310 / 469
第21章 元龍神の末裔の『呪い』
俺の前ではか弱い少女でいて
しおりを挟む「アミィ………ッ!」
「セオ様………!」
起きてすぐ、セオ様に抱きしめられた。
今回はちゃんと記憶がある。わたくしは___『呪い』によって、暴走したのだ。
『呪い』は普段からわたくしの身体を襲っている。物心ついた頃は痛くて毎日泣いていたけれど、もうすっかり慣れてしまって油断していたのだ。
_____わたくしのお腹には、セオドア様の子供達がいる。
その子供達はセオドア様の子供達ではあるけれど、同時にわたくしの子達でもあるのだ。
わたくしの血を引くのであれば____『呪い』の継承は、当然のことで。10万年前のサクリファイス大帝国の国民達が、星の妖精神・ゼグス様を救う為に行った『呪い』は…………消えることが無い、龍神の子供として生まれたわたくしの宿命で。
そう思うと___子供達に申し訳なくなって。作り物の笑顔さえ作れなくなって。セオドア様の温かい温もりも相俟って、涙が出てきた。
わたくしは、セオドア様の子供達を苦しめてしまう存在なのだ。
「セオ様………ごめんなさい、ごめんなさいッ………わたくしが、龍神の血を、穢れた血を引き継いでしまったばかりに………あなたの子供たちをッ、苦しめてしまって……………わたくしは、母親としても、妻としてもッ………失格「アミィ」……っん」
セオドア様はわたくしの言葉をいつものように唇で遮った。
____この瞬間はいつも慣れない。わたくしが謝ろうとすると、いつだってこうして唇を重ねるのだ。
____嗚呼、心優しき愛おしい御方は、わたくしに謝ることさえも許してくれないのですね。
この不甲斐ない、醜いわたくしを優しく慰めてくれるのですね。そして、はしたなく醜いわたくしは、その甘い唇に甘えて___それを黙って享受してしまうのですね。
アミィールとセオドアは場所も忘れて、甘く深くキスをする。啄むキスから舌を絡め合う激しいキスをしながら、セオドアはアミィールの唇を貪る。漏れるお互いの甘い吐息も、甘すぎる唾液も交換しあって……………銀の糸を引いて離れた時には、お互いに熱い視線を向けていた。
「____アミィ、アミィは、何も悪くない。誰も悪くないんだ。
みんなみんな、浅ましく醜い人間が、お互いをお互い憎みあって……龍神の血筋である貴方やアルティア皇妃様を苦しめている。
俺は、例え前もってそれを知っていたとしても___貴方を、アミィを愛していただろう。
だから____謝ることなんて、何も無い」
「っ、…………ああっ…………」
アミィール様は沢山の涙を流して、俺に抱き着いた。いつもの優しい包むようなものではない。強い力で、はち切れんばかりに俺にしがみついて声をあげて泣いている。でも、痛いとか嫌だとかはどうしても思えなかった。
____アミィール様は、とてもお強い人なのだ。
心も身体も、とてもお強くて、俺なんか足元にも及ばないくらい悲しい強さを持っている。
でも。
俺の前だけでは、その強い心を、身体を___崩していいんだ。
弱くていいんだ。嫌なら、悲しいなら沢山泣けばいいんだ。
全部俺が受け止めるから。
全部全部、強くて弱いこの人の全てを俺が包み込むから。
_____少しでも貴方の強さを、緩めて差し上げたいんだ。
年相応に、皇女とか『死神姫』だとか、そんな立場も何もかも必要ない。
ただのか弱く優しい女性でいいんだ。
そして。
そうさせて差し上げるのが____男で、夫で、皇配である俺の、俺だけの役目なんだ。
だから、沢山泣いて。
____俺も一緒に泣くから。
沢山怒って、感情をぶつけて。
____俺も一緒に怒るから。
甘いだけの関係じゃない。蕩けるだけの関係じゃもう物足りない。苦いところも酸っぱいところも塩っぱいところも、貴方と共有したい。
貴方は俺と『甘いところを共有したい』と常々言うけれど。
俺は貴方と全てを共有したいんだ。
全ての感情を、全ての一面をさらけ出してくれよ、今みたいに。
俺は、貴方の為ならば_____どんなに辛い現実も生きるから。生きて、戦って、絶対に、貴方を守り抜く。
『呪い』も『代償』も『任務』もそれを引っ括めて貴方だと言うのなら、俺は貴方の手を引いて、どこまでも共に在り続けるから_____
セオドアは胸の中で泣きわめく、弱く悲しい少女を、強く抱き締め返した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
71
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる