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第25章 成長する子供達と主人公

主人公娘と主人公兄息子

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 そんなことをしていると、コンコン、とノック音がした。部屋の持ち主であるセオドアは『どうぞ』と反射的に答える。


 「失礼します、セオ様、お兄様、ただいま戻りましたわ………って、どうなさったのですか?」


 「アミィ!」


 部屋に入ってきたのはアミィール様とサーシャだった。セオドアはセフィロトを抱き締めながら駆け寄る。2人はお茶を飲みながらお話してくると退席していたのだ。


 「セオ様、いいですね。セフィロト様をわたくしも抱きたいです」


 「ええ、抱いてくださいませ」


 サーシャが普通に話しているのを見ると、上手く仲良くなれたようで嬉しくなる。さすがアミィール様である。アミィール様は人の心を優しく開いてくれる。俺なんてアミィール様の前で心がガバガバだ。


 そんな馬鹿みたいなことを考えていると、セフィロトの様子がおかしい事に気づく。顔を赤らめて、何かを見ている。何が…………って。


 セフィロトの視線の先には____俺の娘のセラフィールがいた。目をぱちぱちして首を傾げている。


 もしやセフィロト…………俺の娘を!?
 いやだ、いやだ。いくら顔が整っていて兄上の息子だとしても!


 「私は認めないぞ!」


 「!?」

 「は?」

 「…………?」


 「ぱぱ?」


 「ハッ」 


 セオドアは我に返る。やばい。心の声が漏れてしまった………いやだって、娘に惚れた男なんて許せるか?その惚れた瞬間に立ち会う父親の気持ちになってくれ………!


 後ろで笑っていたセフィアがアドラオテルを抱いて近づく。


 「セフィ、やめとけ~、セラはまんまセオに似てるだろう?趣味を疑われるぞ」

 「その言い方やめてもらえませんか!?兄上!」


 「ふふっ、セオ様ってば面白いですわ」


 「う、………」



 セオドアはアミィールに笑われて顔を赤らめる。いやだって………まだ1歳にも満たないのに…………


 自分で自分を擁護するセオドアを他所に、セラフィールは首を傾げながらも宙に浮く。そして、セオドアの腕の中にいるセフィロトに近づくと手を取って笑った。

 「はじ、まちて、セラでちゅ」

 「………ッ!」


 「なっ、セラ!」


 セオドアはばっ、とセフィロトを見る。セフィロトの顔が真っ赤になり目がハートになっている。完璧に恋に落ちてるじゃないか…………!


 「あ、あう………」


 「?」


 「セフィロト様、顔が赤いですけど………大丈夫でしょうか?」


 「ふふ、大丈夫ですわ。男の子としては当然のことなので」


 心配するアミィール様にサーシャが言う。いや、言わんとすることはわかる!当然だ!こんな可愛い花なのだから!けど!複雑すぎるんだ…………!


 「それより、座ろうぜ。アミィール様もサーシャもこちらに」


 「何しきってるんですか、ここは私の部屋です!」



 「2日は俺達の部屋だろう?」

 「ダメです!客間に行ってください!」


 さも当然のように話している兄弟の絡みを見ながら、双子達は意思疎通で話す。


『あの男、すっごく態度悪いんだよ、お前も触るな』

『何言ってるのよ、身内だよ?家族なんだから話すでしょう』

『けっ、俺は嫌だね』


『もう、少しくらい大人になりなさいよ』

『俺はまだ赤ちゃんだばぶ~』


『こういうときばっかり__「あぶ!」?』


 そんな意思疎通をしていると、セフィロトがセラフィールに近づこうとしてくる。すごくかっこいいんだけれど、なぜわたくしを見るのかしら?


『そりゃ、すきだからだろ』


『あったばかりなのに?』

『時間なんて関係ないんだよ』 

『テキトーばっかり…………』


 セラフィールはそう呆れて、ふわふわと浮きながらセフィロトと遊んでいた。セフィロトはずっとセラフィールに付き纏っていたのだった。









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