260 / 469
第18章 新しい家族と新しい生命
それは突然だった
しおりを挟むリーファは分かる。けれど…………隣のダンディ感ある男は誰だ………?
セオドア含めオーファン家は突然の事に戸惑う。しかしラフェエルとアミィールは2人に驚くこと無く言葉を紡いだ。
「リーファ様、グランド様、ごきげんよう」
「……………何しに来た?」
グランド?グランドって誰だ?
アミィール様の口から出た男の名前にモヤつく。ああ、俺は重症だ。重度の嫉妬深い男だ。
セオドアは開き直りつつもアミィールを抱き寄せ男を睨む。臨戦態勢はバッチリだ。
けれどもグランドと呼ばれた男はそれに気づくことなく跪いた。
『_____お久しぶりです、契約者様、アミィール様』
「………その呼び方はどうにかならないのか、土の精霊よ」
「土の精霊!?」
思わず大きな声が出た。セオドアは慌てて口を塞ぐも時すでに遅し。響き渡った大声に答えたのはアミィールだった。
「ええ、そうです。この御方は土の精霊・グランド様でございます」
それを聞いたオーファン一家は膝をついた。精霊、妖精神は滅多に姿を現さないが会った時は頭を下げるのが常識とされている。…………まあ、俺は1度もする前にキスをされるのだが。でも、今回は出来たぞ。
ほんの少し得意げになるセオドアを他所に、ラフェエルは口を開く。
「…………何故いる?」
『契約者様がいらっしゃると土が言っていたので。………本当は2年前のアミィール様のお披露目会にも出たかったのだが、風の精霊に捕まっていて、行けなかったんです。
アミィール様、申し訳ございません』
「いいえ、大丈夫ですわ。そのお気持ちだけでありがたいです」
「………………」
アミィール様の気高い、控えめな笑みに安心する。………しかし、こんなにかっこいい美丈夫なんだ、乙女ゲーム『理想郷の王冠』の攻略対象キャラに違いない。気を引き締めねば…………
セオドアは頭を下げるのを止めて、ジッ、と土の精霊・グランドを見る。土の精霊は案の定____アミィール様をまじまじと見ていた。しかも身体を。
「…………ッ」
俺のアミィール様をそんなにまじまじ見るな。俺だけのアミィール様だぞ。そんないやらしい目で見るな。
ムカムカとする心を抑えるのに必死なセオドアを他所に、グランドは『ふむ』と何か考える素振りを見せながら、視線をリーファに移す。
『……………これは何かお祝いをするべきだと思うか?リーファ』
『ですね。とてもめでたいことなので。
アミィール様、おめでとうございます』
森の妖精神・リーファは綺麗なお辞儀をアミィールにした。それを受けたアミィールは首を傾げた。
「?何がですか?わたくしではなく、結婚するのはわたくしのお兄様であるセフィア様です」
『いいや、アミィール様もめでたいだろう。
だから____少し失礼、少年』
「は?____っん!?」
グランドはゆるりと歩きながらセオドアに近寄って、しゃがんで____唇を重ねた。すると、生まれるカーキー色の魔法陣。
これ_____契約!?
状況が理解出来ないまま、魔法陣に描かれた文字が左手の掌に滑り込んできた。泥を触っている気分になる。
「ッ、セオ様!………どけてっ!」
『おっ、と』
アミィール様が蹴りを繰り出す前に、グランドは素早く後ろに飛んだ。アミィール様のお顔には怒りが浮かんでいる。俺はまた訳の分からないまま、アミィール様以外とキスを……………!
セオドアはそれだけで緑色の瞳に涙を浮かべる。突然だし愛おしい人以外に唇を重ねてしまった罪悪感、込み上げてくる不快感に震える。
それを見ていたアミィールの怒りは最骨頂だ。
「グランド様___いくら精霊でも、わたくしは貴方を許しません…………必ず、殺して『これはお祝いだ』………ッ!訳の分からない事を言わないでくださいまし!
それとセオ様にキスする事となんの関係があるのです!?お祝いってなんですか!?」
『アミィール様、もしかして………まだ、お気づきになっていらっしゃらないのですか………?』
「気づくとはなんですか!貴方もわたくしを侮辱するのですか!?」
怒り狂うアミィールの言葉を止めたのは____セオドアの唇にキスをしたグランドだった。
『これはお祝いです__ご懐妊おめでとうございます、アミィール様』
「…………は?」
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!


異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる