……………あの人柱の人達の声だ。
原理も理屈もわからない。
いや、実際死者に嫌われるようなことをしている。
己の望みのために、呪いを解こうとしているんだ。
…………己の望み?
望みとは、なんだ?
俺はギャルゲーの主人公で。
攻略対象キャラと結婚して。
それはどんなに嫌だと言っても変わらなくて。
それが定められた運命で。
俺はそれを受け入れることしか____
そう思った時。
淡い記憶が蘇る。俺は下を向いていて、視線の先には紅銀の髪の、黄金の瞳の美しい人がいて。
____どうか、わたくしの配偶者になっていただけませんか?
…………!
ぶわ、と緑の光が舞った。
____セオドア様のこともっと知りたいもん。
____セオドア様のやっていることをわたくしもやってみたい。
____わたくしは貴方が好きです。
_____セオドア様!
____セオ様。
____セオ。
沢山の、沢山の心地よい声。
俺は自然とそれに魅入っていた。
美しい少女が笑ったり、泣いたり、目を細めたり、伏せたり、怒ったり。
見ていて飽きることはない。
それどころかもっともっととそれを求めた。
_____パパ!
____父ちゃん!
紅銀の髪、黄金と緑の瞳の女の子が花のように笑顔を零している。
自分と同じ群青の髪、紅と黄金の瞳の男の子が口を尖らせている。
____嗚呼、そうだ。
俺は定められた運命を、捨てた。
愛おしいあの御方の手を取ったんだ。
そして俺はいろんな人に出会い、幸せになって。
それだけじゃなくて、生まれた子供達がさらに俺に幸せをくれて。
定められた運命なんかよりも、幸せだと断言出来る。
だからこそ。
それをくれたあの御方と、子供達の定められた運命を変えたくて___抗っているんだ。
その答えを見つけた時、一筋の光が暗闇に差した。
俺はその光に手を伸ばした_____。
* * *
「………………ん」
「セオ様!」
「パパ!」
「父ちゃん!」
目を覚ますと____愛おしい家族が、俺を見下ろしていた。何があったんだ……?
「アミィ、セラ、アド、…………どうした?」
「ッ、セオ様…………ッ!」
「わっ!」
アミィールがせっかく起き上がった俺を押し倒すように抱き締めてきた。アミィールには似合わない、強い力の抱擁。この細い腕にどれだけの力があるんだ?
「パパ!」
「父ぢゃん!」
「うわわっ」
顔面には鼻水と涙のダブルパンチ×2である。アドラオテルまでこんなに取り乱して泣いていて、正直戸惑った。
「えっと、………アミィ、私は、一体どうしたんだ………?」
「覚えて、らっしゃらないのですか…………?過労で、熱を出して………」
「え」
そう言われて、考える。
確かに体はダルい、寒い、の割には顔が熱く頭が重い。アミィールと子供達に抱き締められているとはいえ、確かに体調不良だ。
俺、予防はしっかりしていたんだけどな………いや、夜更けまでワールドエンドまで居たし、血を流していたし、普通に執務も育児もしていたし………知らないうちに過労が溜まっていてもおかしくない、か。
そう思い至った所で、愛おしい重みを一つ一つ抱いて、もう一度起き上がった。
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