上 下
203 / 469
第14章 ダブル誕生イベント!

Sweet Birthday #皇帝夫婦編

しおりを挟む
 



 _____食堂の前で抱き合う2人を、ラフェエルは見ていた。


 こんな所ではしたないことをするな、と言いたいところだが…………会話を聞いて、やめた。

 何故なら今日は私達サクリファイス一族にとって忘れてはならない日で、私とアミィールが生まれた日だから。


 私は……………アミィールの誕生日だけは、祝ったことがなかった。アルティアなどは懲りずに毎年馬鹿みたいなプレゼントをしてくるが、それでも、私があの子を産み落としたせいで辛い宿命を与えてしまったのだから、祝う資格はないと思っていたから。


 仮に盛大に祝ったとしても、アミィールは喜ばない。…………私だって、アミィールと同じ年頃で祝われていた時は心が重くなっていたから。


 この日を誰よりも恨んでいた私が、祝う資格など元よりないのだ。

 けれど。


 ____アミィールが愛している男は、それを知っていても知らなくても、私の娘の誕生を喜んでいるのだ。一つ一つの言葉が、あの子の心の氷を溶かしている。



 それを邪魔するほど私は無粋ではないと思いたい。



 …………今日は会食を辞めるべき「ラーフェ」…………!



 不意に、後ろから呼ばれた。
 振り返ると____私の、誰よりも、何よりも愛おしい女。どんな時でも笑顔を絶やさず馬鹿みたいなことばかりする、皇妃らしくない皇妃だが、それでも私が唯一心の底から信頼し、また愛している女。



 「なにやって……ああ、娘夫婦の覗き見?」


 「……………そんな趣味の悪いことを私がすると思うか?」



 「うん」


 あっさりと頷くアルティア。…………昔からこの私にそうして無礼な奴だったな、お前は。好きになる前も契約した時もその前も…………私が7歳の時、出会った時も。


 いつだって人の心を無理やりこじ開け踏み荒らすようなやつで、………勝手に心に住み着く女。



 「……………部屋に行こう」


 「だめ、今日はご飯の日だもの」


 「あの二人の邪魔をする気か?」


 「そうじゃなくて!………ん」


 「…………?」




 アルティアはふい、と顔を逸らして私の胸に小さな箱を押し付けてきた。そして、小さな声で言う。


 「……………それ、開けて」

 「なんだこれは?」


 「いいから!開けてくれないと許さないわよ!」


 逆切れに近い言われようだ。その顔は不機嫌そうだと言うのに赤い。何が何だかわからないが、箱を手に取り開けてみる。


 そこには_____指輪が、2つ。
 紅いルビーの石が組み込まれている物と、黒いオニキスの石が組み込まれている物。



 これは……………?



 「なんだ、これは」


 「……………誕生日兼、その、結婚指輪」


 「!」 



 ぽつり、そう言ったアルティアはさらに赤くなっている。そして、すぐに誤魔化すように言葉を重ねた。


 「そ、それは、えっと、なんというか、………いつも誕生日は私~☆って言ってるけどよく考えたら毎日アンタに私をあげてるわけだし!新しい趣向というか?


 セオドアくんとアミィールのように結婚指輪したいとか!そんなんじゃないから!」



 「………………」



 何も聞いてないというのにペラペラと話すアルティア。…………昔から、何でもかんでもポロポロと本音を零すやつだ。隠す気がないのか?隠せる技量もないのか…………



 そこまで考えて、ふ、と笑みを浮かべて箱からルビーの指輪を手に取る。そして、未だにこちらを向かないアルティアの手を取り、優しく嵌めた。



 「____アル、お前は、俺の女だ」


 「____知ってるわよ」


 「____もっと知れ。もっと身に刻め」


 「____これ以上刻めないくらい、あんたでいっぱいよ。馬鹿」



 「ふ………………アル」



 「な、…………んっ」



 ラフェエルはアルティアの頬に手を添えて、唇を交わす。深い、窒息するようなキスを受けて、2人は思う。




 ____どんなに時が流れても、愛するのはコイツだけ。


 _____今世も来世もその先も、愛せるのはコイツだけなんだ。







 甘い、甘い皇族一同は廊下を歩く従者達になど目もくれず、お互いを慈しみ合う。


 その姿はとても仲睦まじく___全員が自分達の主人の幸せを心から祈り、憧れたのだった。



















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました

悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。 クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。 婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。 そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。 そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯ 王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。 シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯

お金目的で王子様に近づいたら、いつの間にか外堀埋められて逃げられなくなっていた……

木野ダック
恋愛
いよいよ食卓が茹でジャガイモ一色で飾られることになった日の朝。貧乏伯爵令嬢ミラ・オーフェルは、決意する。  恋人を作ろう!と。  そして、お金を恵んでもらおう!と。  ターゲットは、おあつらえむきに中庭で読書を楽しむ王子様。  捨て身になった私は、無謀にも無縁の王子様に告白する。勿論、ダメ元。無理だろうなぁって思ったその返事は、まさかの快諾で……?  聞けば、王子にも事情があるみたい!  それならWINWINな関係で丁度良いよね……って思ってたはずなのに!  まさかの狙いは私だった⁉︎  ちょっと浅薄な貧乏令嬢と、狂愛一途な完璧王子の追いかけっこ恋愛譚。  ※王子がストーカー気質なので、苦手な方はご注意いただければ幸いです。

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

異世界召喚されたけどヤバい国だったので逃げ出したら、イケメン騎士様に溺愛されました

平山和人
恋愛
平凡なOLの清水恭子は異世界に集団召喚されたが、見るからに怪しい匂いがプンプンしていた。 騎士団長のカイトの出引きで国を脱出することになったが、追っ手に追われる逃亡生活が始まった。 そうした生活を続けていくうちに二人は相思相愛の関係となり、やがて結婚を誓い合うのであった。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

処理中です...