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第11章 人外皇女の秘密
主人公は結ばれて欲しい
しおりを挟む「………………やっぱり、アミィは俺の運命の人だ」
「違います。………わたくしたちは、きっと前世から、いえ、その前からずっと夫婦だったのです」
そう言って優しく抱き締め返すアミィール様。…………前世では結婚していなかった。誰かと付き合ったことはあれど好きになることも恋を感じることもなかった。だからそれは間違っているのだが…………これは、言うことではないな。
「ねえ、アミィ____俺と、寝室に行かないか?」
「勿論。………………2人の世界に、参りましょう?」
アミィール様は少し離れてふわり、笑みを浮かべた。今日も俺はこの運命を、幸せを全身で感じます。
* * *
「う~ん」
セオドアは孤児院に持っていくお菓子を作りながら悶々とする。キッチンにはたくさんの棒付きキャンディ。今回のお菓子は大きな、それこそ漫画に出てくるようなキャンディにした。子供達は甘いお菓子が大好きで、俺のお菓子でさえ喜んでくれるのだ。
それはともかく、俺は作りながら思考を巡らせていた。
…………フラン様とダーインスレイヴ様がなんとか結ばれて欲しいと思ったのだ。20年越しの片想いが報われないのは悲しいだろう?俺だったら耐えられない。アミィール様のことを好きだし、20年、いやそれ以上でも愛せるとはおもうけれど、でも、片想いで想いが通じてなかったらやっぱり寂しいと思う。苦しいと思う。気づいて欲しいって思う。
ダーインスレイヴ様の気持ちも勿論大事だ。何度もフラン様を振っているいらしいけれど、密会の時だって仲良さげでたまにサクリファイス皇城で2人が話しているのを見るけどいい雰囲気だ。
嫌いではない、少なくとも。
だからといって特別好きだと結びつけるのは極論であるけれど、断る理由くらい知りたいのだ。
だってあんなに楽しげに話していて、ボディタッチもして、笑顔も見せて、それなのに………好きにならないものなのか?
フラン様もなんでフラれてまくっているのにそれでも笑顔でいられるんだ?当然だと言わんばかりに振る舞える?
………………俺は、恋愛に疎い。そもそも女性観、男性観さえよくわかってないのかもしれない。アミィール様と出会うまで、それこそギャルゲー『理想郷の宝石』の主人公として攻略対象キャラに言い寄られていたけれど嬉しいとすら感じなかった。理由は彼女達の個性的で他人に冷たい性格もあるけれど、それ以前に美しい人を見て綺麗と思えど、ときめきはしなかった。
前世でもそうだ。
ありがたいことに女性から言い寄られたことがあるけれど、当時はその意味をいつも知らなくて後から友達に叱られていた。『なんで気づかないんだ』と嫉妬や僻みを織り交ぜた言葉を受けたことだってある。
俺は俺が鈍いことをよく知っている。
だから、フラン様とダーインスレイヴ様の関係を理解できないかもしれない。
……………俺は心の底からサクリファイス大帝国の人間になってしまったようだ。理解できないものは知りたいと思うし、身近な人には幸せになって欲しいと思ってしまう。嬉しい変化に頬も緩む。
「………ふふふ」
「セオドア」
「ん?」
一人にやけていると、執事のレイに話しかけられた。執事モードじゃないレイの声を聞いて見ると_____沢山の棒付きキャンディが机に山積している。
「お前、どれだけ作るつもりだ?もう1000個はあるぞ。子供に2つずつ渡していたらいつか虫歯になるぞ」
「うっ………………………」
「とりあえずお菓子を作りながら乙女思考するのをやめろよ…………どうするんだよこれ…………おまけにまだその寸胴鍋パンパンじゃないか」
レイにそう言われ、鍋を見る。鍋には並々と水飴が。あと1000個は作れそうだ。
「……………なあ、レイ」
「嫌だ」
「何も言ってないぞ!」
「俺からアルティア皇妃様に進言させようとするのやめろよ。いっそ自分でアルティア皇妃様のようにお菓子を投げろ」
「俺はこんなに沢山のものに浮遊魔法をかけられる技量はない!せめて、せめてお前も手伝ってくれ!」
「お前…………投げるという習慣が身につきすぎだろ…………」
「あっ」
すっかりアルティアの奇行に考え方が犯されていると気づいたセオドアでした。
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