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第13章 主人公と擬似育児

我儘皇女

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 こんなに愛されているとはいえ、ヨウの面倒を見るのは1週間という約束だ。


 そして、楽しい時間というのはあっという間に過ぎるもので。ヨウが来てもう6日目となった。別れが惜しいが約束は約束………………なのだが。



 「お父様」


 「ダメだ」


 「なんでですの」


 「ダメだからだ」



 「………………………」



 「ぶ?」


 目の前で机を挟んで言い合いをしているのはアミィール様とラフェエル皇帝様だ。ヨウが来てからご飯を毎日一緒に食べていて、いつも楽しいのだが……………今日は違った。


 それはもう険悪な雰囲気な中、俺はヨウを抱きながら涙を抑えるので精一杯だ。
   


 ……………何があったって?それは…………



 「アミィール、ラフェー、喧嘩しないでよ。ご飯が美味しくなくなるわ。

 アミィール、何度も言うけどヨウくんを養子にするのはだめよ」



 「何故ですか!」



 アミィール様は大声を出して立ち上がる。…………そうなのだ。この雰囲気の理由は、アミィール様が『ヨウを自分達の養子にしたい』と言ったからなのだ。


 勿論、俺もそうしたい気持ちはある。ヨウはとても可愛く、離れ難い存在になっている。それは、俺以上に強い思いを抱いているアミィール様も一緒で。


 ……………でも。



 暗い顔をするセオドアを見つつ、ラフェエルがアミィールを睨みながら言う。



 「____何度駄々を捏ねてもだめだ。ヨウは孤児院の子供だ」


 「今日からわたくし達の子供になるのです!」


 「はあ………………お前はもう少し冷静にものを考えられないのか?誰に似たんだ」


 「お父様の種で出来たのでお父様です!わたくしも今日から理不尽になります!」


 「アミィ……………」



 ここまで必死なアミィール様を初めて見たから戸惑う。言ってることは無茶苦茶だが、いつも聡明な彼女がここまで言うほど、ヨウを愛してしまっているんだ。


 援護をしてあげたい気持ちはもちろんある。養子にするのはなんの問題もないが、それを許す皇帝夫婦ではなかった。



 「わたくしッ、ヨウ様を子供に出来ないのであればセオ様と駆け落ちします!………セオ様!いきま___ッ!」



 「アミィ!」



 そこまで言った所で、いつの間にかアミィール様の近くまで来ていたアルティア皇妃様が思いっきり頬を叩いた。白い肌が赤くなっていく。駆け寄ろうとする俺をアルティア皇妃様は手で制して、未だに母親を黄金の瞳で睨むアミィール様の胸倉を掴んだ。



 「あんた、馬鹿じゃないの?この子は___これから、幸せに生きていく国民よ。

 それをアンタの我儘で奪おうとするの?」


 「ッ、お母様だってガロを拾ったって言ってたじゃない!」



 「ガロとは状況が違うわ。………ヨウはもうすっかり人に慣れた。孤児院でも上手くやっていけるでしょう。


 _____孤児院でたった1人だけ皇族に迎えたら、他の子達がどう思うか、考えられないの?」



 「………………ッ」


 「あ、アミィ!」


 アミィール様はそれを聞いて目を見開いてから、悔しそうな顔をして食堂を出ていってしまった。後を追いかけようとする手を___アルティア皇妃様に掴まれた。



 「アルティア皇妃様!アミィール様を追いかけるので……「放っておきなさい」…ッ、そんなことできません!」


 そう言い切ると、アルティアはため息をつきながらセオドアからヨウを取り上げ、低い声で言った。


 「_____"跪け"」


 「………ッ!?」




 アルティア皇妃様がそう言うと、俺の身体は勝手にその場に膝を着いた。
 この力を俺は知っている。アルティア皇妃様が使う『言霊呪文』だ。





『言霊呪文』___この世界に居るという悪魔やサキュバス、アンデッドと呼ばれる闇属性の上位魔物が使う特別な魔法で、これを使われると人間はその言葉に勝手に従うのだ。






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