上 下
358 / 469
第24章 新・自分の家族

猫型ロボットもびっくり!?

しおりを挟む
 



 アルティアはそう言ってその紙を浮遊魔法で浮かべた。そして、手を翳して呟くように言う。



 「秘術___物体模倣オジェクト・トレース


 「………!」


 「うおー!」

 「きゃー!」


 「な、………っ!」



 アルティアがそう言うと、紙が黒く光出し、同じような紙が沢山生まれ____部屋一帯を紙の海にした。それだけに留まらずぱちん、と指を鳴らすとそれが折られていく。机に集まって沢山の山ができた。


 呆然とするセオドアに声をかける。


 「ほら、早くお菓子を持つわよ」



 アルティア皇妃様はさっさと黒渦を出した。そして、指を動かして包装したお菓子に紙を貼り付けて黒渦に放り込む。あっという間に山のようなお菓子、そして肖像画全てが無くなった。


 アルティアはそれを終えてからくるり、レイを見る。



 「ねえ、そこのレイくん」

 「は、………なんでしょう?」


 「ラフェー………皇帝に少しばかり遊んでくる、って言っといて。なんか言われたら『アルティアが楽しい事をしているから黙ってろ』つっといて」


 「な、それは…………」



 アルティアはふい、と視線を外して子供達を抱き上げる。そしてセオドアに言う。



 「ほら、とっとと行くわよ」


 「え、ど、どこに………!」




 そう言って窓が勝手に開いた。そして____窓を覆うように現れた、いつぞや見た大きな、聖の魔力を込めた鳥_アルティア皇妃が作り出したという幻獣_・ヴァルの姿が。アルティアは妖しく黄金の瞳を光らせた。


 「決まってるでしょう_____孫自慢をしにいくのよ」




 *  *  *




 「パーパー!」


 「ばーばー!」


 ………子供達がとてもはしゃいでいる。


 「おりゃあああ!」



 アルティア皇妃様が極悪面をして吠えている。


 そして、俺は_____


 「な____これは、どういう状況ですか!?」


 俺は、幻獣ヴァルの羽毛にぶら下がっていた。………アルティア皇妃様に連れられて、俺と子供達は今空を飛んでいる。そして、アルティア皇妃様は____いつものように空からお菓子を投げている。


 しかしここは庭園じゃない。____サクリファイス大帝国の上空なのだ。


 つまり。


 「なんでっ…………お菓子を投げるのですかぁぁぁぁ!」


 セオドアは半泣き状態で叫んだ。アルティアはそれを無視してぽいぽいと浮遊魔法のかかったお菓子を忙しなく投げている。



 「これが一番手っ取り早いのよ~安心してよ、家の中に入っていくか、家の前に置かれるかどっちかだから☆」


 「滅茶苦茶過ぎます!」



 「いいじゃない、ねえ、アド、セラ?」

 「あうー!」

 「ばーばー!」 


 アドラオテルとセラフィールは満面の笑みで頷いている。滅茶苦茶過ぎる、……なにより今いるところが高すぎて声すら失う。


 「…………ッ」



 「高いところ苦手?高所恐怖症?………どっちでもいいけどさ、下を見てみなさいよ」


 「こんな高いところの下なんて___「なんだこれ!うめえ!」………?」



 下から、声が聞こえた。怖い心を忘れて、下を見た。国民たちが俺のお菓子を手に取って食べている。俺の絵も広げている。



 「まあ!素敵!この子達が先日生まれたアミィール様とセオドア様の御子かしら?」



 「そうだろう!見目麗しいな!」


 「当然よ!あの美貌を引き継ぐのですから!」


 「それもそうだが、このお菓子美味しいな!」


 「わーい、あまーい!」


 「おいしいねー!」



 ………………沢山の国民たちの声。

 それを聞いて____泣きたくなった。
 怖いよりも、理不尽よりも。

 喜んでくれていること、子供達の事を話してくれていること。それがとても嬉しい。


 俺はこの声を聞けないと諦めていたけれど、聞けたんだ。この無茶苦茶な義母のお陰で。



 「あら~パパが泣いてまちゅよ~セラちゃん、アドくん、慰めてらっしゃい」



 「パーパー!」


 「よちよち」



 「……………ッ、ありがとう、セラ、アド。

 そして…………アルティア皇妃様」


 「そこはママって呼ぶところでしょ。………まあいいや。

 次々行くよー!」



 俺達は、空を飛ぶ。
 夜まで俺達は国中にお菓子を投げていた。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました

群青みどり
恋愛
 国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。  どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。  そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた! 「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」  こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!  このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。  婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎ 「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」  麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる── ※タイトル変更しました

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

就活婚活に大敗した私が溺愛される話

Ruhuna
恋愛
学生時代の就活、婚活に大敗してしまったメリッサ・ウィーラン そんな彼女を待っていたのは年上夫からの超溺愛だった *ゆるふわ設定です *誤字脱字あるかと思います。ご了承ください。

処理中です...