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第24章 新・自分の家族
自慢したい父親
しおりを挟む「……………………はあ」
群青色の短髪、緑色の瞳のセオドア・リヴ・ライド・サクリファイスは自室にて深い溜息をついている。
彼はギャルゲー『理想郷の宝石』の主人公に転生したが、攻略対象キャラと結婚することなく"軍事国家"サクリファイス大帝国の皇女の手を取り結婚、現在2児の父親として奮闘中である。
そんな幸せ真っ只中な彼には、大きな悩みがあった。
____子供達が産まれて、10ヶ月が経とうとしている。双子達はすくすく育ち、とてつもなく可愛い。娘の方は既に『パパ、ママ』とたどたどしくも呼び、息子は既につかまり立ちをしている。成長速度が常人の子供ではないけれどそれはお愛嬌だ。
そんな可愛い子供を持ったら、全員が思うだろう?
「____子供達の自慢、したい………!」
「……………」
力いっぱいそう言いながら悶えるセオドアを、執事・レイは呆れながら見ていた。
………また変なこと言い始めたな、あいつ。でもこういう時のセオドアは面白いんだよな。何も言わずに聞いててみるか。
傍観することを決めたレイを他所に、セオドアは止まらない。
「もう城の者たちに自慢し尽くしてしまったんだ!もっともっと語りたいのに『仕事があるから』と言われ断られるし、城の者たちは忙しいから長く語れないし……………」
ここだけの話、城の者たちはセオドアから逃げている。子供達自慢が始まると長くなるからだ。最低3時間は聞かされる。
「そもそも!未だに国民に子供達を見せていないんだぞ、次期皇帝間違いなしのアミィール様の子なのに!もうセラフィールもアドラオテルも立派になったし得意の演説を開けばいいじゃないかぁ………」
セオドアよ、子供達のお披露目は子供達が1歳になってからと毎日伝えているのにまだ言うか?
「ぐずっ…………俺の子供達が可哀想すぎる………」
お前が可哀想だよ、頭が。
セオドアはレイにつっこまれると言うことは露知らず、グズグズと泣き始めた。セオドアは父親になった。しかし父親でもセオドアなのだ。泣き虫は治らない。
しかし。
「セオドア、とりあえず泣くのを辞めて向かいのソファを見てみろ」
「う?…………ッ!」
セオドアは泣きながらもレイに言われたとおり向かいのソファを見た。そこには____紅銀の髪がちょん、と伸びた、綺麗な黄金と緑の瞳で自分を見ている愛娘、セラフィール・リヴ・レドルド・サクリファイスの姿があった。父親が泣いているということもあり、じわりと目元に涙が滲んで………って!
セオドアはそこまで考えて慌てて涙を拭う。そして、笑顔でセラフィールの元まで行き抱き上げた。
「セラ、パパは泣いてないよ。ほら、笑顔だろう?お前は何も見てないだろう?
今のは汗なんだ、だから泣いてなんかないからな?」
「ぐずっ」
「可愛いセラが泣いたらパパは本当に泣いちゃうからね~一緒に笑おうね~」
「……………」
このとおり、セオドアは少し成長しているようで、子供達の前で泣くと変な嘘をつくようになった。目から汗が出るって発想は一体なんなんだ?というかセラフィールも父親が泣いているだけで涙目になるって……………
セオドアが必死にセラフィールをあやしているのを見て、呆れるレイだった。
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