【完結】異世界転生でギャルゲーの主人公になったけど攻略対象外キャラにここまで熱烈に溺愛されるなんて聞いてない!

Ask

文字の大きさ
上 下
294 / 469
第20章 SweetでBitterな日常

先の事を考えさせないで

しおりを挟む
 




 「ぐずっ……………」


 「セオ様………………」



 懐妊演説が終わり、自室に戻ってきたセオドアは未だにドレス姿で泣いていた。アミィールの鎧を涙で汚しながら抱き締めている。…………セオドア様はよくお泣きになるけれど、今回は今までよりも長く泣いている気がする…………。


 それはわかる、何故ならセオドア様はいつだって『男』であろうとしているのだから。こんな屈辱耐えられないのだろう。


 とはいえ………ずっと泣いているのを見ると、わたくしだって悲しくなります。


『かなしい?かなしいってなに?』


『パパ、泣いてるよ、いたいの?』



 幼い声達さえも心配している。この子供達もセオドア様のことが好きなのだ。どんな格好をしていても、この子達の父親。


 ____悲しい、というのは『嫌だ』とおもうことですよ、皆様。けれど、大丈夫。わたくしがセオドア様を笑顔にして差し上げます。



 そう子供たちに言い聞かせ、わたくしは少しセオドア様から離れて両手で頬を持ち上げる。


 濡れている長いまつ毛と未だに涙が溜まっている緑の瞳、しゃくりあげている。それでも___女の格好をしたセオドア様は可愛くて、愛らしい。


 「アミィ…………?」


 「セオ様、泣かないでくださいまし。子供達も心配していますし…………わたくしの母親のせいでこんなにも悲しませて申し訳ございません。

 ____けれど、泣いていても、女性の格好をしていても、貴方はとても愛らしいです。


 わたくしの愛おしい御方は、どんな格好でも____素敵なのです」



 「____ッ」



 アミィールはそう言って、優しく唇を重ねた。積極的に舌を絡ませ、涙に濡れた顔を優しく撫でてくれる。


 …………すごく、すごく恥ずかしかったし、これからの事を考えると気が重い。

 けれど、…………アミィール様の男装が見れたのは、嬉しくて。

 俺は乙女男子で、王子様が好きだ。
 この御方は、絵に書いたような素敵な俺の王子様で。


 男とか女とか関係ない、と思わせてくれる。



 愛おしい。


 愛おしい。



 セオドアは震えながらも、アミィールの顔を同じように両手で包んだ。そして、もっと深く、甘いキスを貪る。男女逆転していて、先の事を考えられないくらい頭が働かなくなればいい。


 その為には、この御方が絶対必要なんだ_____



 そう思いながら、セオドアはその場にアミィールを押し倒して、それこそ蕩けそうな頭になるまでアミィールの甘い唇を、唾液を堪能した。






 *  *  *




 「ねえねえ、セオくん、女装大会は懐妊演説をした日がいいと思うんだけどどう思う?」


 「女装大会はもうやらない方向がいいと思います」



 会食の時間、アルティアの言葉にセオドアはむす、としながらそう答えた。もう恩返しはしたんだ。やる必要なんてない。というか絶対やりたくない。無理。


 確固たる決意を持ちながら口を尖らせるが、アルティアと言う女にそんな言葉は通用しない。ノーダメージアルティアはラフェエルに聞く。


 「ねえねえ、ラフェー、やっぱり女装大会はアンタも出てよ」


 「巫山戯るな。国民達が勝手にやればいいだろう」


 「そう言わずにさ~皇族男子は顔だけはいいんだから、これは"貴族の義務"よ」



 「お母様、わたくしたちは貴族ではなく皇族です。それに、貴族の義務などという古い習慣は捨てるべきですわ」



 アミィールは目の前でクルクルと踊るぬいぐるみの頭を撫でながら、冷たい言葉で言う。


 「んもう、つれないわね~あんなに国民が喜んでたのよ?やらないわけにいかないじゃない。

 これをやれば女装したい男達は好きなように女装できるようになるじゃない。

 貴族とか男とか関係なしに自分らしく居ていいんだ、って思わせるのはそんなに悪いこと?」



 「………………」



 アルティア皇妃様はとても滅茶苦茶でトラブルばかりを起こす。けれども、こうしてほかの人達のことを考えられる人で…………悔しいけど、かっこいい人ではあるんだ。だから嫌いになれないんだ。


 そうなったらきっと____世界はもっと素敵になるだろうな。


 セオドアはそう思いながら、パスタを口に含んだのだった。









しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

処理中です...