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第16章 チート過ぎる家族達
『下克上闘技大会』当日
しおりを挟むサクリファイス大帝国・闘技場。
此処は古くから軍事国家と呼ばれていたサクリファイス大帝国が誇る場所で、演説等の際はよく使われることが多い。
が、今日は演説ではなく_____『下克上闘技大会』が開催されるのだ。
国民や兵士達はこの大きな闘技場に足を運び、既に満杯状態である。観客達が見守る中、剣士達が剣を交えて、それを見て観客達は熱狂している。
それを一番見渡せる場所に____サクリファイス皇族一同は揃っていた。
【「おおーっと!中々いい攻撃が入りましたー!そこ!もっと太刀筋をしっかり!
解説のラフェー………じゃなくて!ラフェエル皇帝様!これはどのような状況でしょうか!?」
「……………遊びだな」】
「………………」
「…………………」
アルティア皇妃様の声拡張魔法がかかった言葉が会場に響き渡る。なんというか、………とっても恥ずかしい光景である。前世では普通にスポーツ番組の解説を聞いていたが、身内がやるととても恥ずかしい。
それはともかく、今日は『下克上闘技大会』である。眼下で剣士達が木刀で戦っている。魔法を使っている者や格闘技のような武術を使っている者も居る。この解説さえなければとても見ていて面白い。
ただの娯楽と思っていたが、どうやらそうじゃないらしく、普段から鍛えている国民達がこの日のこの場所で武を示す、という日なのだというのをひしひしと感じる。これならば一人一人の意識を高め、尚且つ目標を持って鍛錬のできる………改めてサクリファイス大帝国という国は凄いと実感する。
それに。
セオドアはそこまで考えて、隣を見る。
隣には____紅銀の髪をポニーテールにし、黒と赤の鎧を纏ったアミィール様。見ようによっては美男子である。とても凛々しくて格好よくて…………目の保養になっている。
「………セオ様?どうなさいました?」
「い、いや………アミィは格好いいな、と思って………」
セオドアがそう応えると、アミィールは眉を下げた。
「…………可愛くない格好ですよね。セオ様の妻なのに、こんな………」
「そんなことないよ!………私は、アミィのどんなお姿も見たいから嬉しい」
「………!セオ様…………」
アミィールはセオドアの本当に嬉しそうな笑みを見てほんのり顔を赤らめながら抱き着く。セオドアもそれに答える。
格好いいけど、抱き締めることは難しいな………鉄の冷たい感触ではなく、アミィール様の温かく細い身体を抱き締めたい。鎧分の隙間が寂しいな。
【「おおっと!我が娘夫婦がイチャイチャしています!神聖な闘技場で抱き合ってます!いやぁこちらもお熱いですね~!ね、解説の皇帝様」
「…………」
「ぎゃぁぁぁぁ! 」 】
皇族一同の居る場所に黒い雷が落ちて、『皇族一同は相変わらず仲がいいな』と国民達は思ったのだった。
* * *
「では、セオ様、行って参りますわ」
「ああ、行ってらっしゃい、アミィ」
トーナメントが順調に進み、決勝が始まるというところでアミィールは立ち上がり、セオドアにキスを落とした。
セオドアもそれに応えると、アミィールは颯爽とフライの魔法を使って観客席から降りた。
それを見送ってから俺は逃げ__「はい、逃がしませーん」………。
俺もさりげなく観客席から離れようとするが無常にもアルティア皇妃様に捕まる。そして、満面の笑みで言った。
「さて、セオドアくんもお着替えしましょうね~」
「だ、だから私はやりません!アミィール様に刃を向けるなど……!」
セオドアが言い終わる前に、アルティアはパチン、と指を鳴らしてセオドアの服を鎧に替える。そして、無理やり甲冑を被せられる。
つまりは_____
「よし、セオドアくんの番は最後だから、最後にアミィールと一騎打ちしてね!」
___こういうことなのである。
セオドアは甲冑の中でまた涙ぐんだのだった。
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