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第24章 新・自分の家族

※子供達はコミュ力高めです

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 「きゃー、セラちゃんすごーい」 


 「あぶー!」





 ______子供達というのは、少しの時間でも共にすると仲良くなるらしい。


 そんなことをセラフィールを見ながら思う。セラフィールは身体を泥だらけにして、砂場で山を作っている。先程まであんなに怖がっていたのに今では輪の中心で楽しそうに遊んでいる。


 それを見ている俺もほっこりと笑顔になる。


 …………とはいえ、仲が良すぎるのもどうかと思うが。


 セオドアは笑うのをやめて後ろを向く。
 たくさんの子供達が宙に浮いている。青い光を纏って、たのしそうにバタバタと暴れてその中心にいるアドラオテルが空中で足を組んで王様のように見下し得意げになっている。


 子供たちに聞いたら、『アドくんの元まで行く遊び』らしい。とはいえ子供達は5~10歳の年頃、浮遊魔法が上手く使えない年頃なのだ。その子供たちのことを知らないであろうアドラオテルは無理をさせている。それは仕方ないことだ、アドラオテルは産まれてすぐに浮遊魔法を会得して使いこなしているのだから。

 こういう時こそ父親の出番である。



 「浮遊魔法、フライ」


 「わあっ!」


 「つばさー!」



 セオドアがそう呟くと背中に翼が生えた。彼の浮遊魔法は不思議なことに翼が生えるのだ。セオドアは騒ぐ子供たちににこり、笑みを零してアドラオテルの元に向かう。


 「アードー!こんな高いところにみんなを呼んじゃだめだよ、あぶないだろう?」


 「げえ…………フンッ!」


 「あっ、こら!」



 アドラオテルはセオドアが来るなり吐く素振りを見せてからつん、とさらにさらに上昇する。セオドアは追いかける。宙に浮いている子ども達はそんな親子の追いかけっこに目を奪われる。セラフィールただ1人は身体を泥だらけにしながらやれやれ、と呆れる素振りを見せた。



 *  *  *




 「じゃあ、帰るよ、じゃあね、みんな」


 「「「「やーーーだーーー!」」」」


 「ふええっ………!」


 「…………っ!」



 セオドアの言葉に孤児達は口を揃えて『嫌だ』といい、首を振る。そして、双子達も嫌らしくセラフィールは泣いて、アドラオテルはセオドアをぽかすかと小さな手で叩いている。


 日が暮れた頃にはすっかり仲良くなってしまったのだ。別れが惜しくて堪らなくてみんなが泣いたり嫌がったりしているのが俺でもわかる。


 俺もこうして『帰らないで!』と言われることはあるけれど、ここまで激しいのは初めてだ。どう説得すればいいのか分からなくて戸惑う。

 けれども、俺よりも子供慣れしているアルティア皇妃様がにっこり笑って言った。

 「みんな、勘違いしているようだけど、セラちゃんもアドくんもこれからたっくさん遊びに来るんだから!

 アドくんとセラちゃんも、またこの子達に会えるわよ!

 だからこれで最後、みたいなこと言わないの!」


 「っぐ………」

 「むう」

 「ほんと?ほんと?」


 「遊びに来てくれる?」

 「いつ?なんじ?」


 アルティアの言葉に子供達は泣くのをやめ、膨れるアドラオテルを他所にセオドアに詰め寄る。セオドアは『そうだな』と少し考えてから、やっぱり笑った。


 「一週間後、いつもの日のいつもの時間にまた来るよ」


 「やったー!」


 「やったー!」


 「ぶぅ…………」


 キャイキャイとバンザイする子供達とセラフィール。ただ1人アドラオテルは納得していない顔をしている。余程楽しかったのだろう。…………考えてみれば、同じ年頃の子供なんて城内にいないし、当然といえば当然だ。



 セオドアはそんな膨れっ面の可愛いアドラオテルの額にちゅ、と唇を落とした。



 「我慢、しようねアド」

 「…………ハンッ」


 アドラオテルはぷい、と顔を逸らす。
 その紅と黄金色の瞳には___涙が溜まっていた。




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