353 / 469
第24章 新・自分の家族
Tell me 『パパ』!
しおりを挟む「アド、セラ、君たちは一体なんで皇帝夫婦様たちの部屋から抜け出したんだ。ガロ様とリーブ様を気絶させ、兵士たちにまで手を加えて…………だいたい、朝早くなにを……………」
「…………」
「…………」
服を着たセオドアは顔を真っ赤にしながら、子供たちにこんこんと小言を言う。子供達は座りながら下を向いている。そして、意思疎通をしている。
『…………アド、サイテー。わたくしを置いて1人だけ逃げるなんて、サイテーすぎるわ』
『サイテーなのは俺の気分だよ、なにが悲しくてパパとキスせにゃいかないのか………俺の純情が穢れた………もうお嫁にいけないよ…………』
『男はお嫁にいかないのよ、サイテー』
『サイテーサイテーいうな!』
「アド!聞いているのか!」
「うぐぅ………」
父親の大声にびく、とする。
驚いた2人はぷるぷると震えた。
___ただ、パパとママに会いたかっただけなのに。
___何でこんなに怒られなきゃいけないんだ。
そう言えない子供達は涙を流す。
それを見たセオドアはハッ、と我に返って…………子供達をまとめて抱き締めた。そして、さっきとは打って変わって優しい声で言う。
「怒鳴ってごめんね、2人とも。………でも、心配だったんだ。勝手に出歩いて怪我をしたら、みんな、みんな傷つくんだよ。君たちだって傷つくんだ。
____だから、今度からそういうことしちゃ、いけないよ」
「ぱ、ぱ、……」
「……………ぱ、ぱ」
「____!」
セオドアは、言葉を失って目を見開いた。
今、アドもパパって言わなかったか!?
セラフィールは偶に、極たまにパパと呼ぶけれど、アドラオテルは初めてで。
急いで2人を引き離して見た。
黄金と緑、紅と黄金の瞳から大粒の涙を流しながら俺を見ている。そして、再び口を開いた。
「「ぱぱ!」」
「____ッ、ああ、…………」
今度は、セオドアが泣いた。
パパと呼ばれたんだ、俺は。
こんなに怒って、怒鳴ったのに。
この子達は____俺をパパと、言ってくれたんだ。
子供達より泣きじゃくるセオドアを、見ていたアミィールは優しく背を撫でる。そして、子供達を見た。
「パパ、喜んでますよ。けれど、セラ、アド、勝手に出歩いてはなりませんよ?」
「………ま、ま」
「まま、………」
「ふふ、ママですよ。ママは怒ってるんですから、後でゆっくりわたくしのお話も聞いてくださいね」
「…………」
「…………」
父親のように甘くない母親に、涙が引っ込んだ子供達でした。
* * *
「パパ!」
「ふふ、なんだいアド」
初めてパパと呼ばれて数時間、アドラオテルは頻繁に俺を呼んだ。可愛くてにやけてしまう。アドラオテルを優しく抱き上げると、じっ、と俺の首筋を見ている。
「どうしたんだい?アド」
「パパ、こえ、なあに?」
「………!こ、言葉まで喋れるように………!」
「こえ、なあに?」
感動しているセオドアをよそに、何度もこえ、といって指さすアドラオテル。これ、って…………?
セオドアは近くに置いてあったアミィールの鏡を手に取って見た。首筋には___アミィール様がつけて下さった紅い花。アドラオテルはそれを指さして何度も聞く。
「こえ、なあに?」
「____ッ、そ、それはだね、えっと、………」
顔を赤らめ言い吃るセオドア。埒が明かないと思ったのか、アドラオテルは部屋にいるレイに声をかけた。
「れー、こえ、なあに?」
「おお、俺の名前まで呼んだが………と、どれどれ…………!
っ、ぶふぉ!」
レイはセオドアの首筋を見て思わず吹き出した。セオドアは真っ赤な顔で怒鳴った。
「笑い事じゃないぞ!レイ!」
「いやだって、なあ、………アドラオテル様、他になにか気になることはございませんか?」
「あね、えと、べと、べたべた、かひかひ、パパ、はぢゃかだた」
「………………」
「ぐはあっ!」
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
前世では美人が原因で傾国の悪役令嬢と断罪された私、今世では喪女を目指します!
鳥柄ささみ
恋愛
美人になんて、生まれたくなかった……!
前世で絶世の美女として生まれ、その見た目で国王に好かれてしまったのが運の尽き。
正妃に嫌われ、私は国を傾けた悪女とレッテルを貼られて処刑されてしまった。
そして、気づけば違う世界に転生!
けれど、なんとこの世界でも私は絶世の美女として生まれてしまったのだ!
私は前世の経験を生かし、今世こそは目立たず、人目にもつかない喪女になろうと引きこもり生活をして平穏な人生を手に入れようと試みていたのだが、なぜか世界有数の魔法学校で陽キャがいっぱいいるはずのNMA(ノーマ)から招待状が来て……?
前世の教訓から喪女生活を目指していたはずの主人公クラリスが、トラウマを抱えながらも奮闘し、四苦八苦しながら魔法学園で成長する異世界恋愛ファンタジー!
※第15回恋愛大賞にエントリーしてます!
開催中はポチッと投票してもらえると嬉しいです!
よろしくお願いします!!
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる