上 下
226 / 469
第16章 チート過ぎる家族達

※少しこの扱いに慣れました

しおりを挟む





 「で、だ。今年は誰が出る?」



 呆然とするセオドアを放って、会話は続く。ラフェエルはちら、とアルティアを見るがアルティアは知らぬ存ぜぬ顔でパスタの最後の1束をフォークで絡みとり口に含む。完全に興味を失っている。わかりやすい女である。しかしそれをさせておくラフェエルではない。



 「アル、私の話を聞け」


 「聞いてるわよ、察しが悪いわね。

 私はパース、だって魔法1発で瀕死にさせちゃうんだもん、人間相手の加減は面倒だしつまんない。

 アンタが出れば?」


 サラッとこう言うアルティア皇妃様はやっぱり恐ろしい御方である。そしてこの人も。


 「…………私は前回出た。あんな子供の遊びに興じるのはつまらん。

 そこで、セオドア」


 「は、はい!?」



 突然呼ばれて背筋が伸びる。この流れ、まさかまさかだよな…………?


 次に発せられる言葉が分かりきってて震えるセオドアの掌にそ、と小さな手が触れる。見ると、やっぱりアミィール様が優しく微笑んでいた。



 「わたくしが出ます故、セオドア様はご心配なさらず」



 「な、ダメだ!私が出る!アミィに危険な事など……「わたくしは6歳から出場してますので慣れています」……う」



 そう言われると言葉に詰まる。というか6歳から大人相手に皇帝の座をかけて戦う子供って強すぎないか?この3人でこの大きな国を回している事実は伊達じゃないというか…………って、そうではなく!



 「し、しかし、………アミィが傷つくのは………」



 「大丈夫ですよ、この大会で手傷1つついたことがございませんので」



 「……………決まりだな。では10日後はお前が出ろ、アミィール」


 「は、見事に勝って見せますわ、お父様」



 アミィール様はそう言って座りながら綺麗なお辞儀をする。けれど俺の心中は複雑である。


 アミィール様は確かにお強いが……しかも大きな行事の参加者を今この場で軽いノリで決めてしまうあたりがもうほんと、ついていけない、凡人には怖い領域だ………………俺本当にこの皇族の一員でいいのか…………?



 すっかりマイナス思考に陥ったセオドアはこの後の食事が喉を通らなかった。







 *  *  *



 「……………ううっ…………」



 下克上闘技大会5日前、セオドアはひまわり畑にてやっぱり泣いていた。理由はいつも通り___この大人達のせいである。


 セオドアが涙目で前を見ると____義母のアルティア、黒と白のごまプリン頭、黒瞳のセイレーン皇国の皇族であり聖女、フラン・ダリ・ジュエルズ・セイレーン、深緑髪、黄緑瞳のヴァリアース大国女王陛下、エリアス・ラピュード・ヴァリアースの3人がいつも通り酒を飲んでいる。


 ここまで言えばわかるだろう。俺はいつもの如く___女装をさせられていることを。


 セオドア_ウェーブのかかった群青色の長髪、派手な化粧、白いミニスカ姿_はプルプルと震えながら涙を堪えている。もう19歳になるのに………未だにこの大人の悪ノリに付き合わされ…………俺は自分がなんなのかさえ分からなくなってきています…………



 悲しいことにそんな姿も可愛らしい美男子を見て悪ノリ大人陣はギャハハと声をあげて笑う。


 「今回のはだめね~!ミニスカは流石に足のたくましさが隠せてない!」


 「いや、わんちゃんありじゃないですか?骨太!ってかんじで!」


 「わたくしはこの服よりもドレスの方が好きですわ、化粧もやはり控えめの方が素材の良さが出るというか…………」




 「本当にいい加減にしてください!私は男なのです!アミィール様にこんな姿を見られたら私は…………!」



 「なに?水着を着てみたい?ビキニ着る?」


 「き!ま!せ!ん!」


 すっかり慣れ親しんだ大人達にセオドアは吠える。この1年をかけてやっとこの重要人には強く否定しないとダメだと思ったのだ。しかしそんな姿も可愛らしくて3人はほっこりする。


 アルティアはマカロンを食べながらその様子を愛でる。



 「セオドアくんが男の子なのはわかってるわよ~、この前アミィールを孕ませるって宣言したものねぇ?」


 「んなっ!その話は___「「そうなんですか!?」」うわっ」



 アルティア皇妃様の言葉を遮ろうとしたが時すでに遅し。勿論悪ノリ大人陣2人がそれを聞いて黙ることなどなかった。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました

群青みどり
恋愛
 国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。  どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。  そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた! 「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」  こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!  このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。  婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎ 「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」  麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる── ※タイトル変更しました

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

処理中です...