【完結】異世界転生でギャルゲーの主人公になったけど攻略対象外キャラにここまで熱烈に溺愛されるなんて聞いてない!

Ask

文字の大きさ
上 下
369 / 469
第25章 成長する子供達と主人公

これは最後じゃない

しおりを挟む
 


 そんな楽しい思いで過ごしたからか、時間が経つのは早くて。


 「兄上、今度はどこに行くんですか?」


 「サクリファイス大帝国を見て回ろうと思っている。せっかくの都会だからな、楽しまなくては。

 …………だから」


 セフィアはそこまで言ってちら、とサーシャとアミィールを見る。正確には___腕の中の子供達を。


 「うぎぎ…………!」


 「ふぐぐ…………!」


 「ひっく…………」



 アドラオテルとセフィロトはお互いの服を引っ張り離れないようにし、セラフィールは既に泣いて同じように服を引っ張っている。………これをかれこれ1時間やっているのだ。よほど楽しかったらしく、3人は仲良くなり、泊まっているあいだはずっとくっついていた。


 けれど、別れというのは来るもの。何度も言い聞かせたのにこうして離れまいとしているのだ。いじらしいけれど、兄上達にもスケジュールがある。


 セオドアはそこまで考えて、アミィールの腕の中にいるアドラオテルとセラフィールの頭を優しく撫でた。



 「2人とも、離れないとダメだよ、困ってるよ」


 「やーや!」


 「やーや!」 


 2人は激しく首を振る。セフィアも同じようにセフィロトを諭す。

 「お前もだ、セフィロト」


 「ふぐぅ、ぎゃぁあっ!」


 セフィロトは大声で泣き始めた。
 そりゃあ、離れさせたくないさ。俺だって泣きたくなる。仲良い3人を引き剥がさないとならないのは心苦しい。


 自然と自分も涙目になるセオドアを見て、アミィールは諭すように3人に言う。



 「御三方、離れてくださいまし。…………わたくし達は家族です。会いたい時に会えるのです。

 アド、セラ、なので困らせてはなりません。また会えるのですから」



 「そうですよ、アド様、セラ様」


 次はサーシャが口を開いた。優しく泣いているセフィロトのアドラオテルの服を掴む手を解きながら、子守唄を歌うように言う。


 「セフィ、また遊びに来ましょう。だから、泣かないでくださいませ」


 「っ、ぐ………ひぐっ」



 …………母親というのは強いな。子供達が母親の言葉を聞いて悲しそうにしながらも言うことを聞いている。父親というのは、力ばっかり男でやっぱり母親には叶わないのかもしれない。


 セオドアは涙を滲ませながらも感動し、その様子を見守っている。兄のセフィアはそれを優しく見てから、セフィロトを撫でた。


 「いい子だ、セフィロト。…………じゃあな、セオ、アミィール様。元気でやれよ」


 「ええ。まだ遊びに来てくださいまし」


 「………はい、兄上も」



 こうして、兄上達を乗せた馬車は動き出す。セフィロトはずっと馬車から顔を出し、子供達は馬車が見えなくなるまでそれを見送っていた。




 *  *  *



 「ひぐっ、えぐ…………」


 「せふぃ、ない、ぶう」


 「………………」


 「………………」



 夜、セオドアの自室にて、セラフィールはグズグズと未だに泣いて、アドラオテルは未だに頬を膨らませて怒っていた。セフィロトがよほど好きだったのか、ずっとこの調子だ。アドラオテルに至っては俺が『セフィロトを帰らせた』なんて思っているのか、俺が触れようとすると激しく怒った。

 けれど、さっきはアミィール様に任せてしまった。だからこそ次は俺が諭す番だ。


 「ぱぱ!やー!」


 「っう………?」


 セオドアは泣いているセラフィールと暴れるアドラオテルを抱き寄せて優しく包み込んだ。二人の顔の間に自分の顔を挟んで、静かに言う。


 「楽しかったね、セフィくんと仲良くなったの、セラもアドも凄いよ。最初は戸惑っていたけれど、仲良くできたじゃないか。

 次は俺たちから会いに行こう。会いに行って、次は長く遊ぼうね。できるいい子はいないかな?」


 「……………」


 「……………」



 アドラオテルとセラフィールは顔を合わせた。しばらく見つめあってからお互いの涙を小さな指で掬って、大きく頷いた。そして、父親を見て大声で言った。


 「「できゆ!」」



 「!…………ふふっ、ここにいたね、いい子達が」



 セオドアは大声に驚いたけれど、すぐに柔らかい笑みを浮かべて、抱き締めた。


 可愛い可愛い子供達の成長は、俺のことも成長させてくれる。____こんなにも、幸せなことなんだ。


 セオドアは2人を抱きしめながら、しみじみとそれを感じていた。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

捕まり癒やされし異世界

波間柏
恋愛
飲んでものまれるな。 飲まれて異世界に飛んでしまい手遅れだが、そう固く決意した大学生 野々村 未来の異世界生活。 異世界から来た者は何か能力をもつはずが、彼女は何もなかった。ただ、とある声を聞き閃いた。 「これ、売れる」と。 自分の中では砂糖多めなお話です。

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

処理中です...