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第24章 新・自分の家族

Tell me 『パパ』!

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 「アド、セラ、君たちは一体なんで皇帝夫婦様たちの部屋から抜け出したんだ。ガロ様とリーブ様を気絶させ、兵士たちにまで手を加えて…………だいたい、朝早くなにを……………」


 「…………」

 「…………」


 服を着たセオドアは顔を真っ赤にしながら、子供たちにこんこんと小言を言う。子供達は座りながら下を向いている。そして、意思疎通をしている。


『…………アド、サイテー。わたくしを置いて1人だけ逃げるなんて、サイテーすぎるわ』

『サイテーなのは俺の気分だよ、なにが悲しくてパパとキスせにゃいかないのか………俺の純情が穢れた………もうお嫁にいけないよ…………』


『男はお嫁にいかないのよ、サイテー』


『サイテーサイテーいうな!』 


 「アド!聞いているのか!」


 「うぐぅ………」


 父親の大声にびく、とする。
 驚いた2人はぷるぷると震えた。


 ___ただ、パパとママに会いたかっただけなのに。

 ___何でこんなに怒られなきゃいけないんだ。

 そう言えない子供達は涙を流す。
 それを見たセオドアはハッ、と我に返って…………子供達をまとめて抱き締めた。そして、さっきとは打って変わって優しい声で言う。



 「怒鳴ってごめんね、2人とも。………でも、心配だったんだ。勝手に出歩いて怪我をしたら、みんな、みんな傷つくんだよ。君たちだって傷つくんだ。

 ____だから、今度からそういうことしちゃ、いけないよ」


 「ぱ、ぱ、……」


 「……………ぱ、ぱ」


 「____!」



 セオドアは、言葉を失って目を見開いた。
 今、アドもパパって言わなかったか!?
 セラフィールは偶に、極たまにパパと呼ぶけれど、アドラオテルは初めてで。
 急いで2人を引き離して見た。


 黄金と緑、紅と黄金の瞳から大粒の涙を流しながら俺を見ている。そして、再び口を開いた。


 「「ぱぱ!」」


 「____ッ、ああ、…………」



 今度は、セオドアが泣いた。
 パパと呼ばれたんだ、俺は。
 こんなに怒って、怒鳴ったのに。

 この子達は____俺をパパと、言ってくれたんだ。


 子供達より泣きじゃくるセオドアを、見ていたアミィールは優しく背を撫でる。そして、子供達を見た。



 「パパ、喜んでますよ。けれど、セラ、アド、勝手に出歩いてはなりませんよ?」


 「………ま、ま」

 「まま、………」


 「ふふ、ママですよ。ママは怒ってるんですから、後でゆっくりわたくしのお話も聞いてくださいね」


 「…………」

 「…………」

   

 父親のように甘くない母親に、涙が引っ込んだ子供達でした。



 *  *  *


 「パパ!」


 「ふふ、なんだいアド」


 初めてパパと呼ばれて数時間、アドラオテルは頻繁に俺を呼んだ。可愛くてにやけてしまう。アドラオテルを優しく抱き上げると、じっ、と俺の首筋を見ている。



 「どうしたんだい?アド」


 「パパ、こえ、なあに?」

 「………!こ、言葉まで喋れるように………!」


 「こえ、なあに?」



 感動しているセオドアをよそに、何度もこえ、といって指さすアドラオテル。これ、って…………?


 セオドアは近くに置いてあったアミィールの鏡を手に取って見た。首筋には___アミィール様がつけて下さった紅い花。アドラオテルはそれを指さして何度も聞く。




 「こえ、なあに?」


 「____ッ、そ、それはだね、えっと、………」


 顔を赤らめ言い吃るセオドア。埒が明かないと思ったのか、アドラオテルは部屋にいるレイに声をかけた。



 「れー、こえ、なあに?」


 「おお、俺の名前まで呼んだが………と、どれどれ…………!

 っ、ぶふぉ!」


 レイはセオドアの首筋を見て思わず吹き出した。セオドアは真っ赤な顔で怒鳴った。


 「笑い事じゃないぞ!レイ!」


 「いやだって、なあ、………アドラオテル様、他になにか気になることはございませんか?」 


 「あね、えと、べと、べたべた、かひかひ、パパ、はぢゃかだた」


 「………………」



 「ぐはあっ!」









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