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第28章 不安要素と新たなる決意

物語は動き出す

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 ゼグスの言葉に、首を振る。
 ワールドエンドの場所さえ知らなかった俺が知るはずがない。


 ゼグスが『そうだよね』と力なく笑った。

『つまりね、禁書庫に行けばいいという話じゃないんだ。

 満月の夜、龍神の遣い__龍神に仕える上位アンデッドの特殊な技を使い、そこに全妖精神を集め、屈服印と呼ばれる印を持った龍神の血を引く者、そして龍神と契約した者…………それらが揃わないと、道は開かれない』


 「そんなっ、それじゃあ………」


 龍神はもう居ない。
 破綻した話だ。ワールドエンドに行けないじゃないか。


 セオドアはじわり、と涙を浮かばせる。
 ……やっと、どうにか出来るかもしれない手段を得られたのに………


 そんなセオドアに、ドゥルグレは言う。


『諦めが早いぞ、セオドア。

 この世界に、___龍神では無いが、この条件を満たせている奴が一人いる』


 「___!それは、誰ですか!」


『アルティアとラフェエルだ』


 「アルティア皇妃と、ラフェエル皇帝………?」



『そう。あの二人は契約を未だ切っていない、加えて___アルティアは屈服印を全コンプリートしている。その上、アミィールの傍に居るメイドは、上位アンデッドだ。


 つまり、行く手段はあるんだ』



 「ッ、本当ですか!?」


 セオドアは大きな声を上げる。子供達はびっくりして目を覚ました。でも、セオドアは止まらない。


 「ならば、今から私はアルティア皇妃様に会ってきます!今すぐワールドエンドに行きます!」


『気が早いっつーの。聞いたろ?満月の夜なんだよ。

 そして、アルティアは___動かないだろうな』


 「なっ………なんでですか!?」


『アルティアにとって、ラフェエルにとって。あそこはそういう場所だからだ。

 ___無力な男にあの場を踏み荒らされたくないだろう。家族だからこそ、な』


 「___ッ」



 無力、という言葉が重くのしかかった。
 事実だから。………仮に人柱をどうにか出来ても、その先のことを俺は考えられない。僅かな可能性だけで動くには__情けないことに、自信はなかった。


 ドゥルグレは追い打ちをかけるように言う。


『あの場所はアンデッドの巣窟。並大抵の人間じゃあ息をするのもやっとだろう。たかだか契約印を4つ持っただけでは立っているのもやっとだろう。アンデッドに殺される可能性だってある。


 クソ女は分かっているだろうがな』




『だから___"今の"君では無理だ』


 ゼグスの言葉に、一筋の光を見つけた。
 セオドアは涙を流しながら、その光を掴んだ。


 「……………今の?」


『そうだ。_____セオドア、あと二つの契約印を手に入れろ』


 「___!」


 契約印、という言葉に背筋が伸びる。
 ゼグスは付け足すように言う。


『君自身がとる必要は無い。アミィールでもいいし、子供達でもいい。全員で…………契約印を手に入れるんだ。

 力を手に入れるだけではない。"妖精神や精霊を味方につける"んだ。


 そうすれば、アルティアを全員で説得できる。"セオドアは強い"と言える。

 それに、ワールドエンドに居る死神も、闇の精霊もお前を歓迎するだろう。


 しかし、知っての通り___妖精神も精霊も神だ。簡単に人間に契約を与えるとは思えない。

 お前の武器を活かすんだ』



 「……………俺の、武器…………」



 俺は自分の掌を見る。水色の契約印が張り付いている。……俺の武器って、なんだろう。


 「ぱぱ!」


 「パパー!」



 「………!」
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