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第21章 元龍神の末裔の『呪い』
根深き『死の螺旋』
しおりを挟む俺がそう聞くと、ラフェエル皇帝は小さく頷いて、続けた。
「____ゼグスは、他の妖精神、精霊と人間たちをまとめあげ、初代龍神と戦った。しかし、不死の龍神に叶うわけもなく………敗北した。そして、ゼグスは無理やり星の妖精神にされ、罰を与えられた。妖精神や精霊にも罰を与えられたが………それは今は関係ない。
問題は、ゼグスを慕っていた国民達だった」
「…………?」
ラフェエル皇帝は、歩き出す。
俺も後を追う。ラフェエル皇帝の声が静かな通路に響いた。
「____国民達は、ゼグスを助ける為に、自分達の命を使って初代龍神に"呪い"をかけたんだ。
最大禁術を使い、不死の龍神を苦しめる___呪いを。
そして。
アルティアとアミィールはその血を持っている…………ここまで言えば、言いたいことは分かるな?」
「___ッ」
ラフェエル皇帝の寂しそうな言葉に、言葉を詰まらせる。………わかってしまったからだ。10万年前のサクリファイス大帝国の国民達のかけた呪いが___龍神の血を受け継ぐアルティア皇妃様とアミィール様を苦しめているんだと。
…………これは、『死の螺旋』だ。
俺達人間が人殺しをし続け、生まれた龍神。
龍神を苦しめるために命を差し出したサクリファイス大帝国の国民達。
そして。
その血が、アルティア皇妃様とアミィール様を苦しめる。
負のループ、なんて言葉じゃ生ぬるい。
死の螺旋は断ち切れていない。…………2人が居なくなるまで、断ち切れない。
つまり。
俺の思考の先を言ったのは___ラフェエル皇帝様だった。
「つまり___今回の暴走は、アミィールの時のように………新たに産まれてくる子供達に『呪い』が継承された、ということだ」
「ッ、う……………」
涙が、勝手に溢れた。
アルティア皇妃様もアミィール様も、………子供達も、何もしてないじゃないか。
誰を責めればいい?
誰を責めれば楽になる?
龍神が生まれたのは、人間達が争っていたからで。
国民達はきっと命を捧げるくらいの呪いをかけるほど龍神を憎んでて。
______こんな世界だったのか。
ただのギャルゲーの世界だと思っていた。
ただの乙女ゲームの世界だと思っていた。
ハーレムのような学園生活や転生生活だと思っていた。
けれど。
このユートピアの歴史は____どす黒くて、醜くて、目を覆いたくなるほど残酷で。
それに苦しむ一族が___サクリファイス皇族なんだ。そして、その一員が俺なんだ。
こんな真実、悲しすぎるだろう。
なんで、なんでこの家族がこんなに苦しまなければならないんだ。
どうして______!
そう思いながら泣いていると、淡い光を纏った二人の子供が横を通り過ぎた。俺は足を止め、涙を流しながらそれを目で追った。
『ねえ、君の名前なんていうの?』
『……………』
『お願い、私をここからだしてよ』
『……………』
知っている子供。………いや、正確には知らない子供なんだけれど、面影がある。
黒髪の黄金瞳の少女と紅銀髪の紅い瞳の少年。
それが____ラフェエル皇帝と、アルティア皇妃だというのは、一目でわかった。
また、記憶が…………?
「…………セオ?どうした」
「いえ、…………今、小さなアルティア皇妃とラフェエル皇帝が………歩いていたんです」
「…………!………そうか。お前は、治癒血という稀有な力の持ち主………何かが見えてもおかしくない、か。
私たちは___初めて、此処で出会ったんだ。
私は___龍神に殺される第1皇太子として。
アイツは__その龍神の後継者として。
ここで…………出会ったんだ」
『名前!教えてよ!少しは喋ってよ!』
『…………』
「…………そう、なんですね」
今と同じくらい無邪気なアルティア皇妃様。何も喋らないラフェエル皇帝様。
きっと、この2人が出会っていなかったら、契約を交わしていなかったら、……龍神と戦っていなかったら。
きっとその死の螺旋は今以上に酷かったんだろう。
そう、…………思わせたんだ。
「こっちだ、セオ」
「…………はい」
俺は過去の記憶達に背を向けて、ラフェエル皇帝を追った。
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