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第18章 新しい家族と新しい生命

愛しい貴方に似て欲しい

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 「……………双子」



 夢じゃないということを諭すと、アミィール様は自分のお腹をさすりながらぽつり、呟いた。未だに実感はないようだ。実を言うと俺もない。嬉しいけど、……夢を見ている気持ちになる。


 けれど。


 「アミィの中に、私の子が2人も居るんだ。…………ありがとう、アミィ。私達の子供を授かってくれて」



 セオドアはそう言って、アミィールの頬に唇を落とす。アミィールは擽ったそうにしながらそれを受けて、セオドアを見た。


 「こちらこそですわ。____セオ様が、沢山わたくしを愛してくれたからです。

 わたくし___わたくしの中に、セオ様の御子がいるのですね。けれど、なんでこんなにお腹が膨らんでないのでしょう。腹筋のせいなのかしら…………」



 「………………」



 大真面目にそう言うアミィール様に閉口するセオドア。


 ……………………2ヶ月で膨らまないと思うし、腹筋のせいでもないと思うけれど………とセオドアは苦笑いする。アミィール様がほんの少しズレているのは愛嬌だな、なんて思いながら、自分もアミィールのお腹に触れてみる。




 ここに、俺の子供が2人も居るんだ………………


 未だに膨らんでいない、硬いお腹がいつも以上に愛らしく感じる。アミィールはくすくす笑った。


 「セオ様、擽ったいです」


 「ごめん、けど…………嬉しくて、辞められないんだ」



 そう言って破顔し、また泣きそうな御顔をするセオドア様。
 信じられないけれど…………わたくしのお腹に、セオドア様の子供が2人もいるのです。こんなに嬉しいことがございましょうか?


 ____わたくしは、人殺しで。

 ____わたくしの身体は、脆くて。


 _____子供など尊いものを持っていいとは思えない。




 けれど。


 ____セオドア様の子供はちゃんと産みたい。


 きっとセオドア様のように優しくて愛らしくて可愛いのでしょう。

  早く、お会いしたい。


 「____お腹を切れば、会えるでしょうか」


 「………………」




 ぽつり、アミィール様がとんでもないことを言う。RPG風に言うと『アミィール様 は混乱している!▽』である。


 これは、俺が止めるしかないな。 


 セオドアはそう思い、再び優しく諭した。



 「お腹を切ったら子供達は成長できないし、アミィが死んじゃうよ?

 ____だめだ、アミィは俺と生きてくれるんだろう?」


 「…………ッ、そう、ですけれど…………早く、お会いしたいのです。  

 きっと、セオドア様のように可愛くてかっこいい子なのでしょうから」



 アミィール様はそう言って口を尖らせる。俺は自分に似るよりも。

 「____俺は、アミィに似て欲しいな。

 きっとかっこよくて美しいと思う」


 「わたくしに似てはだめです。セオ様に似て欲しいのです」


 「俺もそれは譲れないよ。絶対アミィに似て欲しい。

 男も女もきっとかっこよくて可愛いからね…………ふ」


 「…………ふふっ」



 アミィールとセオドアは顔を合わせて笑う。新しく芽吹いた生命と未だに会っていないのにこんなにも愛らしくて。



 好きな人との間の子なんて、何よりのプレゼントだ。どんな高価な物よりも嬉しい。どんな貴重な物よりも尊い。俺達だけの宝物。



 ____俺は凄く、凄く幸せ者だ。



 ____わたくしは世界で一番幸せなのでしょうね。



 2人は同じことを考えながら、しばらくお腹を撫でて居た。





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