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第20章 SweetでBitterな日常
甘くて美味しい勝負
しおりを挟む「…………レイ様がエンダーを好きなのですか…………」
「そうなんだよ。私はびっくりした」
夜、二人の時間、アミィールはセオドアが選んでくれたカフェイン少なめの紅茶を飲みながら呟くように言う。勿論、この情報はレイにもエンダーにも許可を貰って話している。
アミィール様は紅茶を机に置いて、天井を見上げた。
「………わたくしは人の恋愛に疎いですが…………エンダーが特定の誰かを好きになるなんて、信じられませんわ」
「私も、レイが特定の女性が好きなのが信じられないんだ。
とても、不思議な気分だよ」
「ふふ、………似た者同士なのかもしれませんね、あの二人は」
アミィール様はそう言ってくすくすと小さく笑う。その顔は穏やかだ。……アミィール様にとっても、エンダーが大事なのだということが伝わってくる。
俺達は砂糖よりも蜂蜜よりも甘い恋愛の末結ばれたけれど、レイとエンダーはほろ苦い恋愛なんだな。なんというか、大人らしい恋愛で少し憧れる。もし、俺がレイの立場だったら心が折れていただろう。いや、そもそもアミィール様はお強いから戦う前に戦意喪失してしまうか…………
「セオ様、とても楽しそうなお顔をしてますね。また面白いことを考えているのですか?」
「ああ、もし俺がレイの立場で、エンダーと戦うようにアミィール様と戦ったら勝てる気がしないな、と思ったんだ」
「____それはご心配ございませんわ」
「?」
アミィール様は静かにそう言って、俺の腕を優しく抱いてきた。そして、耳元で甘い声で囁いた。
「わたくしは負けたのです。___セオ様と出会って、笑顔を見ただけで、わたくしは貴方に負けて、こうして共に居ることを望んだのですから。
やはり、セオ様はお強いです」
「____ッ」
甘い声、甘い言葉。鼓膜を伝って熱を帯びていくのを感じる。
アミィール様はそう言うけれど、負けたのはどちらかというと俺である。いや、俺は1度も貴方に勝ったことはない。
いつだって貴方のかっこよさの前では無力で、貴方の可愛さにいつも胸をときめかせ、俺は貴方に心の底から服従している。夫と言うより従者の方がしっくりくる。
けど、____悪い気は、全然しないんだ。
アミィール様の魔力はとてつもなく優しく、とてつもなく強力だ。
こんなの、我慢できるわけがない。
「_____アミィ、身体は大丈夫かい?」
セオドアは顔を赤らめながら、物欲しそうにアミィールを見る。アミィールは勝ち誇ったように笑みを浮かべながら言った。
「____ええ。寧ろ、少し勝負をしたいくらいですわ。
セオ様と、甘く激しい………真剣勝負を」
「ッ……………俺も、したい」
「では、寝室に行きましょう。
夜通しで___貴方に勝って見せますわ」
アミィールとセオドアはソファを降りて体を寄せ合いながら寝室へ向かう通路を歩く。
____この日の真剣勝負は、いつも通りアミィールが勝つのだった。負けたセオドアはアミィールに抱き締められながら笑みを浮かべていた。
* * *
エンダーとレイの恋愛は応援している。
それに対して俺は口を出さないと決めた。
けれど。
「~♪」
「…………レイ」
「なんだ?」
「顔、凄く腫れ上がっているぞ、今度は何されたんだ?」
「ああ、モーニングスターを顔面で受けたんだ」
「………………」
_____付き合う前にレイは死ぬのではないか?
そう言って顔面がミイラ男のように包帯グルグル巻きだというのに口元だけで笑うレイを見て思った。
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