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第26章 ドキドキ?ハラハラ?家族旅行!
龍神の血筋は『人間』を目指す
しおりを挟む「何?アイスバーンに共に行きたいだと?」
そう聞き返してきたのはこの国、サクリファイス大帝国の皇帝であり俺の義父であるラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイス様だ。俺達は現在共に執務をしている。その休憩時間に話を切り出してみたのだ。
セオドアはこくり、と大きく頷いた。
「はい、アミィール様の仕事のお手伝いをできれば、と」
「…………本心を述べてみろ」
「う…………」
………最近、俺の言葉の裏をみんな読もうとしている気がする。そんなに裏があるように思われているのか?俺…………とはいえ、本心がない訳ではなく。
「……………家族旅行がしたいです」
セオドアはぽつり、とそう言うとラフェエルははあ、と溜息をついた。
「セオ、最初からなぜそう言わない?
皇族として言いたいことははっきり言わねばならないぞ」
「う、…………は、はい」
「まあ、いい。許可しよう。…………これは執務ではないからな」
「え?」
ラフェエル皇帝様の言葉に思わず首をかしげる。執務ではない?どういうことだ?
そんなことを考え首を傾げるセオドアに、ラフェエルは言葉を紡ぐ。
「___時に、お前は龍神の寿命がどれだけあるか、知っているか?」
「え………?そ、それは………」
唐突な質問。頭がこんがらがっているセオドアの答えなど聞かずに、ラフェエルは言う
「『呪い』の影響もあるが____1万年だ」
「いっ…………!?」
思わず言葉を失う。
1万年!?そんなに長寿なのか!?
しかも呪いがあるから、っていう言い方は呪いがなければそれ以上って事だろう!?知らないぞそんなこと!?
ダラダラと汗を流すセオドアにラフェエルはふ、と笑って言葉を重ねる。
「そんなに生きて何になる、と思わないか?…………私はな、アルと共に死にたい。アミィにもその長い年月を生きて欲しくない。愛するセオドアという男が死んだ後、会いたいと願い、縁の紐に契りを交し確証のない来世を待つ………それを幸せだとは、どうしても思えないのだ。
だから、アイスバーンに行くのは___その寿命を、常人まで減らすためだ」
「____ッ」
新たな真実に、口を噤む。
寿命を減らす為に、とはっきり言ったのだ。そんなのおかしい、と思うけれどラフェエル皇帝様が言いたいこともわかる。出来ることであれば自分が先に死ぬよりも、アミィール様を看取って………いや、やっぱりどっちも嫌だ、共に死にたい。けど___寿命が長い上に龍神は自ら致命傷を負えるほど脆くないとアルティア皇妃様は言っていた。
複雑な気持ちが心を覆う。
これはどう反応すればいいのか、わからないんだ。それでも、言葉を絞り出す。
「____アイスバーンで、何をするんですか」
「アイスバーンに居る星の妖精神・ゼグスに魔力を渡すだけだ。ゼグスは元人間、そして10万年も生きている故に消耗が激しい。だから命を削り、魔力を渡す。
アルはそれで寿命を100歳まで下げた。……次はアミィの番なのだ。そして、アミィの血を受け継ぐお前たちの子供にもさせていく、その子供の子供たちにもさせて、………というサイクルだ。
龍神の血をもてど、人間として在るためにはそれしか方法がない」
「……………ッ」
セオドアは唇を噛んだ。
血が滲む。悔しい。悔しいんだ。
アミィール様やアルティア皇妃様、セラフィールやアドラオテルは龍神の血を持つばかりに、普通に死ぬことすらままならない。
龍神というのはどこまでも子孫たちを苦しめる。………そんなの、悲しすぎるじゃないか。自ら人間になる為にどれだけのことをしなければならないんだ。
「…………セオ、口から血が滴っている」
「あ…………」
ラフェエルの言葉に、セオドアは我に返る。唇から鉄の味がする。大嫌いな味だ。いますぐ、アミィール様の甘い蜜を舐めたい。…………なんて、俺は本当にアミィール様ばかりだな。
仮に『呪い』を解いても、それが幸せだとは限らない。それを理解した上で、それに対処する方法を考えなければならないと実感した。
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