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第21章 元龍神の末裔の『呪い』

俺の前ではか弱い少女でいて

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 「アミィ………ッ!」


 「セオ様………!」



 起きてすぐ、セオ様に抱きしめられた。
 今回はちゃんと記憶がある。わたくしは___『呪い』によって、暴走したのだ。

『呪い』は普段からわたくしの身体を襲っている。物心ついた頃は痛くて毎日泣いていたけれど、もうすっかり慣れてしまって油断していたのだ。


 _____わたくしのお腹には、セオドア様の子供達がいる。
 その子供達はセオドア様の子供達ではあるけれど、同時にわたくしの子達でもあるのだ。


 わたくしの血を引くのであれば____『呪い』の継承は、当然のことで。10万年前のサクリファイス大帝国の国民達が、星の妖精神・ゼグス様を救う為に行った『呪い』は…………消えることが無い、龍神の子供として生まれたわたくしの宿命で。


 そう思うと___子供達に申し訳なくなって。作り物の笑顔さえ作れなくなって。セオドア様の温かい温もりも相俟って、涙が出てきた。


 わたくしは、セオドア様の子供達を苦しめてしまう存在なのだ。



 「セオ様………ごめんなさい、ごめんなさいッ………わたくしが、龍神の血を、穢れた血を引き継いでしまったばかりに………あなたの子供たちをッ、苦しめてしまって……………わたくしは、母親としても、妻としてもッ………失格「アミィ」……っん」



 セオドア様はわたくしの言葉をいつものように唇で遮った。


 ____この瞬間はいつも慣れない。わたくしが謝ろうとすると、いつだってこうして唇を重ねるのだ。


 ____嗚呼、心優しき愛おしい御方は、わたくしに謝ることさえも許してくれないのですね。


 この不甲斐ない、醜いわたくしを優しく慰めてくれるのですね。そして、はしたなく醜いわたくしは、その甘い唇に甘えて___それを黙って享受してしまうのですね。



 アミィールとセオドアは場所も忘れて、甘く深くキスをする。啄むキスから舌を絡め合う激しいキスをしながら、セオドアはアミィールの唇を貪る。漏れるお互いの甘い吐息も、甘すぎる唾液も交換しあって……………銀の糸を引いて離れた時には、お互いに熱い視線を向けていた。


 「____アミィ、アミィは、何も悪くない。誰も悪くないんだ。

 みんなみんな、浅ましく醜い人間が、お互いをお互い憎みあって……龍神の血筋である貴方やアルティア皇妃様を苦しめている。

 俺は、例え前もってそれを知っていたとしても___貴方を、アミィを愛していただろう。


 だから____謝ることなんて、何も無い」



 「っ、…………ああっ…………」



 アミィール様は沢山の涙を流して、俺に抱き着いた。いつもの優しい包むようなものではない。強い力で、はち切れんばかりに俺にしがみついて声をあげて泣いている。でも、痛いとか嫌だとかはどうしても思えなかった。


 ____アミィール様は、とてもお強い人なのだ。
 心も身体も、とてもお強くて、俺なんか足元にも及ばないくらい悲しい強さを持っている。


 でも。


 俺の前だけでは、その強い心を、身体を___崩していいんだ。
 弱くていいんだ。嫌なら、悲しいなら沢山泣けばいいんだ。


 全部俺が受け止めるから。


 全部全部、強くて弱いこの人の全てを俺が包み込むから。


 _____少しでも貴方の強さを、緩めて差し上げたいんだ。


 年相応に、皇女とか『死神姫』だとか、そんな立場も何もかも必要ない。

 ただのか弱く優しい女性でいいんだ。


 そして。



 そうさせて差し上げるのが____男で、夫で、皇配である俺の、俺だけの役目なんだ。


 だから、沢山泣いて。


 ____俺も一緒に泣くから。



 沢山怒って、感情をぶつけて。


 ____俺も一緒に怒るから。



 甘いだけの関係じゃない。蕩けるだけの関係じゃもう物足りない。苦いところも酸っぱいところも塩っぱいところも、貴方と共有したい。


 貴方は俺と『甘いところを共有したい』と常々言うけれど。


 俺は貴方と全てを共有したいんだ。

 全ての感情を、全ての一面をさらけ出してくれよ、今みたいに。



 俺は、貴方の為ならば_____どんなに辛い現実も生きるから。生きて、戦って、絶対に、貴方を守り抜く。


『呪い』も『代償』も『任務』もそれを引っ括めて貴方だと言うのなら、俺は貴方の手を引いて、どこまでも共に在り続けるから_____


 セオドアは胸の中で泣きわめく、弱く悲しい少女を、強く抱き締め返した。


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