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第31章 『呪い』と戦う主人公
10000本の『呪い』
しおりを挟む「わ………………ッ!」
紙の中に入ると、俺は空中を落ちていた。フライの魔法を唱える前に、ラフェエル皇帝様が俺をキャッチしてくれた。
「ッ…………すみませ____!」
セオドアはそういう前に、言葉を失う。
たくさんの、たくさんの人柱が並んでいた。柱に埋まった人間が生々しくて、吐き気を催す。けど、吐いてはいけない。
これが____現実なんだ。
催したものを飲み込んでいるうちに、ラフェエル皇帝が下ろした。そして、言う。
「ここが___元サクリファイス大帝国で、"幻の島"・ワールドエンドだ」
「…………ッ、はい」
目のやり場に困る。どこを見ても生々しい人柱が乱立しているんだ。直視なんて、出来ない。
『来たな、ラフェエル』
『…………噂の人間も一緒か』
「…………?」
不意に、声がした。
見ると___逆立った黒髪、糸目のチャイナ服の男と、スキンヘッド、サングラスにスーツ姿の男が居た。誰だ、と聞く前に、ラフェエル皇帝様がその2人の名前を呼んだ。
「死神、闇の精霊…………久しいな」
「……!死神様、闇の精霊様!お初にお目にかかります!」
セオドアはそれを聞くなり膝をつき、最上の礼を尽くした。頭を下げるセオドアに『堅苦しいのは嫌いだ』と冷たく言い放った。
『俺様はハデス。こっちはケルベロスだ』
「あ、えっと………」
死神、と言うからもっと怖い神だと思っていたが………そうでは無いらしい。軽やかな人で、それはそれで戸惑った。
ケルベロスはセオドアを捉えるとぽつり、言う。
『…………不思議な魂だ』
『それもどうでもいいんだよ、ケルベロス。
口より____効果で示してみせよ』
「ッ!?」
「セオ!」
ハデスがそう言うとビッ、とセオドアの手首に切り傷が入った。血が流れる。ラフェエルはきっ、とハデスを睨んだ。
「何をする、ハデス」
『汚れ仕事を請け負っただけさ。血を使うのだろう?ならば、傷が無ければならない。
それより、早く試せ』
「…………はい」
セオドアは痛む腕を自分の手で支えて、一番近くにあった人柱に血を落とす。
すると。
「____!」
人柱が、光った。黒い光を纏って、サラサラ、と粉のように柱が無くなっていく。これは………成功なのか?
『………うん、成功だ』
「ッ!」
ハデスが一気に距離を詰めてきて、俺の肩に触れた。まじまじと血を見ながら続ける。
『驚くことは無い。心を読んだだけだ。
で、成功さ。呪いは___否、呪いの為に命を捧げた者たちが、消えている。つまり、………呪いの効果は、軽減されている』
「な、ならば!これで呪いは……」
『早合点するな』
次はケルベロスが声をかけた。
ケルベロスは静かに、たどたどしく言葉を紡ぐ。
『…………柱は、1本ではない。ワールド=ドラゴン遺跡までの道のりに10000本ある』
「…………10000本………………」
途方のない距離と数に、目眩がした。だって、ひとつの柱に100人は居る。それが10000本となると…………俺の体の血を全て抜くしかない。
____上等だ。
「____続けます。10000本でも100000本でも、いくらでも私は血を捧げます」
「巫山戯るな」
「うっ」
俺を叩いたのは、ラフェエル皇帝様だった。ぎろり、と睨んで言葉を紡ぐ。
「お前は死ににここに来たのか?ならばすぐさま帰らせる。死にたがりを死なせてやるほど私は優しくない」
「ッ!ですが!私は一刻も早く、呪いを___『そんなことしたら本当に死んじゃうよ、お前』………」
糸目の男は、冷ややかに言った。
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