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第14章 ダブル誕生イベント!
Sweet Birthday #主人公夫婦編
しおりを挟む春の18日、当日。
「…………………………」
アミィールは夜、週に2日の家族との会食をするために皇族専用食堂に向かって、暗い廊下を歩いていた。
その心持ちは____重い。
今日は、自分の誕生日なのだ。そして、自分の父親の誕生日でもある。
一般的に誕生日というのは、自分が生まれたというめでたい日だが、彼女達には違う。
その日はあまりいい日ではなかった。
サクリファイス大帝国の第1皇太子はその日に必ず生まれ、必ず死ぬ日だったから。…………21年前こそ大きな、豪華な祭りが開かれていたという。けどそれは、国民達が第1皇太子を敬う日ではなく。
龍神に殺される日が近づく、………龍神に命を捧げる日だったのだ。
けれど。
お父様はその日に___お母様と契約を結んだ。そして、生きた。…………わたくしが産まれるきっかけとなった日でもある。
嬉しい気持ちはもちろんあります。けれど、それでも…………10万年も続けてきたこの悪しき生贄の血を捧げていた日だと考えると、素直に喜べないのです。
現にわたくしは、今も尚沢山の死体の上に生きている。もう龍神に身体を、魂を捧げることはないのに律儀に役目を全うしているのです。
人の命を奪っておきながら、自分が産まれたことを喜べますでしょうか?
だから、わたくしはセオドア様に誕生日を知らせられなかった。お優しく沢山の愛をくださるセオドア様は満面の笑みでお祝いをしてくださるのは、知っているから。
わたくしは____自分の誕生日を祝われて喜べる、可愛い女ではないのですね。
アミィールは自虐したように笑う。…………そんなことを考えていた、あっという間に食堂についた。
わたくしの後ろに控えていたエンダーが扉を開けると____
「アミィ!」
「…………セオ様?」
扉のすぐ先には、セオドア様が目を輝かせて立っていた。ほんのり紅い顔をしている。………わたくしをここで待っていたのかしら?
モジモジとするセオドアにアミィールは見覚えがあった。ウエディングドレスを貰った時のようだ。
つまり、またわたくしにプレゼントを………?けれど、この食堂で?それにこの日は…………
そこまで考えて、アミィールは少し暗い顔をする。『プレゼントは要らない』と言わなければ___「アミィ、その、腕を出して?」………
耳まで赤くしながら、緑の目を潤ませているセオドア様。その顔に胸が締め付けられる。子犬のような瞳には弱いのです。………それに、この様子になったセオドア様は言うことを聞くまで動かないでしょう。
「…………ッ」
アミィールは少し考えてから、腕を出した。セオドアはその腕に視線を向け、紐のような物を器用な手つきで紡いでいく。それをやりながら、優しい声で言う。
「……………アミィ、俺、………アミィの誕生日を、知らなかったけれど……………アミィは誕生日を嫌いなのかもしれないけれど………
____それでも、アミィと出会って、結婚して、こうして話せるのはアミィが生まれてくれたおかげだから、俺はこの日が好きだ」
「____セオ、様」
愛おしげな声が鼓膜を揺らして、自分の目が熱くなる。………腕には、お父様とお母様が腕に着けている縁の紐。セオドア様の髪色と同じ色のサファイアの石が組み込まれている。
縁の紐は_____来世でも出会う証。
だけど…………わたくしは地獄に落ちるべき人間で。
これ以上の生はきっと受けられないだろうと諦めていたはずなのに。
今にも泣きそうな顔をしたアミィールを見て、セオドアはにっこりと笑って、自分の腕にぶら下がるわたくしの髪色と同じ紅銀の宝石が組み込まれた縁の紐を見せて、言った。
「_____これで、俺達は来世でも出会える。
誕生日おめでとう、アミィ」
「_____ッ、セオ様!」
「わっ」
アミィールは勢いよく抱き着く。顔には…………涙と、笑み。
初めて思った。
_____この日に生まれてよかった、って。
アミィールとセオドアは食堂の入口というのも忘れて、抱きしめあっていた。
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