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第23章 愛する息子と娘よ
初寝返り?
しおりを挟む「アミィ、おはよう」
『おはようございます………子供達は起きていらっしゃったのですね』
「ああ。…………今日もアドラオテルは寝なかったよ」
『そう、ですか…………まだ難しいのでしょうか』
アミィール様は悲しげに目を伏せる。………きっとまた、自分を責めている。この御方はとても繊細なんだ。
俺はセラフィールも椅子の上に寝かせて、悲しげなアミィール様のとお顔を抱き締めた。こういう時、そばに居るのは俺だと決まっているんだ。
「……………アミィ、アミィのせいじゃないから悲しい顔しちゃだめだよ」
『____ですが』
「大丈夫、……俺がいつか、時間はかかるかもしれないけれど…………なんとかするから」
『………………ありがとうございます、セオ様』
アミィール様はすり、と俺の身体に顔を擦り付けた。信じて貰えてないのは、知っている。でもそれを悲観していない。アミィール様は幼き頃からこれが『普通』なのだから、信じられないんだって知っているから。
だから俺は言い続けるんだ。
信じてもらえるまで、実現するまで。
ずっと____アミィール様と居るために。
セオドアはアミィール様が龍の姿から人間の姿に戻るまで抱きしめ、人間の姿に戻って裸を見ていつものように顔を赤くしたのだった。
* * *
「………………ッ」
「セラ…………頑張ってくださいまし」
寝室にて、セオドアとアミィールは祈るようにしてベッドの中央を見ていた。中央には___ぷるぷると震えながら半分身体を浮かせているセラフィール。重い緊張感が走る中、両親に見守られて____やっと、寝返りを打った。
「………!セオ様!セラが!セラが寝返りを打ちました!」
「ああ!凄いぞセラ!よくやったセラ~!」
両親は寝返りひとつでお互いを抱き締め合って喜ぶ。当のセラフィールははあ、はあ、と息を切らしている。
____6ヶ月でやっとセラフィールが寝返りを打った。それは記念すべき日なのだ。セラフィールは身体を動かすのが苦手な子で、なにかと浮遊魔法に頼りがちだったから1歳までしないのでは?とアミィール様と心配していたのだ。
それが杞憂に終わったことがこんなにも嬉しい。アミィール様も満面の笑みでセラフィールを抱き締めている。目尻に涙さえ滲んでいる。
やはり子供の成長は嬉し___「ハンッ!」……………
もうすっかり聞きなれた鼻で笑う声。セオドアはちら、とベッドの端を見ると____足を組んで悠々と座ってドヤ顔をしているアドラオテル。
この息子は生意気な事に、4ヶ月でさっさと一人で寝返りを成功させたのだ。気づいたらゴロゴロゴロゴロと軽快に転がっているのをアミィール様と見て真顔をした記憶がある。で、偉そうなことに手を使うことなくおすわりをして、短い足までわざわざ組んでいるのだ。
成長を喜ぶ暇もなく成長する男・アドラオテル。____俺の生意気な息子だ。
だがしかし、こんな生意気でも可愛いところがあるのは確かで。この鼻で笑う仕草は様々なレパートリーがあって、今の笑い方は『褒めろ』という意味なのだ。
「アドも凄いな、もう一人で座れるのか」
「…………ふへ」
アドラオテルの頭を撫でてやると破顔する。………ほらもう可愛い。ムカつくのに可愛い。ムカかわなのた、俺の息子は。
「ふふ、セオ様とアドは仲良しですね」
「ああ。男同士だもんな、アド」
「…………ゲェ」
「…………………」
訂正。やっぱり可愛くない息子だ。
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