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第30章 巡る巡る夏の夜

世界観全無視祭り

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 「わあ~」


 「わあ~」



 「……………おお………」



 「素晴らしいですわ……………」





 セオドア一行は城を出て城下町に来た。城下町はとてつもなく賑わっている。沢山の出店が立ち回り、笛の音もする。中世ヨーロッパの街並みのはずなのに、日本のお祭り風景である。

 でも、それは当然で。
 どんな屋台がいいか、どんな催しがあればいいか等、前世で日本人だった俺やアルティア皇妃様、フラン様が話し合いを重ねて作ったから、どうしても海外の祭りよりは日本の祭りになってしまう。世界観無視だ。

 けど、そんな祭りでも、楽しげな雰囲気には心が踊る。子供達は実際カランコロンと俺の作った下駄ではしゃぎながら踊っている。


 「たくさん、たくさーん!」


 「面白いもの、たくさーん!」



 「だめだよ、先に行ったら迷っちゃうから」


 「ふふ、今日はきっとセラもアドも言うことを聞きませんね」

 「だね。………まあ、いつも聞く2人ではないけれど」


 「それより、………このお祭りはフラン様とお母様、そしてセオ様が考えたとお聞きしましたが、本当なのでしょうか?」


 アミィールは子供たちを見ながらそう聞いてきた。丁度考えていたことだからすんなりと言葉が出た。


 「ああ。こういう祭りに私達は詳しくてね」


 「……………いつか、詳しいお話をおきかせくださいね?」


 「う………」



 アミィールの悪戯っぽい笑みに弱い俺は、顔に熱を集めながら頷くしかできなかった。


 そんなセオドアを他所に、子供達はこちらを向いた。



 「お腹、お腹すきました!いい匂いしますわ!甘いものが食べたいです!」


 「おれ、しょっぱいのー!」



 「はいはい、順番ですよ?」


 「甘いのならりんご飴がいいかな?しょっぱいのなら………ん?」


 そんな話をしていると、国民達が手を合わせて拝んでいることに気づく。辺りを見渡すが、拝むようなものは無い。

 もしかして…………


 「アミィール様とセオドア様、アドラオテル様にセラフィール様よ………」


 「挨拶したいわ………」


 「だめだ、忍んできてくださったのだろう」

 「それにしても不思議な服装………眼福でございます……」


 「うちの店に来てくれねえかなあ………」



 「……………」


 「……………」


 アミィールとセオドアは黙る。
 最初から目立つ見た目をしている俺達が浴衣とか甚平とかない世界でその格好をしていればバレるのは必至である。完全に失念していた。


 国民にまで気を使わせる俺たちって…………



 ずーん、と凹むセオドアに、アミィールは困った笑みを浮かべながら言う。




 「と、とりあえず、お祭りを楽しみましょう?これは視察なのですから」

 「そ、そうだね」



 そんな話をしていると、向こうからざわざわとした声が聞こえた。セオドアとアミィールはそちら側に寄ってみる。

 そこには____

 「はむはむはむはむ」


 「あむあむあむあむ」


 「……………」

 「……………」



 セラフィールは両手にわたあめとりんご飴を。
 アドラオテルは両手にフランクフルトと唐揚げ棒を持って貪っていた。もちろん子供達はお金を持っていない。つまり。


 「セラ!アド!お金を払ってないものを食べちゃいけません!」

 「ひうっ!」

 「んぐっ!」


 セオドアは大声で2人を怒った。
 2人は口にそれぞれの食べ物を含みながらキョトンとしている。それを横目にアミィールは持っていたお金で各出店にお金を支払ったのだった。



 ___子供達は城からあまり出たことがないからこういう常識は通じないのだ! ▽







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