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第11章 人外皇女の秘密

思い出の品々

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 「………………すぅ」



 「…………………アミィ」




 朝の日差しが差し込む中、目に隈を作ったセオドアは寝ているアミィールを優しく撫でた。


 勿論、一睡もしていない。できる訳が無い。……………愛おしい人の事を、俺は何も知らなかったんだ。


 アミィール様は龍神を『穢れた血』、『醜い姿』と常々言っていた。それは…………見た目とか、そういうものじゃない。


 アミィール様は賢い人だから、自分の身体のことをきっとわかっている。もしかしたら、5日に1回の龍化は"代償"、"呪い"を防ぐ為のものだったのかもしれない。



 それを俺は何も聞かず____見過ごしていたんだ。

 アミィール様を好きだと。愛していると言っておきながら。

 アミィール様を抱くだけ抱いておきながら。


 俺は_____この人の苦しみを、何も理解していなかったんだ。



 「____クソ」



 こんなに自分を不甲斐ないと思うことはあるだろうか?………悲しくて悔しくて胸が焼けるように熱くなることは有るだろうか。


 でも……………アミィール様は、いつも笑っていた。

 自分の身体がどうなるかわからないのに、それでもいつも俺を含めた全員に笑みを向けていたんだ。



 どれだけこの人は強いのだろう。

 こんなに強くて悲しい女性は__初めてだ。


 「______身体を拭いてあげよう」



 これ以上考えたら、俺は俺を許せなくなる。そう思って動く。エンダーを呼ぶべきだろうが、今はアミィール様の部屋に誰もいれたくなかった。俺だけしかいない部屋にしたかった。


 だって、アミィール様は俺の女だろう?


 部屋には水場もあるし、タオルさえあれば俺が清拭することぐらいできる。


 そう思ったセオドアは立ち上がり、1番手前のクローゼットに手を掛けた。………勝手に開けるのはよくないけれど、それよりも汗をかいているなら拭いた方がいいよ……………………な?



 セオドアはアミィール様のクローゼットを開けて、目を見開いた。


 そのクローゼットには2枚の服と小さな箱しか入っていなかった。1枚は結婚式に着ていた俺の作ったウェディングドレス。

 そして、もう1枚の服は_____まだ結婚も婚約もしていない、初めて話した位の頃に俺がボタンを直してあげた………ヴァリアースの制服だった。


 どっ、と懐かしさが込み上げる。
 震えた手で、小さな箱にも手を伸ばす。


 箱には____スカーフ、ハンカチ、ティアラ、ベール、………初めてあげたチョコブラウニーの袋まで。今まであげた俺のものが詰まっていた。


 セオドアはふらふらになりながら立ち上がり、別のクローゼットを開けて回る。


 そのクローゼットの中には____俺がウェディングドレスの試作品として作った沢山の白いドレス。



 それを見て、セオドアはその場に崩れ落ちた。その拍子に涙が落ちる。


 _____アミィール様は、俺を凄く愛している。


 それは常日頃から感じていた。

 けれど。

 アミィール様は…………俺が、思っている以上に愛してくれていた。


 「ッ、あぁ……うわぁぁっ……!」


 俺は1人、蹲りながら声を上げて泣いた。
 何も分かっていない俺を_____ここまで愛してくれていたんだ。
   

 自分の体がどうなるかわからないのに。


 辛いはずなのに、それでも………笑って、俺には何も言わず、隠して。それでも。



 愛してくれていたんだ_____



 セオドアはしばらくその場から動けなかった。






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