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第14章 ダブル誕生イベント!
Sweet Birthday #皇帝夫婦編
しおりを挟む_____食堂の前で抱き合う2人を、ラフェエルは見ていた。
こんな所ではしたないことをするな、と言いたいところだが…………会話を聞いて、やめた。
何故なら今日は私達サクリファイス一族にとって忘れてはならない日で、私とアミィールが生まれた日だから。
私は……………アミィールの誕生日だけは、祝ったことがなかった。アルティアなどは懲りずに毎年馬鹿みたいなプレゼントをしてくるが、それでも、私があの子を産み落としたせいで辛い宿命を与えてしまったのだから、祝う資格はないと思っていたから。
仮に盛大に祝ったとしても、アミィールは喜ばない。…………私だって、アミィールと同じ年頃で祝われていた時は心が重くなっていたから。
この日を誰よりも恨んでいた私が、祝う資格など元よりないのだ。
けれど。
____アミィールが愛している男は、それを知っていても知らなくても、私の娘の誕生を喜んでいるのだ。一つ一つの言葉が、あの子の心の氷を溶かしている。
それを邪魔するほど私は無粋ではないと思いたい。
…………今日は会食を辞めるべき「ラーフェ」…………!
不意に、後ろから呼ばれた。
振り返ると____私の、誰よりも、何よりも愛おしい女。どんな時でも笑顔を絶やさず馬鹿みたいなことばかりする、皇妃らしくない皇妃だが、それでも私が唯一心の底から信頼し、また愛している女。
「なにやって……ああ、娘夫婦の覗き見?」
「……………そんな趣味の悪いことを私がすると思うか?」
「うん」
あっさりと頷くアルティア。…………昔からこの私にそうして無礼な奴だったな、お前は。好きになる前も契約した時もその前も…………私が7歳の時、出会った時も。
いつだって人の心を無理やりこじ開け踏み荒らすようなやつで、………勝手に心に住み着く女。
「……………部屋に行こう」
「だめ、今日はご飯の日だもの」
「あの二人の邪魔をする気か?」
「そうじゃなくて!………ん」
「…………?」
アルティアはふい、と顔を逸らして私の胸に小さな箱を押し付けてきた。そして、小さな声で言う。
「……………それ、開けて」
「なんだこれは?」
「いいから!開けてくれないと許さないわよ!」
逆切れに近い言われようだ。その顔は不機嫌そうだと言うのに赤い。何が何だかわからないが、箱を手に取り開けてみる。
そこには_____指輪が、2つ。
紅いルビーの石が組み込まれている物と、黒いオニキスの石が組み込まれている物。
これは……………?
「なんだ、これは」
「……………誕生日兼、その、結婚指輪」
「!」
ぽつり、そう言ったアルティアはさらに赤くなっている。そして、すぐに誤魔化すように言葉を重ねた。
「そ、それは、えっと、なんというか、………いつも誕生日は私~☆って言ってるけどよく考えたら毎日アンタに私をあげてるわけだし!新しい趣向というか?
セオドアくんとアミィールのように結婚指輪したいとか!そんなんじゃないから!」
「………………」
何も聞いてないというのにペラペラと話すアルティア。…………昔から、何でもかんでもポロポロと本音を零すやつだ。隠す気がないのか?隠せる技量もないのか…………
そこまで考えて、ふ、と笑みを浮かべて箱からルビーの指輪を手に取る。そして、未だにこちらを向かないアルティアの手を取り、優しく嵌めた。
「____アル、お前は、俺の女だ」
「____知ってるわよ」
「____もっと知れ。もっと身に刻め」
「____これ以上刻めないくらい、あんたでいっぱいよ。馬鹿」
「ふ………………アル」
「な、…………んっ」
ラフェエルはアルティアの頬に手を添えて、唇を交わす。深い、窒息するようなキスを受けて、2人は思う。
____どんなに時が流れても、愛するのはコイツだけ。
_____今世も来世もその先も、愛せるのはコイツだけなんだ。
甘い、甘い皇族一同は廊下を歩く従者達になど目もくれず、お互いを慈しみ合う。
その姿はとても仲睦まじく___全員が自分達の主人の幸せを心から祈り、憧れたのだった。
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