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第24章 新・自分の家族
子供達自慢兼ひな祭り!
しおりを挟む「……………ふう、試作品完成だな」
セオドアは額の汗を拭いながら息を吐き出した。目の前には____貴重なセイレーン皇国産の餅米をふんだんに使った菱餅、ひなあられ、桜餅………『ひな祭り』で食べられるお菓子達。
____餅がこの世界にあって本当によかった。
ギャルゲー『理想郷の宝石』は中世ヨーロッパ風のゲームだから、心配だった。けれども、セイレーン皇国では主食が米らしく、日本のような風習があることを文献で知ったのだ。さすが日本産のゲームである。
それはともかく。ただの子供自慢というのは少し……いや、かなり恥ずかしいのは自覚している。だから大義名分が欲しかったのだ。で、今は日本でいえば3月………冬の月の60日だ。ならば日本の伝統である『ひな祭り』のようなお菓子を添えればプレゼントにもなると考えついたのだ。
我ながらナイスだとおもう。これならば国民達も喜ん___って!
「うまいな、この菓子、なあ、アドラオテル様、セラフィール様」
「はむはむ」
「ガツガツ」
「レイ、食べるな!そしてアドとセラはまだ早いぞ!」
考えに耽っていたら、アミィール様が転移魔法でシースクウェアに行かなければならなくて俺が見ることになった子供達が菱餅を、そして執事のレイがひなあられを食べていた。
子供達は最近歯が生え、なんでも口に入れる。仕方ないと思えるけど、レイは執事である。いくら自室のキッチンとはいえ許される行為ではない。
「レイ!食べてないで子供達を止めろ!喉をつまらせたらどうするんだ!」
「わるい、手が止まらない。この甘さがなんとも…………」
「お前は執事だろう!?」
「その前にお前の友だ、案ずるな、ほかの者が来たらポーカーフェイスを貫く」
そう言って凛々しい顔をするレイ。口元にひなあられのカスがついているぞおい。
憎らしげにレイを睨むと、レイはやっと子供達から菱餅を取り上げる。子供達は『れー!』とレイの名前を呼んでぷっくりと頬を膨らませている。可愛いけど菱餅はヨダレだらけだ。作り直し確定。あれは俺が食べよう…………
そんなことを考えるセオドアは再び手を動かす。桜餅を作る時の手間が心地いい。孤児院で配る以外でお菓子を作るのは久しぶりだし、新しい食材に心が踊っているのだ。餅もあんこも高価すぎて滅多に買えないから、なんて貧乏臭いことを考えている。皇族なのだからお金はあるとはいえ、俺のへそくりは殆ど使ってしまった。
けれど、可愛い子供達の自慢の為、また国民達の笑顔のために頑張るのは楽しい。勿論、愛おしいアミィール様の分も残している。とはいえ、このお菓子たちは生物だ。早く配らねば腐ってしまう。
けれどまだどの肖像画を渡すか決まってないのだ。今日中に決めたいが……我ながら力作ばかりで決められないし、アミィール様も『どれも素敵だから決められない』と困った顔をしていた。
こういう時は誰かに意見を聞きたいな…………「せーおーくーん!」………!
「あっ」
「あぶ?」
「うう?」
そう思っている時、自室の部屋の扉が開け放された。ひなあられを食べていたレイはすぐさま定位置につく。子供達は首を傾げたが、すぐ誰が来たのかわかって『きゃー』と叫びながら浮いて近寄った。
こんな滅茶苦茶な現れ方をするのは1人しか居ない。見ると___黒髪の長髪、黄金色の瞳、アミィール様によく似た顔立ちの皇妃で義母・アルティア=ワールド=サクリファイス様だった。
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