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第20章 SweetでBitterな日常
『男女逆転演説』 #2
しおりを挟むラフェエル皇帝は颯爽と舞台に向かって歩く。恥ずかしさなどそこにはない。堂々としつつも淑女らしい歩き方をし、とうとう妻であるアルティア皇妃と並んだ。あべこべだというのにとても絵になる美男美女だ。
アルティアはそんなラフェエルの肩に触れ、青い光を纏わせた。それが終わってから、ラフェエルは国民の前で口を開いた。
【「____このような巫山戯た格好で申し訳ない。いつもの我が妃アル………アルティアの悪ふざけだ。格好は気にせず私の言葉を聞け」
「そんなつまんない言い方はよそうぜ?マイスイート。冷たいしゃべり方は淑女には向いてないぜ☆」
「………………」
「ぎゃぁぁぁぁ!」】
ラフェエル皇帝の右目に黒い紋様が出た、と思ったらアルティア皇妃の頭上から黒い雷が生まれ、落ちた。美しい美男子はそこで倒れ、何事も無かったかのようにラフェエル皇帝は再び口を開いた。
【「今日集まってもらったのは他でもない。
_____我が娘、アミィール・リヴ・レドルド・サクリファイスと皇配、セオドア・リヴ・ライド・サクリファイスの間に____子が出来た」】
「「「「!」」」」
ラフェエル皇帝ははっきりとそう言った。
国民達は思わず大声で『サクリファイス皇族万歳!』と叫びそうになる。沢山の政策や要望に答えてくれる皇族が増えることは彼らにとっていいことなのだ。
しかし、黙っているのは____これで終わりな訳では無いからだ。
そう思っている時に……………『それら』が現れた。
空から、白い翼を生やした群青色のウェーブのかかった長髪を紅銀色のリボンでゆるく括り、緑色の瞳に涙を滲ませ顔を赤らめた紅銀の美しいドレスを身に纏った美少女が降りてきた。
その腕には_____皇帝と同じ紅銀色のポニーテール、黄金色の瞳、赤と黒の鎧を纏った美男子が居る。
その様は天使が騎士を守るようであって___国民達は息を飲んだ。
美少女は翼を羽ばたかせながら、ゆっくりと闘技場の中央に降り立った。美男子な騎士はそれと同時に淡い青の光の魔法を美少女にかけた。
美少女はそれを受けてから___今にも泣きそうな顔で口を開いた。
【「わ、わたくし___セオドア・リヴ・ライド・サクリファイスは、この胸にいるアミィール・リヴ・レドルド・サクリファイス様との間に………御子ができました。
これから___我が子供達はこの国を背負うこととなるでしょう。
最初のうちは失敗があるかもしれません。未熟さで国民たちを苦しめるかもしれません。
わたくし達も子供達を育てますが___皆様も温かい目で見守ってくださると幸いでございます」】
美少女は裏声でそう言って、とうとう涙をこぼした。泣く姿も美しく、国民全員に『本当にセオドア様か?』と思わせた。そんな国民たちを他所に、胸の中にいる美男子も口を開く。
【「私達皇族はこのような巫山戯た格好をしている。信じられないだろうが、話は事実だ。………不快に思わせたのは申し訳ない。
けれど、私達皇族は___この子供達と共に国民のみなを支え、このサクリファイス大帝国をさらに豊かにするよう尽力することを約束しよう」】
凛とした声が国民の鼓膜を揺らす。皇帝夫婦とは違う幼く可愛らしい2人に、とうとう国民達は口を開いた。
「サクリファイス大帝国ばんざーい!」
「ご懐妊おめでとうございまーす!」
「この国はもっと素敵な国になるぞ!」
「記者達!ちゃんとこの記念の日に相応しい記事を書け!」
「全員美しすぎですわー!」
地鳴りのような足音と、怒号のような祝福の声。それを聞いていた1人を除くサクリファイス皇族達は___幸せそうに笑っていた。
しかし。
その1人は____既に涙を流していた。
言わずもがな、それはセオドアだった。
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