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第15章 主人公と兄
サクリファイス大帝国の黒歴史
しおりを挟む次の日、やることを終えた俺はすぐにラフェエル皇帝様がいつもいらっしゃる玉座の間にきた。アポも取らず無礼だと知っているけれど、逃げられるのは嫌だったのだ。
だから乗り込む形できた。
____アミィール様の秘密を、どうしても知りたかったから。
「……………………」
俺が聞くと、ラフェエル皇帝様は顔をしかめた。…………兄上が話していた時と一緒の顔。どうやら、知らないのは俺だけのようだ。
妻のことを何も知らずに、何が夫だ。
妻の悲しみの理由さえ知らずに、何が愛する人だ。
そう思うと____怯えてなどいられなかった。
しばらくの沈黙の後、ラフェエル皇帝様が豪華で立派な椅子から離れた。
「____お前は、それを知ってどうする?お前の聞こうとしていることは……………お前を傷つけ、アミィールから離れたくなるような気持ちにさせるものだ」
「それを知ったとしても___私は変わりません。私はサクリファイス皇族で、アミィール様の皇配です。
愛する人のことを、知らずには居られません」
「………そうか………」
ラフェエル皇帝様は静かにそう呟いてから、椅子の周りを歩き、言葉を紡いだ。
「___我々、サクリファイス皇族と龍神は、とても罪深い生き物で人間だった。
10万年前、初代龍神が生まれてから沢山の………沢山の命を奪い、沢山の血を浴び続けた。
サクリファイス皇族第1皇太子は14歳で戦場に立ち、たくさんの人間を屠り、魂を奪って自分の魂を穢した。
龍神はその穢れた魂を喰らい、あまつさえ第1皇太子が殺した者たちの魂さえも____喰らった」
「…………………」
気高き人殺しの一族。俺にはそう思えた。サクリファイス大帝国の歴史は俺も知っている。執事のレイに調べさせたんだ。俺が生まれる、いや、ラフェエル皇帝様以前の皇帝達は自ら友好国でない国々を争わせ、それを鎮圧するという理由で沢山の兵士を使い、たくさんの人間を殺してきた、と。
悲しかったさ。………けど、それはラフェエル皇帝様達が皇族を殺して、無くなったはずだ。
セオドアが頭を整理していると『そして』という低い声が響いた。
「私が皇帝になってからはそんなことをしなくなった。無闇に争いは起こらなくなった。………だからこそ諸国は乱れ、奴隷売買や小競り合い、領地の横領、…………国民達が苦しむ現実が出来てしまった。
その現実を私達は鎮圧する為に剣を再び握った。………私達一族は血で血を洗うことしか、それを止める方法がわからない。
アミィールは____サクリファイス皇族の血を、龍神の血を持ってして…………サクリファイス大帝国の"死神姫"として、今も手を血に染めているんだ」
「____!それは、………では、アミィール様は………!」
セオドアの声が震える。
流石の俺でもわかったのだ。………アミィール様の『穢れ』というのは………
「アミィール様は____人を、人を殺しているのですかッ!」
大きな声が出た。アミィール様はお優しい、そりゃあ、凄く強いし言葉より手が出るけれど、人なんて……………
そこまで考えて、思い出す。
2回目の断罪イベントの時、アミィール様は当たり前のように俺を攫ったザッシュ達を殺そうとした。なんの躊躇もなく、剣をふりかざそうとしていた。俺は『人殺しをするアミィール様を見たくない』と言った。
……………もしかして、俺にそれを言わないのは…………その言葉を覚えているからなのか?
セオドアはよろよろと立ち上がり、ラフェエルに近づく。もう礼儀も身分も立場も関係なかった。俺は、自分の感情を殺すことなどできるほど、大人ではなくて。
気づいたら俺は___ラフェエル皇帝様の胸倉を掴んでいた。そして、感情をぶつけた。
「なんでっ、なんで止めないのですか!
なんでアミィール様が人殺しをしなければならないんですか!
なんでっ…………アミィール様の御手を穢そうとするのを見過ごしているのですかッ!」
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