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第31章 『呪い』と戦う主人公
『秘密のミッション』、始動
しおりを挟む『身体中の血を使うなんてふざけた事をするのなら俺様はお前の滞在を許さない。
俺様は死神だ。このワールドエンドの神』
「お前の力を借りずともその前に私が許さない」
「ですがっ…………!」
『___10日に1回』
「………?」
ケルベロスがぽつり、と再び口を開いた。ハデスは『そうだね』と言ってから改めて俺を見た。
『10日に1回、100本を目安にやろう。そうすれば身体に負担はかからない。
どうだい?ラフェエル』
「……………いいだろう。体調の悪い日などはやるな。ここに来る時は私がいるのが条件だ。
セオ……………いいか?」
「_____」
いいか、じゃない。
結局決められている。アミィールがいつどうなるか分からないのに、なんでそんなに冷静で居られるんだ。
俺は、俺が死んでもやらなければならない。父親として、___夫として。
『____死んだ後に残るアミィールやその子供達は溜まったもんじゃないな』
「…………え?」
ハデスは糸目を開けて金色の瞳で俺を睨んだ。
『お前が約束を守らず、それで死んで何も成し得なかったとしたら………残された者達はどうなる?
お前は死ねば終わりかと思うだろうが、アミィールにも子供たちにも"明日"がある。愛する人間が自分たちのせいで死んで____幸せになれる者たちなのか』
「…………それは……………」
言葉に、詰まった。
仮に逆の立場でアミィールが自分で傷ついて俺を助けようとして死んだら………怒るだろう。悲しむだろう。
俺一人の行動に____みんなを悲しませてしまう。
「ふぅん!」
『!』
セオドアは自分の両頬をパァン!と叩いた。乾いた音が響く。セオドアは___涙を零さず、男の顔で言った。
「____その条件で、やります」
『……………よくいった』
ハデスはそう言って、にか、と歯を見せて笑った。
____この日から、『秘密のミッション』が始まった。
* * *
『あ~、お前の菓子は美味いなあ』
「ありがとうございます」
『…………美味』
「ありがとうございます」
セオドアは人柱に血を垂らしながら、セオドアの作った菓子を食べる死神・ハデスと闇の精霊・ケルベロスにお礼を言う。それを聞いていたラフェエルが言う。
「こんなもの達にお前の菓子を食べさせる必要はないんだぞ、セオ」
『こんな者達とは失礼だな、俺様達は神だぞ』
『……………失礼千万』
「ははは、…………」
何度も顔を合わせていれば、ハデスとケルベロスの性格はわかるというもので。
ハデスはドゥルグレとは違う『クール系俺様キャラ』でケルベロスは『寡黙系忠犬キャラ』なのだ。絶対乙女ゲーム『理想郷の王冠』の攻略対象キャラである。
でも、アミィールに好意がまるでない。
それよりも常々『アルティアに救われたんだ』と言っていて………この乙女ゲームの主人公はアルティア皇妃なのかもしれない可能性さえ出てきてる。
それはともかく、俺は10日に1回、100本の人柱に血を落としている。1滴ではしっかり消えないから、結構な量を落としている。だから最近は少し貧血気味で、さりげなく『ほうれん草が食べたい』、『レバーが食べたい』などとシェフに隠れてお願いしている。
シェフとは親しく、『セオドア様の為なら喜んで!』などと言って聞いてくれるから助かっているんだ。シェフだけじゃない、今ここにいる全員が、俺を文字通り守ってくれている。
ワールドエンドと言うのはアンデッドの巣窟で、しょっちゅうアンデッドに襲われる。それは死神や闇の精霊が作り出したものではなく、この国に蔓延る亡者の思い___"小さな龍神の卵達"が暴走しているのだ。
俺は、この仕事が終わったら率先してこのワールドエンドのアンデッドを倒そうと思っているのだ。
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