421 / 469
第29章 主人公の裏設定
穏やかで小さな幸せ
しおりを挟む「____血を見ていないな?」
そう聞いたのはこのサクリファイス大帝国皇帝であり、このユートピアで1番権力を持つ紅銀の短髪、紅い瞳の美丈夫でアミィールの父・ラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイスだ。
アミィールはその問いに顔をあげる。
薄く笑みを浮かべていた。
「もちろんにございます。………わたくしは人の親でございますゆえ」
「人の親ね~。ラフェーも少し見習ったら?」
そう軽い口調で言うのは黒い長髪、黄金の瞳の美女、この国の皇妃であり母親のアルティア=ワールド=サクリファイスだ。『最強生物』、『最上の神』であった龍神の末裔で、この世界で1番危険な女だ。
「…………アル、うるさいぞ」
「はぁ~い。それより、グレンズス魔法公国が潰れるか~、ドゥルグレが面倒見てたんじゃないの?」
「ドゥルグレは力で導くしか脳がない。人を見る目は最悪だ。………で、あれば我々サクリファイス大帝国で面倒を見た方が早い」
「私達の負担は増える一方ね。いつになったら私は平民になれるのかしら………」
「ふん、まだこのじゃじゃ馬に国など背負えるか」
「ふふ、わたくしがこの国の頂点に立った暁には現皇帝よりも素晴らしい国に致しますわ」
「……………」
「………………」
親子はお互い剣に手をかける。
これは喧嘩が始まるかしら?止めるの面倒なのよね~………あ、その必要ないかも。
アルティアがそう思ったのと同時に、玉座の間が会いた。すると子供達が飛び込んできた。
「ママ~!」
「母ちゃ~ん♪」
「セラ、アド!」
子供達はアミィールの元へ来るとぎゅう、と抱き着いた。アミィールもそれを受け止め抱き締める。
「おかえり!」
「おかえり!」
「ただいま帰りました、セラ、アド。
そして____」
アミィールは1度子供から目を離し、顔を上げた。そこには____愛おしい御方。優しい笑みで、出迎えてくださった。
「…………おかえり、アミィ」
「____ただいまかえりました、セオ様」
アミィールは目を細めて笑う。男___セオドアはそれを見て皇帝の前だというのも忘れて抱き寄せた。結婚して6年、二人の愛は冷めることを知らないのである。
* * *
「アミィ、本当にお疲れ様」
「ありがとうございます、セオ様」
セオドアの自室に戻ってきた家族一同は頬にキスをし合う。2日、たった2日なのに寂しかった。勿論、子供達が居るからその世話で大変だったけれど、それでも俺はアミィール様が傍にいないと不安で寂しくなって………子供達2人に『ちゅーしないで』と言われながら抱きしめて寝ていた。
「セオ様、わたくし、………セオ様がいなくて全く寝ていないのです」
「な、大丈夫かい?」
「ええ、………いえ、大丈夫ではないので、……失礼致します」
「___ッ」
アミィールはそう言ってセオドアの膝に頭を置いて寝転ぶ。ベッドで寝ればいいのに、わざわざ俺の膝の上って…………!
嬉しさと戸惑いで顔を赤らめるセオドアを下から見上げるアミィールは少し意地悪な顔をしている。
「セオ様の困ったお顔、大好きです」
「あ、アミィ………からかわないでくれ」
「からかってなどございませんわ。………わたくしは、貴方がいないと寝ることもままなりません。子供達がいないと元気も出ません。
ご飯は食べたのか、お風呂を入ったのか、ちゃんと寝てるのか、お菓子ばっかり食べてないか…………たくさん、たくさん考えてたら………ねれな、くて……すう」
アミィール様はそこまで言って目を閉じてしまった。………どうやら、本当に寝ていなかったらしい。この御方はいつだって責任感が強く、俺のことを、子供達を愛してくれているから死ぬ気でたくさんの仕事をこなしてきたのだろう。
セオドアはそう思いながらサラサラとした紅銀の髪に触れる。………よかった、血の匂いはしない。『任務』はめっきりやらなくなった、という。アミィール様が乱心して『抱いてください』ということも無い。
穏やかで、小さな幸せの日々が続いている。
そんなことを実感していると、『ママにお菓子を作るんだ!』 と言って自分たちでクッキーの型抜きをやり、オーブンの前でうきうきしていた子供達が戻ってきた。
「クッキー焼けた!」
「父ちゃん!クッキー!とって!」
「待ってね、………ママ、寝ちゃったから、しー」
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます
五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。
ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。
ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。
竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。
*魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。
*お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。
*本編は完結しています。
番外編は不定期になります。
次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる