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第28章 不安要素と新たなる決意
皇族お手製プール
しおりを挟むアルティアはあっけらかんとした顔で首を傾げるセオドアに言った。
「そんなビニールなんてケチ臭いこと言わなくていいじゃない。
ねえ、ラフェー、確か20年前潰した側室専用の宮廷の跡地があったわよね?」
「ああ」
「そこ、頂戴よ。それとも側室作る?」
「…………本気で言ってるのか?」
ギロリ、とアルティアを睨むラフェエル。アルティアは『冗談よ~』なんて笑ってから目を細めた。
「折角だし、家族で張り切りましょう。ねえ?セオくん」
「…………?」
「セオ様を誘惑しないでくださいまし」
アミィールはすぐさま自分の旦那を守るように手で制した。アルティアはけたけた笑う。
「もう5年も一緒にいるのにまだ疑うって、本当に馬鹿ねアミィールは。私はラフェー一筋よ。
ねえ、ガキ共」
「ガキ共じゃないしー!」
「アド、だめだよ、ばーば怒らせたらまた部屋が真っ黒になっちゃうよ」
「えっと、………アルティア皇妃様、どういう………?」
セオドアが戸惑いつつ聞く。アルティアは___肉にフォークをさして、にやり、と笑った。
「つまり_____」
* * *
「____こういうことよ!」
「どういうことですかッ!」
次の日、俺とサクリファイス大帝国皇族一同は全員時間を取って、側室専用の宮廷跡地に来ていた。よほど歴代の皇帝達は盛んだったらしく、建物はないものの土地は物凄く広い。跡地、更地である。
アルティア皇妃はこの暑い中黒いドレスを身に纏い、『わかってないわね~』と言う。
「いい?ここは異世界よ?そしてここは城よ?そんなちっさ~いビニールプールなんて作るくらいなら大きなプールを作っちゃえばいいじゃない!」
「そんなこと言ったって………この世界にはプールなんてありません!」
「あの、ぷーるとはなんでしょうか………?」
「アミィールは知らないわよね。水を貯めて、…………大きなお風呂みたいなことよ!」
「違いますっ!説明に飽きないでください!
プールというのは水を溜めて、泳ぐ練習をしたり遊んだりすることです」
「まあっ、セオ様は博識ですね。勉強になります」
「…………で、そのプールとやらは簡単に出来るのか?」
ラフェエル皇帝が呆れながら俺に言う。俺は首を振った。そんなもの作れるはずがない。俺は平凡主人公だ、チート能力も回復だしなにより前世の知識を活かせるほど前世を濃密に生きていない!
高速で首を振るセオドアを見て、アルティアは含み笑いをする。
「皆、わかってないわねえ…………私は最強生物よ?そして、水の精霊の契約者であるセオくんがいる!出来ないことなんてないわっ!」
「ないわー」
「ないわー」
子供達がエコーしている。本当に大丈夫なのかこの人?なんて思っていると、アルティア皇妃様は地面に触れた。
「まずは、穴よね。土そのまんまじゃ汚れちゃうから石を平らにして……………
よし、想像出来た!いくよ~………!
____複数魔法・巨大穴」
「!?」
アルティア皇妃様がそう言うと、側室専用の宮廷跡に大きな長方形の穴が出来た。それだけではなく、大きな岩が平になり、穴を整えていく。ものの3分でプールっぽい穴ができた。
「っしゃ、次はセオくん、水入れるよー!というか、全員でやれば早い!アミィールもラフェーもやってー!」
「は、はい!
水魔法!」
「わかりましたわ。………水魔法」
「はあ…………水魔法」
その場にいた全員が水魔法を出す。水はあっという間になみなみと溜まった。それが終わると、アルティア皇妃が太陽に向かって叫んだ。
「ドゥルグレー!聞こえてるなら太陽の温度上げなさーい!聞こえてなかったらあんたの福耳引っ張るわよー!」
そう叫ぶと太陽の照りが少し強くなった。………ドゥルグレ、凄い使いっ走りにされている…………
そんなことを考えているうちに、丁度いい温度のプールが出来たのだった。
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