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第26章 ドキドキ?ハラハラ?家族旅行!
悲しい事故
しおりを挟むそんなこんなで一週間はあっという間に経った。変装して街中を家族で歩いたり、フラン様ひダーインスレイヴ様を差し出してイチャイチャさせて見せたり、ゼグスに子供たちを任せて夫婦の甘い時間を過ごしたり………初めての一週間休みは毎日が楽しかった。
となると、こうなるわけで。
「帰らない~!」
「まだいる~!」
「………………」
「………………」
案の定子供達は絶賛駄々こね中である。
うん、予想はできていた。楽しかったもんな。俺も帰りたくない気持ちがあるよ。…………とはいえ、これ以上サクリファイス大帝国を空ける訳には行かない。
「アド、セラ、帰らないとなりません。ゼグス様もシヴァ様もお困りになりますわ」
『私は困らないよ?』
『俺はとても困るがな』
おっとりと話すゼグスとアミィール様にボコボコにされ顔面を腫らしているシヴァ。これは擁護できない。俺は未だに許していないのだ。
「ほらー!ゼグスじーじ、いいっていった!」
「えるふのびじんとあそぶー!」
子供達はキャンキャンと犬のように吠えている。ゼグスもゼグスである。断ってくれれば連れて帰れるのに、賢いセラフィールはその言葉を聞いて意地でも帰らないと首を振っている。
アミィール様はじろり、とゼグスを見る。
「ゼグス様、どうか子供達の為にも強く否定してくださいまし」
『ふむ、そうだなあ。そろそろ帰らせないとラフェエルが怒りそうだし………そうだ、セラ、私のプレゼントで手を引いてくれないかい?』
「プレゼント?」
「____!」
嫌な予感。凄く、すごく嫌な予感がする。ゼグスは首を傾げる愛娘を抱き締めている。隣に立つアミィール様も首を傾げている。
____セラフィールを助けられるのは俺しかいない!
そう結論づいたセオドアは走る。それはもう物凄い勢いで走りセラフィールを手に取った時____
「んんっ!?」
『…………!?』
いつもの絶望的な奇跡が起きてしまった。…………俺は、アミィール様の御先祖様とキスをしていたのだ。勿論例のごとく紫色の魔法陣が生まれて____腕に、契約印が刻まれた。
『………………』
「……………」
「せ、セオ様…………?」
アミィールは戸惑いながら愛おしい御方の名前を呼ぶ。2人はとても顔が青い。ゼグスはぽつり、小さな声で言う。
『なんというか…………ごめん』
「…………こちらこそ、申し訳ございません」
「……………」
「………………」
「…………………」
「きゃー!イケメン×美男子のキスよー!」
沈黙の空間の中、フランただ1人が____鼻血を流し、興奮して声を上げていたのだった。
* * *
「ん、ふ……………」
「は、………アミィ………っん」
サクリファイス大帝国に帰ってきたセオドアとアミィールは子供たちを皇帝夫婦に預けて深く長くキスをしていた。
先程のキスの上書きだ。
完全な事故とはいえ、嫌なものは嫌だ。
好きな人以外とキスをした罪悪感があったセオドアの唇を、アミィールが無理やり奪ったのだ。
「っ、セオ、…………もう他の人とのキス、しちゃダメ、ですよ?」
「………セラフィールがキスされるのは嫌だったんだ」
「わたくしだってセオがわたくし以外とキスするのは、嫌です」
そう言って、セオドアの顔を撫でるアミィールは瞳を潤ませ、荒い息遣いだ。
旅行中も沢山キスをしたけれど、やっぱり我が家がいちばん落ち着く。アミィール様の嫉妬が愛おしい。可愛すぎる。
____場所がどこでも、何時でも。
____やっぱり落ち着くのはこの御方の隣で、この御方の唇を味わうのが落ち着くのだ。
とはいえ……………こうして、妖精神や精霊達の力を得られるのは、ひいてはアミィール様や子供達を守るのに必要不可欠な気もしている。
俺はどうすればいいんだろう……………。
いや、今は考えるのをよそう。
今はこの人に____触れていたい。
「アミィ、…………愛している」
「わたくしもです___セオ」
2人は再び唇を重ねたのだった。
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