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第11章 人外皇女の秘密
聖女はアタックしている
しおりを挟む「乙女ね、でもそんなこと言ってたら関係が縮まらないわよ。今からダーインスレイヴの所に行ってきたら?」
「もう行きました!それはもう楽しい時間を過ごして…………!今日は『お前とは付き合えない』と渋い声で断られるパターンでした!」
フランは顔を赤らめるのをやめて溌剌とそう言った。
事後だったのか……………というか、フラれているのになんで笑顔でいられるんだ?俺だったら心が折れること間違いなしだ。
『フラン!』
「カーバンクル様………!」
『あっ、セオドア様………!』
不意に大好きな声がして思わず声のした方を見る。白い羽の生えた大きなリス___聖の精霊、カーバンクル様だ。とても愛らしい見た目で、俺は大好きなのだ。まんま愛玩動物で可愛すぎるしモフモフすぎるのだ。
カーバンクルもいつも優しく撫でてくれるセオドアが大好きで、2人が顔を合わせると必ず抱擁する。これは断じて浮気ではない。断じて。
そんなことを思いながらめいっぱいもふもふしているセオドアの手を受けながら、カーバンクルは相棒であるフランに言う。
『そろそろ帰らないとまた城が騒がしくなるよ、怒られる前に帰ろ?』
「あら、もうそんな時間?見つかったらうるさいし、帰るとしますか!
先輩!また来ます!セアちゃん!次はポニーテールをするからね!」
「うん、ばいばーい」
「ポニーテールはしません!」
軽いノリで手を振るアルティアと顔を真っ赤にして控えめに怒るセオドアに見守られて、2人は帰っていったのだった。
* * *
「ふぅ」
セオドアは洗面所でやっと顔を彩っていた化粧を落として、自分の顔を見た。やっと自分に戻れた、という感じだ。今日はアミィール様に女装を見られることなく過ごせたのが唯一の救いだな。
そう思ってから洗面所から出て、いつものソファに座る。ふかふか過ぎず硬すぎずのソファはお気に入りである。身体を預けて天井を見る。
フラン様はダーインスレイヴ様が好きなのか……………
確かに、ダーインスレイヴ様はイケメンである。乙女ゲーム『理想郷の王冠』の攻略対象キャラということもあってかなりのイケメンだしミステリアスだしダンディだし…………むしろ、あのお姿を見て好きにならないものなどいないのではないか?
フラン様もお美しい。歳など感じさせないほど活発で、明るくて、アルティア皇妃様と同じくらい滅茶苦茶だけど、それが許されるくらい美人だ。
きっと、2人が結ばれたらお似合いカップルになるだろう。加えて、『理想郷の王冠』のヒロインであるアミィール様との仲も……………って!煩悩!
セオドアはそこまで考えて自分の頬を殴った。彼流の戒め方法だ。
…………俺は、クリスティド国王陛下の前で決めたんだ。アミィール様がヒロインだとかもう考えないと。なのに、その誓いを破って考えるなんてやっぱり俺は馬鹿だ!なんでこうゲームで考えようとするんだ………ここは俺にとっても現実の世界なんだ!
それはともかく、……………
「フラン様もダーインスレイヴ様も幸せになって欲しいなあ…………」
「フラン様とダーインスレイヴ?」
「ああ、あの二人に___って、アミィ!?」
合いの手をいれられ答えようとしたとき、愛する人の声が聞こえて立ち上がる。思った通り、声の主は俺の妻であり最愛の人、アミィール・リヴ・レドルド・サクリファイス様が立っていた。
ぜ、全然気づかなかった………!失礼過ぎる!
「ご、ごめん!私はアミィの出迎えも………!」
「ふふ、いいんですよ。………ただいま帰りました、セオ様」
「んっ、………おかえり、アミィ」
囀るように笑うアミィを抱き寄せ、お互いの頬にキスを落とす。仕事終わりだというのにアミィール様は汗ひとつかいていない。勿論書類の仕事もあるのだが、今日は国民の武術教育を自らしていた。
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