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第12章 様々な愛の形

その幸せは奇跡の賜物

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 「_____では、執務に戻ります。


 また夜に来ますので………お待ちください」


 「ああ。____行ってらっしゃい」



 1時間ほど愛し合って、上機嫌のアミィールは未だに裸でベッドに横たわるセオドアの額にキスを落とす。セオドアも動かない身体を少し浮かせて、頬にキスをする。それを受けたアミィールはにこにこしながら部屋を出ていった。



 _____結局、今日もアミィール様に甘えてしまった。 


 そう思うセオドアに、もう涙はない。あるのはアミィールの体液と沢山の赤い痕だけだ。


 いつも、こうだな俺は。俺が泣くと、アミィール様は沢山慰めてくれて、癒してくれる。それは結婚しても変わらない。寧ろ、身体を重ねるようになってからは更に糖分が増して…………俺はトロトロに溶けてしまっている。

  

 先程まではアミィール様に嫌われてしまうと泣いていたのに、今はアミィール様はどんな俺でも受け入れてくれるという思考に変わっているのだ。単純だろう?    


 ____俺ばっかり、幸せを貰っている気がする。


 _____俺は幸せをちゃんと返せているのだろうか?



  「……………返せている気がまるでしないな」



 セオドアはアミィールの温もりが残るベッドを撫でながらぽつり、呟く。


 ……………こんなことを思ってしまうのは、ダーインスレイヴ様とフラン様の恋愛観を聞いたからだ。

 俺はギャルゲー『理想郷の宝石』の主人公に転生した。けれども攻略対象者を避け、結果断罪イベントが発生して___偶然留学に来ていたアミィール様に救われて。


 アミィール様にたまたま出会えて、婚約して、結婚して。当たり前のように甘い現実を享受していたけれど、それはとても奇跡に近い事で。


  俺はきっとダーインスレイヴ様のように自分の役目も全うできない。


 フラン様のように結ばれなくても心に居続ければいいとも思えない。



 ………………俺はあの二人に敵わないのに、アミィール様にこんなにも愛されている。


 これを奇跡と言わずになんという?
 こうしてアミィール様を愛すだけ愛して、幸せな気持ちでベッドで寝ているのは奇跡なのだ。



 こんなに沢山の人に愛されているアミィール様に好かれたことも、奇跡なのだ。




 _____大事にしなければならない、この奇跡を。


 「____俺は、アミィール様を幸せにする。俺だけが幸せじゃなく、アミィール様を幸せにするんだ。 

 全ては愛しいアミィール様の為に……………」




 「…………………一人でなに語ってんだよ」




 「うおっ!?」




 不意に声を掛けられて飛び起きる。
 見ると、執事のレイがいつもの呆れ顔で立っていた。



 「な、の、ノックぐらいしろよ」


 「したさ。何度もな。……………とりあえず服を着ろ」



 「あ」



 レイに言われて自分が裸なのを思い出す。………というか、ここ寝室じゃなくて俺の部屋じゃん!俺のベッドで、アミィール様を抱いてしまったのか俺………!?




 今更その事実に気づき、先程の乱れたアミィール様の姿を思い出す。自分のベッドでアミィール様が…………あんなお姿を………ッ!





 「…………………レイ、お願いがあるんだが」


 「なんだ?」 


 「このベッドのシーツ、変えないでくれ」


 「巫山戯るな」



 セオドアの発言をバッサリ切り捨てた執事でした。





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