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第28章 不安要素と新たなる決意

主人公の息子は決める

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 セオドアはそこまで考えて、泣きじゃくるアミィールを抱きしめた。


 「アミィ、泣かないで。セラフィールが起きちゃう。………アドラオテルも見てるよ。

 アミィは何も悪くない。自分を責めないで」


 「ッ、ああ………!」



 アミィールはセオドアの胸の中で泣いた。セオドアも若干目元に涙が滲んでいる。それを見て、アドラオテルはセラフィールの近くまで来て言った。



 「セラ、起きろよ。なあ、お前が寝たらパパもママも泣くんだぞ、お前が寝たら俺だって暇なんだぞ…………起きてよ」


 「ッ………アド………」


 アドラオテルはそう言いながらもぎゅ、とセラフィールの小さな手を握った。口を尖らせながら寝ているセラフィールをぐりぐりと弄る。


 そして、それをしながらアドラオテルは両親に聞いた。


 「………………だいしょう、ってなに」


 「___ッ」


 「パパ、ママ、………だいしょう、って何?かぜ?おねつ?げり?

 ねえ、………俺たちのからだ、おかしいの?」


 「……それは………」



 アミィールは言い淀む。
 たった2歳、けれども、2歳なのだ。早いかもしれないけれど、この子達は『普通』の子供ではない。成長が早いんだ。………まるで、生き急いでいるようにも見える。


 そう思うと、悲しくて、辛くて………涙が出た。アミィール様も沢山涙を零している。鼻先が赤い。


 アドラオテルはそれを見て、『そっか』と言った。


 「いまの、なし。俺、なにもしりたくない。きかない。

 でも、これだけは教えてよ、………セラは俺に『おはよう』って、言ってくれるんでしょ?」


 「………ッ、アド!」


 「わっ」


 セオドアは聞いていられなくて、アミィールの居る腕の中にアドラオテルも収めた。


 ____この子達を守る方法を、探さなくては。


 ____この愛おしい御方が泣かないように、何かしなければ。


 どうなるかわからないなんて、俺は絶対認めない。認めることなんてできない。



 「____パパが、どうにかする、どうにかするから…………」


 「パパ……………」



 アドラオテルの顔を、父親の涙が濡らす。アドラオテルはそれを見ながら、思った。



 ____パパは泣き虫だ。ママも泣き虫だ。

 だから、俺は笑っていなきゃいけない。
 セラもそうだ。今は寝ているけれど、俺達はずっと笑顔でいなきゃ、この人達を悲しませてしまう。


 楽しいことを沢山しよう。

 嬉しいことを沢山しよう。


 苦しいことはしない。

 悲しいことはしない。


 この身体の痛みを引き摺って、笑ってやる。


 だから____泣かないでよ、パパ、ママ。



 アドラオテルは、父親と母親に身を委ねた。

 アドラオテル・リヴ・レドルド・サクリファイス。
 将来、彼が『ユートピアで1番自由な男』と呼ばれることを、誰も知らない。





 *  *  *





 「____ん」



 セラフィールは起きた。
 ここは………パパの部屋?
 なんで、わたくし、ここで寝てるの?



 そんなことを思っていると、近くに小さな手があった。…………弟の手だとすぐにわかった。だって、目の前で寝てるし。それだけじゃない。ベッドの両端には両親が驚いた顔をしていた。


 「セラ!」


 「セラ!」



 「ま、ま。ぱ、ぱ………?」



 「ッ、痛いところはございませんか?苦しいところは?」


 「ううん、ないよ」


 「ッ、セラ………」


 「わっ」


 パパがわたくしを抱き締めてきた。
 じんわりと温かい、いい匂い。ママも抱きしめてくれる。目が赤い。泣いていたのかしら?


 「ぱぱ、まま、痛い痛い?」


 「ッ、………セラ、優しいね。ままとぱぱは大丈夫だよ」


 「そっかあ。よかった………」



 そう答えていたら、眠くなってきた。
 うとうとすると、2人が離れてくれた。

 もう少しだけ、寝ちゃお。アドも居るし、お昼寝……………




 そこまで考えて、セラフィールは目を閉じた。

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