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第12章 様々な愛の形

ひまわり畑の聖女は

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 「……………………………」



 泣くのをやめて、ふらふらと庭園を歩く。今は花を愛でる気にはなれない。………こんな浅ましい気持ちと自己嫌悪の気持ちで愛でたらきっと花は元気を無くしてしまう。



 セオドアは覚束無い足で歩きながら咲き誇る花達を見る。


 _____20年前の旅というものはどういうものだったのだろう。

 ふと、考える。
 クリスティド国王陛下も、エリアス女王陛下も、フラン様も、ガロも、ダーインスレイヴも、リーブも、…………みんな、この話をすると悲しそうな、でも嬉しそうな…………楽しそうに話すんだ。20年前の旅がなんなのかわからない俺にはわからない。けれど…………そこには確かに『物語』があるのだ。

 アミィール様に1度聞いてみたことがある。けれど、アミィール様も『なんで旅をしていたかまでは誰も教えてくれないのです』とやっぱり悲しそうな顔をしていた。


 ____俺達子供には、教えたくないような言い方だった。


 なんで………………あ。



 気づいたら俺は、庭園の奥にあるひまわり畑に来ていた。さわさわとした風がひまわりを揺らし、ひまわりの花びらが舞っている。そして____真っ白のテラスに、黒と白のごまプリン頭が特徴的なフラン様のお姿があって。



 「……………フラン、様?」



 「ん?あら!セオドアくんじゃない!」




 俺が呼ぶと、フラン様はこちらを向いて向日葵に負けないくらい華やかな笑みを向けた。ここから見ても美しい。………けれど、その人の恋は___実らない。


 そこまで考えて、じわりとまた涙が滲んできた。フランはそれをみて『なになに!?』と驚きながら駆け寄ってきた。



 「どうしたの、セオドアくん……って、よく見たら目が真っ赤じゃない!折角のイケメンが台無しよ!

 このフランおねーさんに話してみなさい!」


 「…………ッ」



 言えるわけ、ないじゃないか。
 ダーインスレイヴ様がフラン様を愛さないと断言したことを。フラン様のこの笑顔が涙で濡れるのは、嫌だった。だってこの人も、俺に優しいから。
  

 「ぐずっ………」


 泣くことしか出来ないセオドアを心配するフランは、セオドアの右耳に着く青紫色のシンプルなピアスに気づく。



 …………ダーインスレイヴ様、この子を認めたのね。あの人の事だから認めないと思っていたけれど……………


 そんなことを思いながら、フランはセオドアの右耳のピアスに触れた。



 「セオドアくん、やっとダーインスレイヴ様に認められたのね!よかったわ、これで立派なサクリファイス皇族の仲間入り!流石ギャルゲーの主人公!すごく美味しいわ…………!」



 「ッ、フラ、さ………あの、ダーインスレイヴ様の、こと、その…………」



 セオドアが泣きながらも言葉を紡ごうとしている。ダーインスレイヴ、という言葉を聞いて、なんとなくだけどわかった。…………この子の泣いている理由。

 これで察せられる私凄すぎない?やっぱりヒロインなのよ、私は。伊達に乙ゲーオタクをしてないわ。………それに、この子とただ遊んでるだけじゃない。


 元々アミィールちゃんが、私達の掴んだ希望が選んだ子を見定める為に絡んでいたんだから。



 「_____セオドアくん、ダーインスレイヴ様とお話したでしょ。私のこと」


 「…………!」



 セオドアは思い切り顔を上げた。涙で顔をぐちゃぐちゃにしながらも目を見開いている。



 綺麗なエメラルド色の瞳、群青色の髪。
 そしてこの心優しい性格。



 ____私達の作り出した希望が選んだ、大事な次代の愛らしい子供。



 フランはふわり、笑みを零した。
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