249 / 469
第17章 少女漫画風味のデート!?
※あべこべは健在です
しおりを挟む「か、可愛い……………」
セオドアは目をキラキラさせていた。
目の前には____大きなクマのぬいぐるみ。アミィール様が『可愛い雑貨屋がある』と言っていて、それで来たのだ。
俺は乙女男子でぬいぐるみも大好きだ。ふわふわもこもこで首元のリボンが黄色。とても可愛い。
……………アミィール様にプレゼントしたいな。
そう思いちらり、と後ろを振り向くと、アミィール様は向かいの花屋に居た。
「綺麗…………」
わたくしの城にもないたくさんの花弁が連なっている花。淡い青い色で、セオドア様が喜びそうな花だ。これを買ってあげたい…………!
アミィールは向かいの雑貨屋を見る。セオドアとアミィールの目が合った。その2人の手には互いの好きな物が。それを見て顔を合わせて笑った。
____幸せすぎて、どうにかなってしまいそうだ。
_____幸福というのはこういうものなのですね。
なんだかんだ考え方の似ている2人は、それぞれ会計を終わらせ、集まる。最初に動いたのはセオドアだった。
「アミィ、このぬいぐるみを受け取ってくれるかい?」
「もちろんですわ。…………セオ様もわたくしのこのプレゼントを受け取ってくれますか?」
「もちろんだ」
2人はプレゼント交換をして、やっぱり破顔する。____素敵なデート、楽しい。
初めてデートした時はまだ他人で、好きだったけれど…………それでも今の方がすきだ。
こんなに月日を重ねて愛が増す一方であれば、わたくし達2人はいつか溶けてしまいそう。
____セオドア様となら大歓迎だけど。
互いのことを思いながら、2人はおでこをくっつけ、慈しみあった。
* * *
しかし、楽しい時間はあっという間で、もう帰らなくてはならない時間になっていた。
「楽しかったですね、こんなに沢山城下町を歩いたのは初めてですわ」
「………………ああ」
そう空返事をするセオドアの顔は暗い。
____まだ、帰りたくない。
楽しかったさ、凄く。楽しかったからこそ………もっと、もっとこのひとときを過ごしたい。でも、ラフェエル皇帝様の約束には『日が暮れる前に帰ってくるように』というのがあるんだ。
…………わかっている、我儘なんだと。
だけど____帰りたくないんだ。
ぎゅう、と細く小さい繋いだ手を握る。それを見たアミィールは、少し考えてから『セオ様』と呼んだ。
「…………なんだい?アミィ。私が黙ったから心配、してくれたのかい?」
「いいえ。そうではなく____わたくしの我儘、聞いてくださいませんか?」
「我儘?」
「ええ。わたくし、………実は、もっともっとこの時間を楽しみたいのです。
だから___お父様の言うことなど、忘れて、もう少し街を歩きませんか?」
「…………!」
セオドアは俯いていた顔をバッ、と勢いよく上げてアミィールの顔を見る。
アミィール様は自分の桜色の唇に繋いでない方の手の人差し指を立てて、悪戯っぽく笑っている。
_____この人は、どこまで男前なのだろう。
いつも、いつだって、俺の気持ちを汲んでくれる。俺が言葉にしなくても『俺が言って欲しいこと』を言ってくれるんだ。
俺が、はっきり言えない情けない男だとは重々承知なのだが___それでも、この気遣いはいつだって俺を喜ばせてくれる。
セオドアは嬉しそうに笑って、口を開いた。
「___うん、もっと、デートしよう」
「ふふ、………ええ、共に楽しみましょう。では、あちらに___「きゃー!」……!」
「!」
不意に、悲鳴が聞こえた。
俺とアミィール様が悲鳴が聞こえた後ろを見ると___とんでもないことが起きていた。
「サクリファイス大帝国を今から燃やし尽くしてやる!」
「か、火事よ!」
「や、やめてぇ!」
褐色の肌のタトゥーだらけのスキンヘッドの男が、片手に煌々と燃え盛る松明を持ちながら、走り回っているのだ。その松明をご丁寧に一つ一つの店につけて、街が燃えている。
大変だ…………アミィール様をまず、お守り_____!?
「アミィ!?」
俺の手から、アミィール様の手が離れ、アミィール様は一心不乱にその男に向かって突っ込んでいった。
0
お気に入りに追加
74
あなたにおすすめの小説
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。


異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる