288 / 469
第20章 SweetでBitterな日常
女装確定事項
しおりを挟む「……………って、納得出来るか!」
セオドアはそう言って自室のソファの上にあるクッションを殴る。
国民の前で?女装だぞ?俺の醜態を晒すんだぞ?女装姿で『子供が出来ました』と言わなければならないという生き地獄だ。
おかしい。
おかしすぎる。
何かとアルティア皇妃様はこういう悪ふざけをする。絶対頭のネジが1本抜けている。そもそも脳みそあるのかあの人?
「……………セオドアがそこまで怒るのも珍しいな」
執事のレイはけたけたと笑う。
セオドアはそれを睨みながら言う。
「笑い事ではないぞ!お前の主人が女装するんだぞ!?恥ずかしくないのか!」
「寧ろ面白そうだ。いいじゃないか。サクリファイス大帝国の国民は喜びそうだな、ヴァリアース大国では考えつかない娯楽だろう」
「俺達の懐妊演説は娯楽じゃない!」
セオドアはそう断言してクッションに顔を埋める。レイはそれをみてやれやれ、と呆れながら言う。
「いいじゃないか。サクリファイス大帝国は大きくて平和な国なんだ、国民を楽しませるのも公務のひとつだろう?
腹をくくれよ、お父さん」
「うう……………」
………国民を楽しませるのは立派な公務だというのは理解出来る。先日行われた『下克上闘技大会』でそれは凄く感じたし素晴らしい考え方だと思った。国民達の楽しげな顔は俺だって忘れられない。もっともっと笑顔にさせたいさ。
けれど。
「………………それを俺達の懐妊演説でやることじゃないじゃないか…………………」
とうとうセオドアは怒りで泣き出す。
……………こいつは喜んでも悲しんでも怒っても泣くんだよなあ……………サクリファイス大帝国に来て少しは逞しくなったと思ったが泣き虫までは治らなかったか…………
こういう時は話題を変えて気持ちを切り替えさせるしかないな。
「しかし、アルティア皇妃様は自由だよな。普通の貴族なら考えつかないぞ。どんな手を使ったかまでは知らないが、冷酷で理不尽で有名なラフェエル皇帝様がそれを受け入れたんだろう?
それって凄いことだと思わないか?」
「アルティア皇妃様は頭がおかしいんだよ……………じゃなければ俺に女装なんてさせない……………」
「そりゃあ、お前、似合ってるからやられるんだろう?自信持てよ」
「女装で自信を持てるか!俺は男だ!」
ギャン、とセオドアは吠える。その大声にレイは耳を塞ぐ。本人はこう言っているがセオドアの女装はクオリティが高い。露出激しいのはさすがに男だとバレるが、ドレスなら女と見間違うくらいには美人である。それに、話ではラフェエル皇帝様も女装をやるという。
身体はともかく、あの顔なら女装しても映えるだろう。そこらの女よりは美しそうだ。
そして、アルティア皇妃もアミィール様も美人であらせられるから男装も似合うだろう。アミィール様などは妊娠前からずっと執務中は男装で、密かに侍女達の間にファンもいるんだ。アルティア皇妃は滅茶苦茶で人外ではあるが国民に大人気な皇妃だ。強く美しく明るい人柄は自然と人を集める。
そんな顔面偏差値の高い皇族が女装と男装をする、と言うんだから国民は勿論俺だってみたい。
だが………………
レイはそこまで考えて、改めてセオドアを見る。
「俺は男なんだぞ…………なんで女装なんか……………父親になるのに…………っぐ」
クッションに顔を押し付けてこう泣いているセオドアに、レイははあ、と溜息をついた。
0
お気に入りに追加
72
あなたにおすすめの小説
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。
氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。
聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。
でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。
「婚約してほしい」
「いえ、責任を取らせるわけには」
守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。
元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。
小説家になろう様にも、投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる