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第19章 父親(仮)、奮闘する

小さな生命達の音色

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 「アミィール様!?」



 エンダーが声をあげる。片手に愛用の武器・モーニングスターを装備している。敵襲?

 いえ、そうであればわたくしが気づかないはずがない。何人も殺してきたわたくしが油断などしない。狙われていたら視線、気配だけでわかる。



 では、なにが_____?



『ママ』


 「_____!」



 脳内に、幼い声が響く。まるでダーインスレイヴが話しかけるように、語り掛けてくる。でもわたくしはダーインスレイヴを手に持ってない。それに、ママ、って……………?


 戸惑っているわたくしをよそに、先程とは違う幼い声が聞こえた。



『ママ、すき』


 「え…………?」



『ママ、あいたい』


『パパ、ママすき』


『ママ、ママ』


 「…………ッ」


 頭が騒がしい。それにママって____?


『ママ、ママ、あなた、ママ』


『パパ、ピアノ、すき』


『ピアノ、えほん、すき』


『あいたい』



『おなかすいた、ごはんたべて』


『あそびたい』



 ____何を言われているか、わからない。わたくしに、話しかけてるの?だれなの?


『ママ、は、ママ、パパ、言ってる』


 ママ、という言葉を何度も聞いて、セオドア様を思い出す。セオドア様はいつも、わたくしのお腹を擦りながら『ママのお腹で頑張って育ってね』と口癖のように言っている。自分のことも、パパ、と言っている。



 それって……………もしかして……………



 アミィールは震えた、か細い声で、言葉を発した。



 「わたくしの…………赤ちゃん達?」



『あかちゃん、あかちゃん、なーにそれ?』


『ぱぱ、あかちゃん、いってたよ』


『パパ、おれ、っていってる、わたし、っていってる』


『けど、ママは、わたくし、だよ、違い、なあに?』


『わかんない、けど、ママのここ、あったかいね』


『ね、あったかい』


『すき、すき、いつも、パパ、ママに、いってる』


『ママも、パパに、いってる』


『なんでだろうね』


『なんでだろうね』



 「…………………………ッ」


 幼い声が明るい声で話しかけてきている。たどたどしい言葉に品位を感じない。なのに、何故か胸が熱くなった。


 熱い胸を抑えて、口を動かしてみた。


 「わたくしが、ママですか?」


『うん』


『うん』


『パパ、ママってよんでる』

『ママ、いつもこころがぐちゃぐちゃ』

『こーひーって、なに?』

『どくって、なに?』


 ______やっと、気づいたわ。

 この声は、頭に響いているのではない。
 お腹から聞こえてくる音なんだ。

 この子達の声なんだ。


 そう思うと___何故か涙が溢れた。




 「…………アミィール様?なぜ、泣いていらっしゃるのですか?」


 「お腹の子供たちが、わたくしに話しかけてきてるの…………これは、普通のことなのですか…………?」


 「………それは………」



 エンダーは黙る。それが、『異常なこと』なのだと言ってるように思えた。

 つまり『普通』じゃないのだ。


 ____わたくしだけに、聞こえる声なんだ。


 そう思うと、嬉しくて、愛おしさが溢れた。


 ____わたくしが、ママでいいの?



『ママがいい』

『ママじゃなきゃやだ』


『いじょうってなに?』


『ふつうってなに?』




 「____ッ、う」


 涙が止まらない。
 何も知らない、けれどもわたくしに話してくるこの子達が愛おしくなって…………セオドア様に抱く感情とは違う温かい気持ちがわたくしを包んだ。


 わたくしは____この子達の、ママなんだ。



 この時、そう強く感じたのです。









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