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第30章 巡る巡る夏の夜
主人公はイベント好き
しおりを挟む「これが『花火』だよ。綺麗だろう?」
「はなび…………!これ、たくさんみたい!ばーば!おれ、みたい!」
アドラオテルはそれを聞くとアルティア皇妃様に駆け寄ってよじ登り顔の近くでアピールする。アルティア皇妃はそんなアドラオテルを撫でながら優しく言った。
「残念ながら1発しか持ってきてないの。
あとは量産して、花火大会で365回は飛ばすわ」
「365回!?そんなに飛ばすんですか!」
あまりの多さにセオドアは大きな声を上げる。アルティアはぐっ、と親指を立てた。
「1年分………かっ飛ばすわ」
「………………」
この人、目のクマ凄いけどちゃんと寝れているのかな…………
少し心配になったセオドアだった。
* * *
「うぅん……………」
セオドアは悩んでいた。
頭を抱え、こう唸りながら石像のように動かない。しわくちゃで厳しい顔は整った顔を崩壊させるには十分だ。
かれこれ3時間はこれをしているものだから、とうとうレイは聞いた。
「セオドア様、いかがなさいましたか?」
「………………レイ、俺は厳しい決断をしなければいけないのかもしれない」
「と、いうと?」
レイの言葉にセオドアはやっと動いた。ゆっくり動き、大真面目な顔で言葉を紡いだ。
「アミィとセラの浴衣、白と黒と赤、どれがいいのか俺は選ばなければならないんだ」
「……………………」
「それだけじゃない。アドの甚平と俺の甚平はお揃いだ。俺の趣味で暗い色にしてみろ、アドのかっこよさが半減してしまうだろう?
だから、明るい色を取り入れようと思うのだが…………あいにく俺は明るい色は似合わない。水色でさえ明るいと思ってしまう俺はどうすれば…………どうすればいいんだッ……………」
「……………………どうでもいいわッ!」
「アダッ!」
レイは執事モードをやめて、パァン、と馬鹿な主人の頭を叩いた。主人___セオドアの周りには沢山の着るのが大変そうな服が散らばっている。
セオドアはきっ、と睨んだ。
「どうでもいいとはなんだ!どうでもいいわけないだろ!?アミィとセラの初浴衣でアドは初甚平だっ!大事件なんだよこれは!」
「着るものなんてどれでもいいだろ!?しかも色ってなんだ色って!」
「色は大事だろう!視覚は色を選別し印象づける!街を歩くとしたら皇族らしくあるべきだ!けど!俺としては普通に可愛い女達の魅力も出したい!
アドもだ!アドは青が好きだけど、これから皇位を継承するものだとしたら赤を着こなせなければだめだろう!?瞳も紅だし皇子っぽくしたいじゃないか!
つまり俺は真剣に取り組まなければならないのがなぜ分からない!?」
「分かりたくねえよこの乙女野郎!毎度毎度イベントごとに服を作りやがって!お前のクローゼットの中はお前の服よりアミィール様やセラフィール様、アドラオテル様の服の方が多いんだぞ!?
これ以上作るな!そしてクソして寝ろ!最近寝不足だろお前!朝っぱらからガタガタガタガタミシン鳴らしやがって!」
レイの言葉にカチンときたセオドアはレイの胸倉を掴んで言い返す。
「当たり前だろう!?俺はアミィと子供達の服に囲まれて幸せなんだよ!俺の趣味なんだよ!
寝ていられるか!あと10日もないんだぞ!?エンダーにも着付けの勉強をさせなければならないんだから寝ている暇などないんだよ!それよりどの色がいいか教えろ!」
「あの3人だったらどの色だって着こなすだろう!?あの造形の良さだぞ!?」
「ハッ、………そ、そうだった…………」
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